がん免疫療法コラム

卵巣がんの進行スピードとは? 5年生存率や症状、治療法などについて解説

がんは発症する部位によって、進行スピードが異なります。では、卵巣がんの進行スピードとはどのくらいなのでしょうか。

今回は卵巣がん患者さんや親族の方に向けて、卵巣がんの5年生存率や症状、治療法などについて解説します。

ぜひ参考にご覧ください。

卵巣がんとは?


まず卵巣がんとはどのようながんか、概要を紹介します。

卵巣がんとは、その名の通り卵巣に発生する悪性腫瘍です。悪性と良性の中間的な性質をもつ「境界悪性腫瘍」も存在します。

また、卵巣がんの進行スピードは個人差が大きいことが知られています。

卵巣がんの種類

次に、卵巣がんの種類を見ていきましょう。

卵巣がんと一口にいっても、できる位置によって種類が異なります。卵巣がんの種類は、発生起源から大きく以下の3つに分けられます。

上皮性腫瘍 中高年女性を中心に好発する。
胚細胞腫瘍 若い世代を中心に好発する。
性索間質性腫瘍 最も少ないと言われている。

このうち卵巣がんの約90%が上皮性腫瘍だといわれています。

卵巣がんの性質

卵巣がんは、種類だけでなく性質もそれぞれ異なります。組織型・異型度・遺伝子異常でそれぞれ分類ができます。

組織型 がんの種類は組織型でも分類されます。がんの性質は組織型によって異なり、上皮性の卵巣がんは、漿液性がん・明細胞がん、類内膜がん・粘液性がんなどの組織型に分類されます。卵管がんの多くは漿液性がんで、その他の組織型は少ない傾向にあります。
異型度 異型度とは、グレードとも呼ばれますがんの悪性度の高さを示す指標です。グレードが上がるにつれて悪性度が高くなります。ただし、明細胞がんのように、すべて悪性度が高いために異型度(グレード)がつかない組織型もあります。漿液性がんは、低異型度と高異型度の2つに分けられます。低異型度のがんは、悪性度はそれほど高くありません。がんが発生したもともとの正常な組織や細胞に近い形態をします。高異型度のがんは悪性度が高くなります。類内膜がんはグレード1〜3に分けられます。
遺伝子異常 卵巣がん・卵管がんなど、一部のがんの治療では、遺伝子の変化に対応した薬剤による治療が行われています。BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に異常がある場合には、対応する薬物療法を検討します。

卵巣がんのステージ(病期)


続いては、卵巣がんのステージ(病期)を紹介します。

卵巣がんのステージは、ローマ数字を使って表記します。卵巣がんでは進行するにつれてⅠ期〜Ⅳ期まであります。

Ⅰ期:卵巣あるいは卵管内限局発育
ⅠA期 腫瘍が片側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの。
ⅠB期 腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの。
ⅠC期 腫瘍が片側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの。
ⅠC1期 手術操作による被膜破綻がある。
ⅠC2期 自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤がある。
ⅠC3期 腹水または腹腔洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの。
Ⅱ期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん
ⅡA期 進展ならびに・あるいは転移が子宮ならびに・あるいは卵管ならびに・あるいは卵巣に及ぶもの。
ⅡB期 他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの。
Ⅲ期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、あるいは原発性腹膜がんで、細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種ならびに・あるいは後腹膜リンパ節転移を認めるもの
ⅢA1期 後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの。(細胞学的あるいは組織学的に確認する)
ⅢA1(ⅰ)期 転移巣最大径10mm以下のもの。
ⅢA1(ⅱ)期 転移巣最大径10mmを超えるもの。
ⅢA2期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの。
ⅢB期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの。
ⅢC期 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの。(実質転移を伴わない肝臓および脾臓の被膜への進展を含むもの)
Ⅳ期:腹膜播種を除く遠隔転移
ⅣA期 胸水中に悪性細胞を認めるもの。
ⅣB期 実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径リンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの。

なお、卵巣は骨盤内の深いところにあることから、手術により切除した卵巣を調べないと正確ながんの広がりが評価できないため、卵巣がんのステージは手術の後に決まります。

卵巣がんの進行スピード


続いては、卵巣がんの進行スピードについて解説します。

卵巣がんの進行スピードは前述したとおり個人差が大きいですが、がんの種類やステージによっても変わります。

がんの種類ごとの進行スピードは以下の通りです。

上皮性腫瘍 進行速度は遅い傾向にある、ただし早期発見が難しいため、がんの発覚時にはステージが進行していることが多い。
胚細胞腫瘍 進行速度は遅い傾向にある。
性索間質性腫瘍 進行速度は中程度である。

ステージごとの進行スピードを紹介します。初期段階のステージであれば進行スピードはゆっくりだが、ステージが進むにつれて進行スピードが早くなる傾向にあります。

ですが、がんの進行スピードには個人差もあるので、今回紹介した内容はあくまで参考程度にしてください。

卵巣がんの5年生存率


次に、卵巣がんの5年生存率を紹介します。

がん治療における5年生存率とは「手術5年後に生存しているかどうか」の指標です。完治しているかどうかを評価する指標ではありません。治療から5年を経過して生存していたとしても再発している可能性はあるものの、一つの目安として確認できるでしょう。

卵巣がんの5年生存率(ネット・サバイバル)は以下の通りです。

病気 対象数 集計対象

施設数

平均年齢 実測生存率 ネット・サバイバル
全体 10,021 372 58.0歳 63.1% 64.5%
Ⅰ期 4,686 372 54.2歳 88.7% 90.6%
Ⅱ期 905 302 58.2歳 74.9% 76.6%
Ⅲ期 2,860 356 60.0歳 45.1% 46.2%
Ⅳ期 1,270 369 64.0歳 27.1% 27.8%

(参考:がん情報サービス 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム

卵巣がんの症状


次に、卵巣がんの症状を解説します。

卵巣がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなったなどで病院を受診し、がんが発覚するケースもあります。

また、がんが進行すると以下のような症状が表れる場合があります。

  • 頻尿や便秘
  • 不正出血
  • おりものの量の増加
  • 下腹部にしこりのような違和感
  • 腹部膨満感
  • 足のむくみ

など。

さらに卵巣がんが進行すると腹水によって、おなかが大きく前に突き出てくることもあります。

卵巣がんの主な治療法


続いては、卵巣がんの主な治療法を紹介します。

卵巣がんの治療法は、患者さんの希望や年齢、がんのステージなどによっても変わります。治療は進行スピードを遅くする目的で行う場合と、症状を和らげる目的で行う場合があります。

なお卵巣がんの治療は妊娠や出産に影響することがあるため、将来子どもをもつことを希望している場合は事前に医師に相談することが重要です。

次章以降で、卵巣がんの主な治療法についてより詳細に解説します。

手術療法

卵巣がんの主な治療法1つ目は、手術療法です。

卵巣がんでは、前述したとおり手術によってステージが分かります。卵巣がんが疑われる場合には、ステージやがん細胞の性質を見極めるための診断と、がんをできるだけ取りきることを目的として手術が行われます。

いくつかの手術について概要を紹介します。

初回腫瘍減量手術・進行期決定手術 初回腫瘍減量手術・進行期決定手術では、両側の卵巣と卵管、子宮、大網を切除します。また手術進行期を診断するために、腹腔細胞診、腹腔内各所の生検、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)などを行うこともあります。腹膜などにすでにがんが広がっている場合は、目に見えるがんを完全に取りきることを目指して、体内からがんを切除します。
試験開腹術 試験開腹術では、手術でがんを取りきることが難しい場合に、生検によって組織型を診断することと、可能な範囲で手術進行期を確認することを目的としています。
中間腫瘍減量手術 中間腫瘍減量手術では、最初の手術が試験開腹術だった場合や手術後に体内に残ったがんの直径が1cm以上の場合に、計画的にがんの量を減らすことを目的にしています。薬物療法による治療を同時進行します。また初回腫瘍減量手術・進行期決定手術で1cm以上の大きさのがんが残ることが予想される場合または全身状態や合併症などにより初回腫瘍減量手術・進行期決定手術が十分に行えないと判断された場合には、まず薬物療法を行ってから中間腫瘍減量手術を行うことがあります。
妊孕性温存手術 妊孕性温存手術では、妊娠するための力を保つことを目的としています。通常の卵巣がん・卵管がんの手術では、両側の卵巣と卵管、子宮、大網を切除しますが、将来の妊娠の可能性を残したいという希望がある場合や、がんが片方の卵巣・卵管だけにとどまっている場合には、がんのない側の卵巣と卵管を切除せずに、妊娠の可能性を残す手術が可能なケースもあります。基本的な手術法として、がんのある側の卵巣と卵管、大網の切除、

さらに腹水細胞診を行うことが勧められています。妊孕性温存手術を検討するときには、がんの状態やリスクについて十分理解して、医師とよく相談しましょう。明細胞がん以外の卵巣がん・卵管がんで、手術進行期がⅠA期で異型度が低いグレード1である場合、妊孕性温存手術を検討することが可能です。

また、初回腫瘍減量手術において、がんを可能な限り完全に切除する必要があります。

さらに、以下の条件も重要です。

  • 妊娠可能年齢であること。
  • 妊娠への強い希望があること。
  • 患者さんと家族が、卵巣がん・卵管がんや妊孕性温存治療、再発の可能性について十分に理解していること。
  • 治療後も長期にわたる厳重な経過観察を続けること。
  • 婦人科腫瘍に精通した婦人科の医師による注意深い腹腔内の検査や術後の経過観察が可能であること。

手術療法の主な合併症

手術療法で起こり得る主な合併症を紹介します。卵巣がんの手術療法では、腸閉塞やリンパ嚢胞、リンパ浮腫などの合併症が起こることがあります。

さらに、卵巣欠落症状と呼ばれる更年期のような症状が起こるケースもあります。

放射線療法

卵巣がんの主な治療法2つ目は、放射線療法です。

卵巣がんの治療後、再発した場合にのみ放射線療法が行われる場合があります。痛みなどの症状を和らげるために局所的な治療法として検討されます。

放射線療法の主な副作用

放射線療法で起こり得る主な副作用を紹介します。卵巣がんの放射線療法では、以下のような副作用が発生します。

  • 疲労感
  • だるさ
  • 食欲不振
  • 貧血
  • 出血のしやすさ
  • 感染しやすくなる
  • 皮膚の乾燥やかゆみ、ヒリヒリ感

など。

薬物療法

卵巣がんの主な治療法3つ目は、薬物療法です。

薬物療法が効きやすい性質の卵巣がん(漿液性がん)もあります。卵巣がんが再発した場合は、薬物治療が選択されることが多いです。薬物療法には、主に以下の3つの治療法があります。

術後薬物療法 手術の効果を高めることを目的として、術後薬物療法が検討されます。卵巣がんでは、微小管阻害薬と白金製剤を使うことが多いです。微小管阻害薬と白金製剤は、細胞の増殖の仕組みに着目した治療薬です。仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する細胞障害性抗がん薬です。手術進行期がⅢ期・Ⅳ期の場合には、分子標的薬も使うことがあります。分子標的薬は、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬です。手術進行期がⅠA期、またはⅠB期の低異型度のがんの場合には、術後薬物療法を行わないケースもあります。
術前薬物療法 術前薬物療法は、初回腫瘍減量手術・進行期決定手術でがんを取りきることが難しいと予測される場合に検討されます。術前に薬物療法を行い、がんを小さくしてから完全に取りきることを目指します。使用する薬の種類は術後薬物療法と同様に検討します。
維持療法 生存期間を長くすることを目的とした維持療法として、薬物療法を行うことがあります。手術によって寛解した場合にも分子標的薬による治療を続けることを検討します。術後薬物療法で、TC療法にベバシズマブを追加した治療を行います。薬の効果により寛解した場合には、ベバシズマブを使った維持療法を検討します。

薬物療法の主な副作用

細胞障害性抗がん薬の主な副作用は、以下の通りです。

  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 白血球減少
  • 血小板減少
  • 貧血
  • 口内炎
  • 脱毛
  • 末梢神経障害

など。

分子標的薬の主な副作用は以下の通りです。

  • 出血
  • 高血圧
  • タンパク尿
  • 手足のしびれ
  • 筋肉の痛み
  • 疲労
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 口内炎
  • 脱毛

など。

その他に検討できる卵巣がんの治療法・ケア


これまで紹介した治療法以外に検討できる卵巣がんの治療法や痛みの緩和方法などをいくつか紹介します。進行スピードが早くなるべくさまざまな治療法やケアを受けたい、という方は検討するのがよいでしょう。

免疫療法

検討できる卵巣がんの治療法・ケアとして、免疫療法があります。

免疫療法とは、免疫の力を利用した治療法です。免疫によりがんを攻撃します。免疫療法には、主に免疫チェックポイント阻害薬による治療法と免疫細胞療法の2つがあります。

次章以降で、免疫チェックポイント阻害薬による治療法と免疫細胞療法の詳細を解説します。

免疫チェックポイント阻害薬による治療法

免疫チェックポイント阻害薬を使う治療法では、がん細胞が免疫を抑制する働きを解除することを狙います。

卵巣がんの治療法として、免疫チェックポイント阻害薬「抗PD-1抗体(ニボルマブ)」などの研究開発が行われています。

免疫細胞療法

免疫細胞療法は、がんの種類やステージを問わず受けられます。

また、他の治療法と組み合わせて受けられることや、再発・転移予防にもなるという特徴があります。重篤な副作用は少ないですが、軽い発熱、発疹などが出る可能性はあります。

免疫細胞療法と一口にいっても、さまざまな治療法があります。ここではいくつかの免疫細胞療法をピックアップして、概要を紹介します。

樹状細胞ワクチン療法 樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞のもととなる単球を培養・活性化させることで、がん細胞にアプローチします。
NK細胞療法 NK細胞療法では、自身の血液から採取したNK細胞を培養・活性化させます。特殊なNK細胞培養培地を用いることで、効率的に高い細胞殺傷能力を持ったNK細胞の培養が可能です。
6種複合免疫療法 6種複合免疫療法は、免疫細胞を一度体外へ取り出し、活性化・増殖させて体内へ戻す療法です。がん細胞を発見、認識、攻撃するなどそれぞれ役割を持つ免疫細胞を同時に増殖・活性化することで、より効果的にがん細胞と闘えるように免疫力を高めてくれます。

緩和ケア・支持療法

検討できる卵巣がんの治療法・ケアとして、緩和ケア・支持療法があります。緩和ケアとは、患者の方の体のつらさや精神的なつらさをやわらげるためのケアのことです。がんと診察されたタイミングから、いつでも受けられます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う合併症や副作用などの症状を軽減するための予防やケアのことです。

リハビリテーション

検討できる卵巣がんの治療法・ケアとして、リハビリテーションがあります。治療中や治療終了後は体を動かすことが少なくなるので、医師の指示のもとできる限りリハビリテーションをすることが大切です。有酸素運動や筋トレ、日常生活の中でできることなど体の状態に応じて進めていくようにしましょう。

6種複合免疫療法

まとめ


今回は  、卵巣がんの進行スピードについて解説しました。

卵巣がんの5年生存率は、ステージによって異なります。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなる、などの症状が現れます。

また治療法としては、手術療法・放射線療法・薬物療法などが検討されます。

福岡同仁クリニックは、今回紹介した免疫療法の一つである「6種複合免疫療法」を行っている施設です。

福岡同仁クリニックでは、厚生労働省の許可を受けた細胞培養施設にて、極めて高度な安全管理体制のもとで細胞培養の委託を受けています。

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