がん免疫療法コラム

血液のがんと呼ばれる悪性リンパ腫とは? 余命の目安となる生存率と治療法について解説

がんは体のさまざまな部位に発生しますが、血液にもがんが発生することがあります。

今回は、血液のがんと呼ばれる悪性リンパ腫について解説します。

悪性リンパ腫の余命の目安となる生存率と治療法についても紹介します。リンパ腫患者さん及びその親族の方の参考になりましたら幸いです。

悪性リンパ腫とは?


まずは悪性リンパ腫の概要について紹介します。

悪性リンパ腫は「血液のがん」ともいわれており、日本では1年間に約36,000例報告されています。悪性リンパ腫は「悪性」という病名がついているものの、治療をすれば高い確率で治癒を目指し、余命を伸ばすことができます。

白血球のうちリンパ球ががん化することで罹患し、悪性リンパ腫はがん細胞の性質や形態に基づき100種類以上に分類されます。

大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられます。次章以降でこの2つの違いを解説します。

ホジキンリンパ腫

ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫全体の約5%を占めます。「ホジキン細胞」などの特徴的な細胞がみられ、古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫の2つに分けられます。

非ホジキンリンパ腫

非ホジキンリンパ腫は、ホジキン細胞などの特徴的な細胞を持たないリンパ腫です。リンパ球の中でも、どの細胞ががん化したかによって、以下の3つに分けられます。

  • B細胞性
  • T細胞性
  • NK細胞性

 

また病気の進行の早さや悪性度によって、以下の3つに分類されることもあります。

低悪性度リンパ腫 年単位でゆっくり進行する
中悪性度リンパ腫 週~月単位で進行する
高悪性度リンパ腫 日~週単位で進行する

上記の組み合わせによって、病名が異なります。いくつか例を紹介します。

例えば、B細胞性の低悪性度リンパ腫は「慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫」と呼ばれることがあります。

また、T細胞性の高悪性度リンパ腫は「急速進行性NK細胞白血病」と呼ばれます。

悪性リンパ腫の症状


次に、悪性リンパ腫の主な症状について解説します。

初期の症状は、首や脇の下、足の付け根など、リンパ節の多い痛みのないしこり、腫れなどです。進行したときの症状は、以下の通りです。

  • 痛みを伴うしこり
  • 全身にしこりができる
  • 原因不明の発熱
  • 体重減少
  • 寝汗
  • 発疹
  • 皮膚の腫瘤

など。

また他の臓器などに広がった場合は、その部位に応じた症状が出ることがあります。

悪性リンパ腫のステージ


続いては、悪性リンパ腫のステージ(病期)について紹介します。

悪性リンパ腫のステージには、Ann Arbor分類とLugano分類の2種類が用いられるケースがあります。Ann Arbor分類とLugano分類について、次章で詳しく解説します。

Ann Arbor分類

悪性リンパ腫のステージには、Ann Arbor分類があります。Ann Arbor分類のステージを表形式で紹介します。

Ⅰ期 ・単独リンパ節領域の病変(Ⅰ)

・またはリンパ節病変を欠く単独リンパ外臓器または部位の限局性病変(ⅠE)

Ⅱ期 ・横隔膜の同側にある2 つ以上のリンパ節領域の病変(Ⅱ)

・または所属リンパ節病変と関連している単独リンパ外臓器または部位の限局性病変で横隔膜の同側にあるその他のリンパ節領域の病変はあってもなくてもよい(ⅡE)

・病変のある領域の数は下付きで例えばⅡ3 のように表してもよい。

Ⅲ期 ・横隔膜の両側にあるリンパ節領域の病変(Ⅲ)

・さらに隣接するリンパ節病変と関連しているリンパ外進展を伴ったり(ⅢE)、または脾臓病変を伴ったり(ⅢS)、あるいはその両者(ⅢES)を伴ってもよい

Ⅳ期 ・1 つ以上のリンパ外臓器のびまん性または播種性病変で、関連するリンパ節病変の有無を問わない

・または隣接する所属リンパ節病変を欠く孤立したリンパ外臓器病変であるが、離れた部位の病変を併せ持つ場合

AおよびB分類の症状

各病期は以下のように定義される全身症状の有無に従って、A またはB のいずれかに分類される。

①発熱:38℃より高い理由不明の発熱

②寝汗:寝具(マットレス以外の掛け布団、シーツなどを含む、寝間着は含まない)を変えなければならない程のずぶ濡れになる汗が出る

③体重減少:診断前の6 カ月以内に通常体重の10%を超す原因不明の体重減少

Lugano分類

悪性リンパ腫のステージには、Lugano分類がありますLugano分類のステージを表形式で紹介します。

Ⅰ期 ・消化管に限局した腫瘍 単発または多発(非連続性)
Ⅱ期 ・消化管の原発部位から腫瘍が腹腔へ進展 リンパ節浸潤

Ⅱ1:限局性(胃のリンパ腫の場合は胃周囲,腸管の場合は腸管周囲)

Ⅱ2:遠隔性(腸管原発の場合は腸間膜,その他では傍大静脈,傍大静脈,骨盤,鼠径)

ⅡE期 ・近接の臓器または組織へ進展する漿膜の浸潤(実際の浸潤部位 例:ⅡE[膵臓], ⅡE[大腸],ⅡE[後腹膜])

・リンパ節浸潤と近接臓器へ浸潤する進展の両方がある場合、病期は下付きの1 または2 とE の両方が記載されるべきである。例:Ⅱ1E[膵臓]

Ⅳ期 ・リンパ外への播種性浸潤または消化管病変に横隔膜を越えたリンパ節病変を伴う

余命はどのくらい? 悪性リンパ腫の生存率


では、悪性リンパ腫と診断された場合の余命はどのくらいなのでしょうか。悪性リンパ腫の生存率を紹介します。

悪性リンパ腫と診断された場合、ステージやがんの状況によっても余命は変わります。余命はあくまで参考になる程度ですが、ここではサバイバー生存率と10年相対生存率を紹介します。

サバイバー生存率とは、診断から一定年数後生存している方のその後の生存率です。例えば1年サバイバーの5年生存率は、診断から1年後に生存している方に限って算出した、その後の5年生存率のことをいいます。

つまり、診断からは合計6年後の結果です。悪性リンパ腫のサバイバー5年相対生存率は、以下の通りです。

女性 男性
0年サバイバー 58.1% 49.6%
1年サバイバー 73% 68.3%
2年サバイバー 80.2% 78.4%
3年サバイバー 84.1% 82.3%
4年サバイバー 87% 84.8%
5年サバイバー 87.1% 86.9%

10年相対生存率とは、実測生存率を対象と同じ性・年齢、診断年の一般の日本人集団で「がんではなかった場合の生存率」という考えによる期待生存率を算出し、実測生存率を割って算出します。

悪性リンパ腫の治療法

続いては、悪性リンパ腫の主な治療法について紹介します。ホジキンリンパ腫の場合、主に以下の治療法が選択されるケースが多いです。

  • 早期の場合は放射線治療
  • 進行期の場合は抗がん剤治療などの薬物療法

 

また非ホジキンリンパ腫の場合、主に薬物療法が選択されるケースが多いです。進行型の遅い、低悪性度リンパ腫の場合は、経過観察になることもあります。再発の可能性が高い場合は、造血幹細胞移植を行うこともあります。

悪性リンパ腫の種類や、患者の方の体調、がんのステージ、状態などによっても治療法は異なるため、詳細については医師とすり合わせることが重要です。治療が妊娠・出産に影響する可能性もあるので、将来子どもをもつことを希望している場合は事前に医師に相談するようにしましょう。

薬物療法

悪性リンパ腫の治療法1つ目は、薬物療法です。

悪性リンパ腫の治療では、抗がん剤や分子標的薬が使われます。リンパ腫を含むがんを治療する・進行を抑える・がんによる症状を緩和させるという目的で行われます。薬剤の種類や組み合わせはリンパ腫の種類によっても異なります。

放射線療法

悪性リンパ腫の治療法2つ目は、放射線療法です。

放射線療法は、がんを治療することや症状を緩和させることを目的に行われます。送血幹細胞移植前に行われるケースもあります。

造血幹細胞移植

悪性リンパ腫の治療法3つ目は、造血幹細胞移植です。

造血幹細胞移植とは、骨髄、末梢血、臍帯血などから造血幹細胞を取り出し、患者さんへ移植をする治療です。

手術療法

悪性リンパ腫の治療法4つ目は、手術療法です。

悪性リンパ腫では、手術が行われるケースは少ない傾向にあります。しかしB細胞リンパ腫が、胃や小腸などにできたときなどには手術が行われるケースもあります。

悪性リンパ腫の治療法として免疫細胞療法も選択肢の一つ


悪性リンパ腫の治療法として、免疫細胞療法も選択肢の一つです。免疫療法と免疫細胞療法の概要を紹介します。

ただし、免疫細胞療法といってもさまざまな種類の治療法がありますので、ここではいくつかの治療法について、表形式で概要や特徴を紹介します。

CAR-T細胞療法 CAR-TのTとは、リンパ球のT細胞のことです。Chimeric Antigen Receptor(キメラ抗原受容体)の略で、キメラは異なるものが合体した生物を意味します。CAR-T細胞療法は、CD19が出ている悪性リンパ腫と白血病が対象となります。患者さんの体からリンパ球(T細胞)を取り出し、遺伝子組み換え技術を用いてCARを発現させ、体に戻して治療を行います。
NK細胞療法 NK細胞療法では、患者さんの体から取り出した血液中のNK細胞を高活性化培養します。特殊なNK細胞培養培地を用いることで、効率的に高い細胞殺傷能力を持ったNK細胞の培養が可能です。培養した細胞を、点滴で体内に戻して行います。
アルファ・ベータT細胞療法 アルファ・ベータT細胞は比較的増殖しやすい細胞として知られています。アルファ・ベータT細胞療法は、多くの機関で長年行われています。2週間の培養で、200万個ほどの細胞が80億個ほどに増えますので、血液中のリンパ球の数や機能が低下している場合にも治療が可能となります。
6種複合免疫療法 T細胞や樹状細胞など6種類の免疫細胞を同時に培養する治療法です。役割の異なる細胞を同時に培養することで、より高い効果が期待できます。

悪性リンパ腫の治療後のケア


これまで、さまざまな治療法を紹介しましたが、悪性リンパ腫は治療後のケアが大切です。

リンパ腫の種類によっても異なりますが、治療後も定期的に抗がん剤の投与を受けるほか、がんが全て消失したことを示す完全奏効が見られた場合には、治療後の1~2年間は2~3カ月ごとに、その後も3~6カ月ごとに検診を受ける必要があります。

もし3年間再発しなければ、その後も再発しない可能性が高まりますので、根気よく経過を観察しましょう。

6種複合免疫療法

まとめ


今回は、血液のがんと呼ばれる悪性リンパ腫について解説しました。余命の目安となる生存率には、サバイバー生存率と10年相対生存率があります。

ですが、これらはあくまで目安ですので、過度に不安視する必要はありません。治療法としては、薬物療法・放射線療法・造血幹細胞移植などが知られています。

また、これらの治療法以外に免疫療法を取り入れることも可能です。

福岡同仁クリニックは、今回紹介した免疫療法の一つである「6種複合免疫療法」を行っている施設です。

当施設は厚生労働省の許可を受けた細胞培養施設で、極めて高度な安全管理体制のもとで細胞培養の委託を受けています。

福岡同仁クリニックの細胞培養数は圧倒的で、約3週間で1,000から2,000個の細胞を20から50億個まで培養できます。

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