がん免疫療法コラム

能動免疫療法と受動免疫療法とは? それぞれの特徴や主な治療法をご紹介

免疫とは、体に備わっている自分を守るための機能です。この免疫は、外部からの侵入者である細菌やウイルスに対して、生体防御機能を発揮します。

現在、免疫機能を用いたがんの治療法について研究が進められています。今回は免疫機能を用いた治療法である「能動免疫療法」と「受動免疫療法」について紹介します。

がんを患っている方やそのご家族の方は、ぜひ参考にご覧ください。

能動免疫と受動免疫の違い


まずは能動免疫と受動免疫の違いを紹介します。先程も紹介した通り、免疫は外部からの侵入者である細菌やウイルスといった抗原に対して体から排除する働きをします。

免疫には、能動免疫と受動免疫があります。

能動免疫とは、がん細胞やウイルスなどの抗原が侵入した際に、体内で抗体が作られることによる免疫応答です。

一方、受動免疫とは、体内に抗体を投与することで一時的に獲得する免疫のことです。

免疫療法とは?


では、免疫療法とは何なのでしょうか。

がんの免疫療法の概要を紹介します。免疫療法は、人間に本来備わっているがん細胞に対する免疫力を高めて治療する方法です。

もともと体にある機能を用いる治療法なので、がんの三大療法と言われている手術療法、化学療法、放射線療法よりも副作用が少ないという特徴があります。高齢者や体力の少ない患者さんでも、無理なく治療を受けられます。

能動免疫療法と受動免疫療法


続いては、能動免疫療法と受動免疫療法について紹介します。免疫療法は、大きく以下の2つに分けられます。

・能動免疫療法

・受動免疫療法

それぞれの詳細について次章以降で解説します。

能動免疫療法

まずは、免疫療法の一つである能動免疫療法についてです。

能動免疫療法は、治療を受ける方の体内でがんに対する免疫反応が起こるように治療をする方法です。がんに対する免疫による攻撃力を高める能動免疫療法には、樹状細胞療法、サイトカイン療法、非特異的免疫賦活薬による治療、がんワクチン療法などがあります。

がんによってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる能動免疫療法には、免疫チェックポイント阻害療法があります。

受動免疫療法

次は、免疫療法の一つである受動免疫療法についてです。

受動免疫療法では、体外でがんを攻撃する免疫細胞や抗体を作ってから治療を受ける方に投与します。一時的に免疫を獲得することで、治療効果が期待できます。非特異的リンパ球療法、がん抗原特異的T細胞療法、抗体療法などが、受動免疫療法として知られています。

能動免疫療法の種類


続いては、能動細胞療法の主な種類について紹介します。

今回は樹状細胞療法、サイトカイン療法、非特異的免疫賦活薬による治療、免疫チェックポイント阻害薬による治療、免疫細胞療法、抗体療法について紹介します。

樹状細胞療法

まずは樹状細胞療法の概要や特徴について紹介します。

樹状細胞を用いたがんに対する免疫療法は特に注目を集めているそうです。腫瘍抗原特異的な抗腫瘍効果の誘導を目指した臨床試験は、さまざまな機関で行われてきました。

樹状細胞療法では、体から取り出した樹状細胞に、がんの目印となるがん抗原の情報を覚えさせます。樹状細胞自体はがん細胞を攻撃する能力を持っていませんが、がん細胞が発現しているがん抗原を認識し、その情報を伝える役割を持っています。獲得免疫に関するリンパ球に対してがんの情報を伝える能力を鍛えることで、より効率的にがん細胞を破壊します。

また、がん抗原を使わずに樹状細胞を直接がんの中に注入する方法もあります。

サイトカイン療法

次に、サイトカイン療法の概要や特徴について紹介します。

サイトカイン療法は、1980年代頃に考えられた免疫療法です。サイトカインは、異物を攻撃する免疫細胞を活発にしたり増やしたりする働きを持ちます。

この働きを活かして、免疫細胞のがんに対する攻撃力を高めることを目指しています。サイトカイン療法で用いられる薬として、インターフェロンやインターロイキンなどがあります。

非特異的免疫賦活薬による治療

次に、非特異的免疫賦活薬による治療について紹介します。

非特異的免疫賦活薬による治療は、古くから研究されてきました。非特異的免疫賦活薬は、微生物やキノコなどから取り出した成分でつくられた薬や化学物質のことを言います。

免疫療法の先駆けとして免疫力のアップが期待されていますが、これらの薬がどのように免疫力を高めているのかについては分かっていません。非特異的免疫賦活薬は一般的に、手術療法、放射線療法、薬物療法と組み合わせて使用されます。

免疫チェックポイント阻害薬による治療

次に、免疫チェックポイント阻害薬による治療について紹介します。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんが免疫細胞に対してかけているブレーキを解除する新たな治療法に用いられます。これまでの免疫療法では、免疫機能の攻撃力を高める方法が中心でした。

ですが昨今、がん細胞が免疫のはたらきにブレーキをかけて、免疫細胞の攻撃を阻止していることが判明しました。がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発化する治療法が考えられました。

現在では、免疫チェックポイントと呼ばれている治療薬が一般的に用いられています。働きが弱くなったT細胞が再び活性化し、がん細胞が増えるのを食い止めることができると考えられています。

免疫細胞療法

次に、免疫細胞療法について紹介します。

免疫細胞療法とは、体の外でご本人のがん細胞と戦う免疫細胞の攻撃力を高め、体内に戻す治療法です。ほとんどの種類のがんに対して行えるというメリットがあり、副作用の少ない治療法として知られています。

免疫細胞療法は放射線治療や化学療法、温熱療法との相性も良く、さまざまな治療法との併用も可能です。免疫細胞療法は通院で行なえることも、大きなメリットです。また治療後の再発予防としても期待されています。

免疫細胞療法の中には、以下に挙げるようにさまざまな種類があります。

 エフェクターT細胞療法 エフェクターT細胞療法は、患者さんのT細胞を体の外に取り出して行います。取り出したT細胞にがん細胞の目印を見分ける遺伝子を組み入れて増やします。その後、再び体の中に戻すことで攻撃力が強まったT細胞を使うことができます。
 NK細胞療法 NK細胞療法は、名前の通りNK細胞を用いた治療法です。NK細胞には、がんなどの異常な細胞への攻撃力が高いという特徴があります。NK細胞療法では、NK細胞を活性化・増殖させ体内に戻します。NK細胞には、体内をパトロールし異常細胞をいち早く発見して攻撃するという働きがあります。がん細胞が目印を隠している場合にも認識できるため、効率的に殺傷できます。抗体医薬とNK細胞療法を併用することで、より高い効果が期待できます。
 アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法) アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)は、Tリンパ球を増殖・活性化させる治療法です。一度取り出したTリンパ球体内に戻します。Tリンパ球の多くはαβT細胞であるため、治療名にはアルファ・ベータT細胞療法という名前がついています。体の免疫細胞の働きを総合的に高める効果が期待できます。早期がんだけでなく、進行したがんにも幅広く適応できます。抗がん剤と併用することで、より効果を発揮しやすいと考えられています。
 ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法) ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)は、Tリンパ球中に数%しか含まれていないγδT細胞を増殖・活性化させる治療法です。増殖・活性化したγδT細胞を体内に戻します。ガンマ・デルタT細胞療法は、一部の抗体医薬や、骨腫瘍・骨転移治療薬のゾレドロン酸と併用することで、より一層の高い効果が期待できます。
 6種複合免疫療法 6種複合免疫療法は、血液中に含まれる免疫細胞を取り出して行う治療法です。より効果的にがんを攻撃できるよう、免疫細胞を活性化・増殖させて体内に戻します。このことにより、がんと闘う力を増強させることができます。治療は採血と点滴だけで行います。6種複合免疫療法は患者さんご自身の細胞を使う治療法であり、患者さんへの負担や副作用も少ないことが知られています。

抗体療法

最後に、抗体療法の概要や特徴について紹介します。

抗体療法では、B細胞が作り出す異物を攻撃する抗体を用います。抗体は、正常な細胞にはありません。がん細胞のみにある物質や、正常な細胞よりもがん細胞の方によりたくさんある物質などを見分けてピンポイントで結合するという特徴があります。

抗体療法は、2000年代から開発が進みました。がん細胞の特徴に合った抗体を人工的に合成することで、薬として利用する抗体を目印にして集まる免疫細胞の働きを利用します。抗体ががん細胞に結合することにより、がん細胞が増えるのを食い止められる場合もあります。

また、細菌ではがん細胞が増えていくために必要な血管が増えるのをブロックする抗体も開発されています。

6種複合免疫療法

まとめ


今回は、能動免疫療法と受動免疫療法について紹介しました。

能動免疫療法とは、体のなかで免疫を高めて、がんに対する攻撃を引き起こす治療法です。

受動免疫療法とは、体の外で攻撃力を高めた免疫細胞や、人工的に合成した抗体を投与する治療法です。

古くから研究されている治療法もあり、安心して受けられます。また近年研究が進められている治療法もあり、その他の治療方法と組み合わせることでより高い効果が期待できる場合もあります。

同仁がん免疫研究所は、今回紹介した6種複合免疫療法を行っている施設です。

同研究所では、厚生労働省の許可を受けた細胞培養施設にて、極めて高度な安全管理体制のもとで細胞培養の委託を受けています。細胞培養数は圧倒的で、約3週間で1,000から2,000個の細胞を20から50億個まで培養できます。

同仁がん免疫研究所治療に関する詳細は、こちらよりご確認ください。

監修:福岡同仁クリニック院長 麻生俊英

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