がん免疫療法コラム

舌がんの進行速度は速い? 治療法や有効なケアを解説

がんの症状や進行速度は、罹患部位によって異なります。症状を見逃してしまったり、放っておいたりしてしまうと、他の部位に転移して治療が長引いてしまうことも。

今回は舌のがんになり、進行速度について気になっている患者さんやそのご家族に向けて、治療法や有効なケア方法を解説します。ぜひ参考にご覧ください。

がん・6種複合免疫療法

舌がんとは?


まず舌がんとはどのようながんか、概要を紹介します。舌がんとは、口腔がんの一種です。一般的に、舌の前方2/3に生じたがんを指し、60代の男性が発症しやすいと言われています。

主な初期症状

続いては、舌がんの主な初期症状を解説します。

舌がんは、見える場所に症状が現れるため、早期に発見されることが多いです。初期段階では、小さな潰瘍やしこり、ただれなどの症状が現れます。

がんになる手前の状態として、舌表面の粘膜が白色化したり(白板症)、あるいはビロードのように鮮やかな赤色を呈する場合には(紅板症)、がんになる手前の状態、あるいはすでにがん化している可能性があります。舌がんは痛みを伴わないため見過ごされるケースも多々あります。舌表面の色の変化など、体のちょっとしたサインを逃さないことが重要です。

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

  • 2週間を経過しても治らない口内炎
  • 口内炎の周囲の硬いできもの

など。

進行後の症状

次に、舌がん進行後の症状を解説します。

舌がんが進行し中期になると、以下のような変化が見られます。

  • 発音しづらくなる
  • 食事の際に不快感がある
  • 口を開きづらくなる

など。

さらに進行した場合には、以下のような症状が現れることがあります。

  • 痛み
  • 出血
  • 口臭
  • 周辺組織への浸潤や転移(顎下、リンパ節など)

など。

舌がんのステージ(病期)


続いては、舌がんのステージ(病期)を見ていきましょう。舌がんのステージ(病期)は、TNM分類に基づいてステージが判断されます。

Tカテゴリーは、原発腫瘍の広がりと深さを表しています。

Nカテゴリーは、頸部のリンパ節に転移したがんの大きさと個数を表しています。

Mカテゴリーは、がんができた場所から離れた臓器への転移(遠隔転移)の有無を表しています。

舌がんの進展度(TNM分類)は、下記の表の通りです。

Tis 上皮内がん
T1 がんの最大径が2cm以下で深さが5mm以下である。
T2 がんの最大径が2cm以下で深さが5mmを超える。またはがんの最大径が2cmを超えるが4cm以下で、深さが10mm以下である。
T3 がんの最大径が2cm超えるが4cm以下で、深さが10mmを超えている。またはがんの最大径が4cmを超え、深さが10mm以下である。
T4a がんの最大径が4cmを超え、深さが10mmを超える。またはがんが下あごもしくは上あごの骨を貫通するか上顎洞に広がっている。またはがんが顔の皮膚にまで広がっている。
T4b がんが、噛むことに関連した筋肉と下あごの骨とそれらに関連する神経や血管が存在する領域・あごを動かす筋肉と頭蓋底がつながっている部分・頭蓋底にまで広がっている。またはがんが内頸動脈の周りを囲んでいる。
N0 頸部リンパ節への転移がない。
N1 がんと同じ側の頸部リンパ節に3cm以下の転移が一個で、頸部リンパ節の節外浸潤がない。
N2a がんと同じ側の頸部リンパ節に3cmを超えるが6cm以下の転移が一個で、頸部リンパ節の節外浸潤がない。
N2b がんと同じ側の頸部リンパ節に6cm以下の転移が2個以上で、頸部リンパ節の節外浸潤がない。
N2c 両側またはがんのある側と反対側の頸部リンパ節に6cm以下の転移があり、頸部リンパ節の節外浸潤がない。
N3a 頸部リンパ節に6cmを超える転移があり、頸部リンパ節の節外浸潤がない。
N3b 頸部リンパ節に一個以上の転移があり、頸部リンパ節の節外浸潤がある。
M0 遠くの臓器への転移がない。
M1 遠くの臓器への転移がある。

TNM分類の組み合わせによって、主に以下のステージに分類されます。

0期 リンパ節への転移がない上皮内がん
Ⅰ期(ステージ1) リンパ節への転移がなく、最大径2cm、深さ5mm以下のがん
Ⅱ期(ステージ2) がんと同じ側のリンパ節のみに3cm以下の転移が1個、最大径4cm以下、深さ10mm以上もしくは最大径4cm以上、深さ10mm以下のがん
Ⅲ期(ステージ3) がんと同じ側のリンパ節のみに6cm以下の転移が1個、最大径4cm以下、深さ10mm以上もしくは最大径4cm以上、深さ10mm以下のがん
Ⅳ期(ステージ4) Ⅲ期よりもがんの大きさや転移が拡大している

舌がんの進行速度


続いては、舌がんの進行速度を解説します。舌がんの進行速度には以下の要因が影響し、速い・遅いはケースによって異なります。

  • がんの種類、免疫力、その他健康状態
  • 飲酒、喫煙の習慣
  • 歯並び

中には早期から頸部リンパ節に転移し、急速に進行するタイプの舌がんもあります。若い世代では、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関連するケースは進行が速い傾向にあります。

進行速度が速まるのを防ぐには

では、舌がんの進行速度が速まるのを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。以下のポイントに留意することが大切です。これらは舌がんの進行を速めることが知られています。

  • 飲酒・喫煙を控える
  • 口腔衛生が良い状態を保つ

など。

舌がんの5年生存率


次に、舌がんの5年生存率(ネット・サバイバル)を紹介します。

口腔・咽頭がんの5年相対生存率は 、女性で89.3%、男性で83.3%と比較的良好です。しかし、この相対生存率は、がんの完治を意味するものではなく、癌を患い癌と闘いながら生きている癌との共存症例ももちろん含まれます。

(参考:がん情報サービス 口腔・咽頭

舌がんの主な治療法


次に、舌がんの主な治療法を紹介します。

舌がんの治療法は、患者の方の希望や年齢、がんのステージ、などによっても変わります。進行スピードを遅くする目的で行う場合と、症状を和らげる目的で行う場合があります。

また、がんの治療は妊娠や出産に影響することがあるため、将来子どもをもつことを希望している場合は、事前に医師に相談することをおすすめします。

手術療法

舌がんの主な治療法1つ目は、手術療法です。

舌がんの手術療法の概要や特徴について紹介します。舌がんの治療は、手術療法が中心です。手術の種類には、舌部分切除術・舌半側切除術・舌(亜)全摘出・頸部郭清術があります。切除した舌の範囲によっては、再建手術を合わせて行う場合もあります。

再建手術では、患者さん自身の皮膚や脂肪、筋肉の組織を使用します。太ももやおなか、胸、腕などから採取した皮膚などを移植し、残った舌ができるだけ機能するように再建します。

舌がんの手術療法の主な合併症は、以下の通りです。

手術の方法や頸部郭清術の範囲によって、起こり得る合併症は異なります。舌切除術の合併症としては、

  • 食事困難
  • 発音困難
  • 誤嚥、誤嚥性肺炎

があります。

頸部郭清術の合併症としては、

  • 顔のむくみ
  • 頸部のこわばり
  • 肩の運動障害

などがあります。

放射線療法

舌がんの主な治療法2つ目は、放射線療法です。

舌がんの放射線療法は、Ⅰ期、Ⅱ期の場合に選択されることが多いです。組織内照射と外部照射があります。放射線療法は、術後療法として行う場合もあります。

主な副作用は以下の通りです。

副作用は、放射線治療中や治療後数カ月以内に生じる早期のものと、晩期のものに分けられます。治療中や治療終了後にあらわれる副作用としては、

  • 口腔乾燥
  • 味覚の変化
  • 粘膜の炎症
  • 皮膚炎
  • 声がかれる

などがあります。

治療終了後3カ月から数年たってあらわれる副作用としては、

  • 開口障害
  • 虫歯の増加
  • 下顎骨壊死

があります。

化学放射線療法では薬物療法を併用すると、より副作用が強く現れるケースがあります。体への負担を考慮し、医療スタッフと相談しながら、治療を進めていきましょう。

その他に検討できる舌がんの治療法・ケア


その他に検討できる舌がんの治療法・ケアについて次章で詳しく紹介します。

薬物療法

その他に検討できる舌がんの治療法として、薬物療法があります。舌がんの薬物療法は、がんが広範囲に転移している場合や手術でがんを取りきれなかった場合、再発リスクが高い場合などに行われます。術後療法は放射線療法と併せて行うことが多いです。

舌がんの薬物療法に用いられる薬剤は、一般的にはシスプラチンという抗がん剤です。症状緩和や進行を遅らせる目的で、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的治療薬、タキサン系抗がん剤、フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬、プラチナ製剤などが使用されることもあります。

薬物療法の主な副作用は、以下の通りです。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 全身倦怠感
  • 脱毛
  • 発疹
  • ほてり
  • 貧血
  • 腎機能障害
  • 難聴
  • インフュージョンリアクション
  • 皮膚の障害
  • 間質性肺炎

など。

免疫療法

その他に検討できる舌がんの治療法として、免疫療法・免疫細胞療法があります。先述した免疫チェックポイント阻害薬は、舌がんの免疫療法の一つでもあります。

免疫細胞療法について、次章で詳しく紹介します。

免疫細胞療法

免疫細胞療法は、重篤な副作用が少ない治療法です。まれに軽い発熱、発疹などが出る可能性はありますが、過度な心配は必要ありません。

他の治療法と組み合わせることも可能です。免疫細胞療法の例をいくつか紹介します。

  • 樹状細胞ワクチン
  • NK細胞療法
  • アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)
  • 6種複合免疫療法

など。

光免疫療法

その他に検討できる舌がんの治療法として、光免疫療法があります。光免疫療法は、がん細胞だけに対し光に反応する物質を投与し、レーザーを照射してがん細胞を攻撃する治療です。

体への負担が少ないことが知られています。光免疫療法の主な副作用は、以下の通りです。

  • 出血
  • 舌や喉の腫れ、痛み
  • アレルギー反応

など。

緩和ケア・支持療法

その他に検討できる舌がんの治療法として、緩和ケア・支持療法があります。緩和ケアとは、患者さんの体のつらさや精神的なつらさをやわらげるためのケアのことです。がんと診察されたタイミングから、いつでも受けられます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う合併症や副作用などの症状を軽減するための予防やケアのことです。

リハビリテーション

その他に検討できる舌がんの治療法として、リハビリテーションがあります。言語聴覚士、管理栄養士、歯科口腔外科医、歯科衛生士などの協力の下で行います。がんの体への影響に対する回復力を高め、残存機能を維持・向上させることを目的としています。

また、緩和ケアの一環として行われることもあり、さまざまな辛さに対処することができます。誤嚥性肺炎を防いだり、発声を手助けする効果が期待できます。

舌がんのリハビリテーションでは、以下の内容を行います。

  • 飲み込みのリハビリテーション
  • 発声・発音のリハビリテーション
  • 装置を使った飲み込みや発声・発音のリハビリテーション
  • 頸部郭清術による症状のリハビリテーション

がん・6種複合免疫療法

まとめ


今回は、舌がんの進行速度について紹介しました。

舌がんは比較的発見されやすいがんです。ですが、痛みがないため見逃されてしまうケースもあります。

舌がんの進行速度には、免疫力・健康状態・飲酒・喫煙の習慣・歯並びなどが関係しますので、速い・遅いは一概には言えません。進行速度が早いケースもありますので、異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。舌がんの治療法としては、手術療法・放射線療法が知られています。

この他にも、薬物療法・免疫療法・光免疫療法・緩和ケア・支持療法・リハビリテーションといった治療法もあります。医師と相談しながら、最適な治療方法を検討しましょう。

福岡同仁クリニックは、今回紹介した免疫療法の一つである「6種複合免疫療法」を行っている施設です。

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