がん免疫療法コラム

抗がん剤による口内炎の予防と対処法について

抗がん剤治療の副作用のひとつに、口内炎があることをご存じでしょうか。抗がん剤によってがんが軽快に向かう方も多い一方で、治療の過程でさまざまな副作用が生じるケースも多々あります。

今回は、抗がん剤による口内炎に悩んでいる人に向けて情報をまとめました。口内炎の予防と対処法について解説しますので、参考にご覧ください。

がん・6種複合免疫療法

がん治療における口内炎


冒頭でも紹介した通り、抗がん剤にはさまざまな副作用が伴います。その中の一つである口内炎は、抗がん剤投与から1週間から10日くらいで起こり、その後は自然に治っていくのが一般的です。症状が重症になったり治癒が遅れたりすることもあります。

また、口内炎は30〜40%と比較的高い発生頻度の副作用として知られています。

口内炎の症状

続いては、口内炎の症状を解説します。主な口内炎の症状は、以下の通りです。

  • 痛み
  • 出血
  • 熱いものや冷たいものがしみる
  • 口の乾燥
  • 赤み、腫れ
  • 口の動かしにくさ
  • 嚥下能力の低下
  • 味覚の変化

など。

その他にも不快な症状が出ることもあります。

また食事・会話がしづらくなるため、心身の状態の悪化に繋がるケースもあります。

  • 体力が低下する
  • イライラする
  • 不眠

といった症状が現れる方もいます。

口内炎になりやすい人

次に、口内炎になりやすい人の特徴を解説します。

まずは、口内の衛生状態が悪い人です。虫歯や歯周病、舌苔、義歯が合っていない、歯磨きやうがいの不足、乾燥などの要因によって、口腔内の衛生状態は悪化します。

また、免疫機能が低下している人も口内炎になりやすいと言われています。高齢者やステロイド剤の使用、糖尿病の合併によって、免疫機能は低下しやすくなります。

以下の要因でも、口内炎が発症しやすくなります。

  • 栄養状態が悪い
  • 頭部から首にかけての範囲への放射線療法を受けている
  • 喫煙習慣がある
  • 口腔内が乾燥している

など。

口内炎の原因


続いては、抗がん剤による副作用である口内炎がなぜ起こるかを解説します。

今回は、化学療法(薬の副作用)や口腔内の局所感染といった原因について紹介します。

化学療法(薬の副作用)

口内炎の原因1つ目は、化学療法(薬の副作用)です。

抗がん剤には殺細胞性のものと分子標的型のものがあります。殺細胞性の抗がん剤の場合、細胞分裂が盛んな細胞に作用します。口の中は細胞分裂が盛んなため抗がん剤の影響を受けやすいと言われており、粘膜のダメージとして口内炎が現れてしまいます。

一方、分子標的型の抗がん剤の場合は、特定の細胞を攻撃します。口内炎が起こることがありますが、原因は解明されていません。殺細胞性の抗がん剤の口内炎とは、症状の現れ方が異なります。

口腔内の局所感染

口内炎の原因2つ目は、口腔内の局所感染です。

体の免疫力が低下することで口内炎が起こるケースもあります。ヘルペス性口内炎やカンジダ性口内炎は、口腔内の局所感染によって引き起こされます。

口内炎は予防をすることが大切


現在は副作用をゼロにする治療法がないため、口内炎は予防をすることが大切です。具体的な口内炎の予防方法について、次章で詳しく解説します。

清潔

口腔内を清潔にすることは、口内炎の予防の基本です。歯みがきを一日3回行うことで、口腔内の清潔をキープできます。

粘膜を傷つけないよう気を付けながら、歯磨きを行いましょう。粘膜を傷つけない歯磨きのコツは、以下の通りです。

  • 歯と歯肉の境目に歯ブラシの毛先を軽く当て小刻みに動かす
  • やわらかい歯ブラシを使う

など。

また、口腔内を清潔に保つには、舌苔のケアも欠かせません。舌ブラシまたはスポンジブラシを使い、奥から前方への一方向で汚れをかき出します。この際にも軽い力で行うことが重要です。

歯科を受診することも推奨しますが、治療前または治療中は主治医の許可を得て受診しましょう。

保湿

口腔内が乾燥すると口内炎の痛みが悪化するため、保湿が必要です。刺激の少ないものでうがいをすることをおすすめします。生理食塩水や医師の処方したうがい薬、市販の保湿剤などを使用して、うがいをします。一日3~8回程度小まめに行うことを推奨します。

また、氷などで口内を冷やすと、炎症を抑えられるケースもあります。

口内炎ができてしまったら


予防をしていても口内炎ができてしまったらどうしたら良いのでしょうか。口内炎ができた場合の対処法を、4つ紹介します。

食事を工夫する、口腔内のケアをする、痛みへの対処をする、抗がん剤以外の治療法を検討する方法を見ていきましょう。

食事を工夫する

口内炎ができてしまったら、食事を工夫しましょう。柔らかいものや刺激の少ない食べ物を摂取したり、食欲のないときは好きなものやカロリーの高いものを取ることをおすすめします。ビタミンB2を含むビタミン剤を服用するのも有効です。味覚障害がある場合には、亜鉛を摂取するとよいでしょう。水分を十分にとることも推奨します。

口腔内のケアをする

口内炎ができてしまったら、口腔内のケアをしましょう。口内炎による痛みが辛くても、口腔ケアは続ける必要があります。歯磨き粉は口腔内を刺激するため、痛みが強いときは使わないことをおすすめします。

痛みにより口を大きく開けられないときは、小さめの歯ブラシに変更すると良いでしょう。どうしても痛みが強い場合は、湿らせたガーゼでぬぐう、うがいだけするなどで一時的に対応する方法も有効です。

痛みへの対処をする

口内炎ができてしまったら、痛みへの対処をしましょう。薬などで痛みを軽減する方法があります。

  • 麻酔の成分を含むうがい薬
  • 軟膏
  • 粘膜保護剤

などを用います。

口腔内の局所感染の場合は、特効薬がある場合も多いので、まずは医師に相談しましょう。

抗がん剤以外の治療法を検討する


口内炎を避けられる治療方法として、抗がん剤以外の薬物療法や漢方、免疫療法があります。抗がん剤以外の薬物療法としては、分子標的療法や内分泌療法(ホルモン療法)があります。

漢方とは、漢方医学に基づいて心身全体のバランスを整える効果が期待できる薬です。薬効のある植物や動物、鉱物などをベースに作られています。

免疫療法・免疫細胞療法は、がんの種類やステージを問わず受けられる治療です。末期がんであっても受けられます。

他の治療法と組み合わせて受けることも可能で、再発・転移予防にもなります。重篤な副作用は少ないことが知られていますが、軽い発熱、発疹などが出る可能性はあります。

樹状細胞ワクチン療法 樹状細胞ワクチン療法は、樹状細胞の働きを活かした免疫治療として知られています。患者さんのがん組織や、人工的に作ったがん抗原を用いて治療を行います。
活性化Tリンパ球療法 Tリンパ球は、樹状細胞からの指示を受けて、がん細胞を攻撃します。活性化Tリンパ球療法では、Tリンパ球を培養し増殖させ、さらに攻撃力を高めたものを体内に戻す治療法です。
アルファ・ベータT細胞療法 アルファ・ベータT細胞は2週間の培養で、200万個ほどの細胞が80億個ほどに増えますので、血液中のリンパ球の数や機能が低下している場合にも治療が可能となります。自身の血液を採取し、T細胞を大幅に増殖させて活性化した後に体内へ戻します。がん細胞は、自らを守るバリアとして免疫の働きを抑制させてしまう作用がありますが、アルファ・ベータT細胞療法では、その免疫抑制作用を解除することが可能です。
ガンマ・デルタT細胞療法 ガンマ・デルタT細胞療法とは、ガンマ・デルタ型のT細胞受容体を持つT細胞を活性化したものを利用する治療法です。ガンマ・デルタT細胞は、より的確にがん細胞を見つけて攻撃する効果があります。
NK細胞療法 NK細胞療法とは、ナチュラルキラー細胞であるNK細胞を活用した治療法です。自然免疫と呼ばれるNK細胞を活用します。特殊なNK細胞培養培地を用いることで、効率的に高い細胞殺傷能力を持ったNK細胞の培養ができます。
6種複合免疫療法 6種複合免疫療法は、それぞれ役割が異なる6種類の免疫細胞を増殖・活性化させ、がんを治療する方法です。6種複合免疫療法では、NK細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、NKT細胞、ガンマ・デルタT細胞といった6つの細胞にアプローチします。

 

がん・6種複合免疫療法

 

まとめ


今回は、抗がん剤による口内炎の予防と対処法について紹介しました。

抗がん剤による口内炎の予防方法は、口腔内を清潔に保つこと、保湿することです。適度に歯磨きをしたり、うがいを行い、口腔内に食物残渣や過度な細菌を残さないことが重要です。

対処法としては、食事を工夫する、口腔内のケアをする、痛みへの対処をする、抗がん剤以外の治療法を検討するといった方法があります。抗がん剤以外の治療法には、抗がん剤以外の薬物療法や漢方、免疫療法があります。

福岡同仁クリニックは、がん免疫療法専門の再生医療クリニックとして、6種複合免疫療法を提供しています。これまで多くの患者さんのがん治療を行い、患者さん一人ひとりに合わせた治療法をご提案しています。

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