がん免疫療法コラム

食道がんのステージごとの治療法とは? 末期がんの苦しみを軽減する方法についても解説

がんの治療法として、手術療法や放射線療法、化学療法などが知られています。がんの種類によっても適応される治療法はさまざまで、ステージごとにも異なる治療法が検討されます。

今回は、食道がん患者さんやがん患者さんの親族に向けて、食道がんのステージごとの治療法を紹介します。末期がんの苦しみを軽減する方法についても解説しますので、ぜひ参考にご覧ください。

食道がんとは?


まずは、食道がんの概要を紹介します。

食道は咽頭と胃の間をつなぐ管状の臓器で、消化機能はありません。食道は気管や心臓、大動脈、肺などの臓器に囲まれている、体の中心部にある臓器です。食道の壁は、内側から外側に向かって粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、外膜に分かれています。

また、嘱望の周囲にはリンパ節があります。食道の主な働きは、経口摂取した食物を胃に送ることです。胃から食道に食物が逆流してこない構造になっています。

食道がんは、食道の内面をおおっている粘膜の表面から生じることが知られています。食道のどこにでもできる可能性があり、約半数が食道の中央付近からでき、食道内にいくつも同時にできることもあります。

食道がんは大きく2つに分けられます。

食道の壁の粘膜内にとどまるがんを早期食道がん、粘膜内から粘膜下層までのがんを食道表在がんと呼びます食道がんは進行が早く、有効な治療法が限られているので、難治がんとも言われています。

60~70代の男性に起こりやすいがん

食道がんには、60〜70代の男性に起こりやすいという特徴があります。罹患率の男女比は約6:1で、喫煙や飲酒の習慣がある方、辛いものが好きな40代以上の方は、毎年1回を目安に検査を受けることが大切です。

日本人は胸部食道がんになりやすい

食道は、大きく「頸部食道」「胸部食道」「腹部食道」の3つに分けられます。

部分によって呼び名があり、咽頭付近を頸部食道、胸の付近を胸部食道と呼びます。さらに、食道裂孔上縁から食道胃接合部までは腹部食道と呼ばれています。

日本人はこのうち胸部食道がんになりやすいと言われています。胸部食道は、心臓や大動脈、気管などと接しているため、手術には高い技術が必要とされます。

食道がんの症状


続いては、食道がんの症状を解説します。

食道がんの初期には自覚症状がほとんどなく、早期発見が難しいと言われています。がんが進行していくにつれ、以下のような症状が生じます。

  • 飲食時に胸の違和感がある(胸の奥がチクチク痛む、熱いものを飲んだときにしみる感じがするなど)
  • 飲食物がつかえる感じがする
  • 体重が減る
  • 胸や背中が痛む
  • 咳が出る
  • 嗄声(声のかすれ)がある

など。

末期がんと宣告された場合の症状

続いては、末期がんと宣告された食道がんの症状を紹介します。

末期がんで余命1カ月と宣告を受けたときは、食欲不振や倦怠感、呼吸困難のような症状が現れる傾向があります。

日を追うごとに症状は強くなっていき、食事の量や水分の摂取量が徐々に減っていきます。食事の量や水分の摂取量の低下には、がんの進行や腫瘍による通過障害、便秘、嘔吐、嘔気、精神的なものなどが影響します。

余命宣告の1カ月前には、だるさや息が上がるような症状に加え、不安感や不眠、落ち込みなどの精神的な症状も出てきやすいと言われています。生存期間が約2週間頃になると、せん妄という症状が出ます。

さらに、生存期間が約1週間頃になると、全体的な身体機能の低下がみられよく眠るようになります。生存期間が数日〜数時間になるとうとうとと眠っている時間が多くなり、苦痛も感じづらくなるでしょう。

ただし、音は最期まで聞こえていることが多いので、呼びかけに反応できるケースもあります。人によっては、気道に痰や唾液がたまる「喘鳴」や、下顎を使った「下顎呼吸」も生じるようになります。血液の酸素が不足すると「チアノーゼ」になることもありますので、注意が必要です。

また上記はあくまで一般的な例であり、末期がんと宣告された方の全てが同じ症状になるわけではありません。

早期がんから末期がんまで食道がんのステージ分類


次に、早期がんから末期がんまで食道がんのステージ分類を解説します。

食道がんの病期(ステージ)とは、がんの進行度、がんがどの程度広がっているかを示すものです。食道がんの病期(ステージ)は、0期(早期がん)〜Ⅳ期(末期がんと呼ばれることが一般的)までのステージがあります。

0期 早期がん
Ⅰ期 転移のない粘膜下層浸潤がん
Ⅱ期・Ⅲ期 進行がん
Ⅳ期 切除不能がん

食道の粘膜から発生したがんは、大きくなると食道の外側へと広がっていきます。

これを浸潤と呼びます。

食道の壁を越えて気管や大動脈などの周囲の臓器にまで直接広がっていき、食道の壁内にあるリンパ管や血管にがんが浸潤し、リンパ節や肺、肝臓などの他の臓器へと移り、これらを転移と呼びます。

食道がんのT・N・M各因子の分類

次に、食道がんのT・N・M各因子の分類を紹介します。

食道がんの進行度は、次のTNMの3種のカテゴリーの組み合わせで決まります。

  • Tカテゴリー:原発腫瘍の広がり(深達度)
  • Nカテゴリー:領域リンパ節(食道の近くにあるリンパ節)に転移したがんの個数
  • Mカテゴリー:遠隔転移(がんができた場所から離れた臓器やリンパ節への転移)の有無

 

食道がんのT・N・M各因子の分類は、次の表の通りです。

T因子 T1a がんが粘膜内にとどまる
T1b がんが粘膜下層にとどまる
T2 がんが固有筋層にとどまる
T3r がんが食道外膜にまで広がっている。だが心膜や腹膜など隣接臓器への浸潤がなく切除できる
T3br がんが食道外膜にまで広がり、隣接臓器に湿潤している可能性があり、切除できるかどうかの境界である
T4 がんが食道周囲の肺、大動脈、気管などにまで明らかに広がっている
N因子 N0 リンパ節転移がない
N1 領域リンパ節内に、リンパ節転移が1−2個ある
N2 領域リンパ節内に、リンパ節転移が3−6個ある
N3 領域リンパ節内に、リンパ節転移が7個以上ある
M因子 M0 遠隔転移がない
M1a 切除に寄る治療効果が期待できるがんから離れたリンパ節への領域外リンパ節に転移がある
M1b M1a以外の領域外リンパ節または食道から離れた臓器である遠隔臓器に転移がある

(参考:がん情報サービス 食道がん 治療

食道がんの深達度

次に、食道がんの深達度を紹介します。

食道がんの深達度分類は、治療方針を決めるときに使う「臨床的進行度分類」と、切除した病変を病理診断し、実際のがんの広がりを評価した「病理学的進行度分類」の2つがあります。

食道がん(扁平上皮がん)の臨床的進行度の分類

食道がん(扁平上皮がん)の臨床的進行度(ステージ)分類の表を紹介します。

転移
壁深達度 N0 N1 N2/N3/M1a M1b
T0/T1a 0 ⅢA ⅣB
T1b ⅢA ⅣB
T2 ⅢA ⅢA ⅣB
T3r ⅢA ⅢA ⅣB
T3br ⅢB ⅢB ⅢB ⅣB
T4 ⅣA ⅣA ⅣA ⅣB

(参考:がん情報サービス 食道がん 治療

ステージごとの食道がんの治療法


続いては、ステージごとの食道がんの一般的な治療法を紹介します。

ただし治療を受ける方の希望やライフスタイル、年齢などによっても適切な治療法は異なります。ここで紹介する治療法はあくまでも一般的なものであると認識し、自身に合った治療法については主治医と相談して決めるのが良いでしょう。

がんの治療方針を決めるためには、いくつかの検査があります。上部消化管内視鏡検査は、食道の粘膜の色や凹凸を観察する検査で、広がりや深さを診断できます。上部消化管造影検査は、がんの場所や大きさ、食道内腔の狭さなど全体を確認する検査です。超音波内視鏡検査は、内視鏡の先端についた超音波装置を用いて行い、より詳細な検査が可能です。

この他にも、病理検査・病理診断・CT検査・MRI検査・超音波(エコー)検査・PET検査・腫瘍マーカー検査(血液検査)などが、適宜行われます。

早期がん(0期の食道がん)の治療法

まずは、早期がん(0期の食道がん)の治療法を紹介します。

早期がんで長さが5cm以内などの条件を満たしている場合、食道を温存できる内視鏡的切除が標準治療として推奨されています。

内視鏡切除が行われる条件は、食道の全周に及んでいないがんか、全周に及んでいる場合は長さが5cm以下です。

がん細胞が粘膜下層に浸潤している、リンパ管や静脈に侵入しているなど、がんが残っている恐れやリンパ節転移の可能性が高いと判断された場合は、内視鏡的切除後に化学放射線療法(薬物療法と放射線治療を組み合わせた治療法)や手術が実施されるケースもあります。

ただし、早期がんだとしても、化学放射線療法または放射線治療を受ける場合もあります。

化学放射線療法または放射線治療が行われる条件は、粘膜にとどまるがんのうち、がんが食道の全周に及んでおり、かつ長さが5cmを超えることです。早期がんの治療後、再発予防として抗がん剤治療や放射線治療、免疫療法などの治療を受けるケースもあります。

Ⅰ期の食道がんの治療法

Ⅰ期の食道がんでは、手術または化学放射線療法が標準治療として推奨されています。治療を受ける方の体の状態によって、これらの中から適した治療法が選択されます。

Ⅱ期・Ⅲ期の食道がんの治療法

Ⅱ期・Ⅲ期の食道がんの場合、まず治療前に体の状態を調べます。

手術ができる体の状態であれば、細胞障害性抗がん薬を用いた化学療法を行ってから手術が選択されるケースが一般的です。手術前に化学放射線療法によってがんを切除したものの、がんが完全に消えなかったことが分かった場合には、術後補助療法として免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合もあります。

免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫細胞ががん細胞を攻撃する力を保つための薬です。T細胞やがん細胞のアンテナに作用し、免疫にブレーキがかかることを防ぐ薬で、さまざまな種類がありそれぞれ対応するがんが異なります。

免疫チェックポイント阻害薬を使用すると、さまざまな副作用が起こる可能性があります。主な副作用は疲労、そう痒症、発疹、悪心、食欲減退などで、副作用の出現には、個人差があります。

体力的に手術はできないものの化学放射線療法はできる体の状態であると判断された場合や、治療を受ける方自身が手術を希望しない場合には、完治を目指した治療として化学放射線療法が用いられることもあります。

手術も化学放射線療法もできない場合は、単独で放射線治療や化学療法などを行うケースもあるそうです。

末期がん(Ⅳ期の食道がん)の治療法

末期がん(Ⅳ期の食道がん)の治療法として、ⅣA期では化学放射線療法が標準治療とされています。

ⅣB期では化学療法が標準治療とされており、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん薬を組み合わせた治療が進められることが多いです。

末期がんの苦しみを軽減するには


では、末期がんの苦しみを軽減するにはどうしたら良いのでしょうか。食道がんで末期がん(Ⅳ期)と診断された場合、前述した通り化学放射線療法や単独の化学療法、免疫チェックポイント阻害薬による治療法などがあります。

しかしこれらの治療法は、副作用が強く出てしまうケースもあります。末期がん患者の方は副作用による辛さはもちろん、死に対する恐怖、自責の念、経済的な苦痛などさまざまな苦しみを抱える方が多いため、注意が必要です。ここからは、末期がんの苦しみを軽減するためのいくつかの方法を紹介します。

緩和ケアを受ける

末期がんの苦しみを軽減するには、緩和ケアを受けることを推奨します。

緩和ケアとはがんに伴う心と体、社会的な苦しみ、辛さを和らげたり、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症などを軽減するためのケアのことです。緩和ケアについて知識を深めるために、WHOの定義を紹介します。

「緩和ケアは、身体的、心理的、社会的、または霊的な側面を含めて、生命を脅かす疾患がもたらす困難を抱える患者とその家族の生活の質を改善します。そして介護者のQOLも改善します。」

(引用:公益社団法人 日本WHO協会

緩和ケアによって痛みや精神的な苦しみを和らげられる可能性があります。心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、看護師、医師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどのサポートを受けられます。

緩和ケアは末期がん患者の方はもちろん、早期がんの方でも進行がんの方でもケアを受けられます。食道がんでは、嚥下障害や栄養障害などによってQOL(生活の質)が低下している場合が多く、治療初期から緩和ケアを受けるのが良いでしょう。

他の治療法を検討する

末期がんの苦しみを軽減するには、他の治療法を検討することを推奨します。前述したステージごとの治療法はあくまで一般的なものです。

「さまざまな治療法を試したが効果を得られない」と感じている方は、これまで選択してこなかった他の治療法を検討するのも一つの方法です。

「まだ治療法がある」ということが大きな希望になる可能性がありますので、主治医と相談の上取り入れることも良いでしょう。

6種複合免疫療法

まとめ


今回は、食道がんのステージごとの治療法について紹介しました。

まず、早期がんで長さが5cm以内などの条件を満たしている場合、食道を温存できる内視鏡的切除が標準治療として推奨されます。

また、Ⅰ期の食道がんでは、手術または化学放射線療法が標準治療として推奨され、Ⅱ期・Ⅲ期の食道がんの場合には化学放射線療法や術後補助療法として免疫チェックポイント阻害薬によって治療が行われます。

ⅣA期では、化学放射線療法が標準治療とされており、食道がんで末期がん(Ⅳ期)と診断された場合、前述した通り化学放射線療法や単独の化学療法、免疫チェックポイント阻害薬による治療法などが適応されます。

末期がんの苦しみを軽減するには、緩和ケアやこの他の治療法を検討することです。

食道がんの治療法にはさまざまなものがありますが、ステージや患者さんの体調、希望などに合わせて、医師と共に適した治療法を決めていくことをおすすめします。

末期がんの治療法の一つとして、6種複合免疫療法があります。

同仁がん免疫研究所は、6種複合免疫療法を行っている施設の一つです。

同仁がん免疫研究所では、厚生労働省の許可を受けた細胞培養施設にて、極めて高度な安全管理体制のもとで細胞培養の委託を受けています。

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