がん免疫療法コラム

獲得免疫とは? 免疫細胞の種類や免疫力を高める方法を解説

みなさんは獲得免疫についてご存知ですか?獲得免疫とは「異物に応じた攻撃法を記憶する仕組み」のこと。

今回は免疫細胞の種類や免疫力を高める方法を解説します。がんを患っている方やその家族の方向けに情報をまとめましたので、ぜひ参考にご覧ください。

がん・6種複合免疫療法

免疫の仕組み


まずは免疫の仕組みを紹介します。

免疫とは、免疫細胞によって体内に侵入しようとするウイルス・細菌・がん細胞などの異物を防いだり排除したりする働きのことです。

免疫は大きく以下の2つに分けられます。それぞれの概要と、免疫の仕組みを簡単に紹介します。

まず1つ目は、自然免疫です。自然免疫は、生まれつき体に備わっている仕組みのことです。

そして2つ目は、今回のテーマである獲得免疫です。獲得免疫は、異物に応じた攻撃法を記憶する仕組みのことを言います。

獲得免疫とは?


続いて、獲得免疫とは何かを解説します。

獲得免疫とは、自然免疫による排除を逃れ、体内に増え始めたウイルス・細菌・がん細胞などの異物に対して機能する免疫反応のことです。がん細胞などの異物の目印ともいえる抗原を認識し、それに応じた排除方法を選択し攻撃を行います。抗原に合った排除方法を記憶する働きもあるため、次に同じ抗原が侵入した際にもすぐに排除することが可能です。

獲得免疫で機能する免疫細胞の種類


次に、獲得免疫で機能する免疫細胞の種類を紹介します。

主に機能する免疫細胞は、樹状細胞・B細胞・T細胞(キラーT細胞・ヘルパーT細胞)です。次章以降で詳しく解説します。

樹状細胞

獲得免疫で機能する免疫細胞の種類の1つ目は、樹状細胞です。樹状細胞とは、木の枝のような突起のある細胞です。

白血球の中の免疫細胞の一つであり、体内で異物を発見した際に異物を取り込んで特徴を覚えるという働きをします。樹状細胞は、リンパ節まで移動して覚えた特徴をリンパ球であるB細胞やT細胞に伝達し、さらに攻撃するように指示する役割を担ってます。

B細胞

獲得免疫で機能する免疫細胞の種類の2つ目は、B細胞です。B細胞はリンパ球の一種で、抗体を作り異物を攻撃する細胞です。

抗原が活動できないように動きを止めたり、毒素を中和したりする働きがあります。さらにB細胞には、一度侵入した抗原の特徴を記憶する役割もあります。

T細胞

獲得免疫で機能する免疫細胞の種類の3つ目は、T細胞です。T細胞はリンパ球の一種で、異物を見つけて排除する役割を持っています。

T細胞はいくつかの種類に分類できます。次章以降でT細胞である、キラーT細胞とヘルパーT細胞について紹介します。

キラーT細胞

キラーT細胞は、後述するヘルパーT細胞から指示された抗原を持つ異物を攻撃する役割を持っています。

ヘルパーT細胞

ヘルパーT細胞は、キラーT細胞や樹状細胞から異物の特徴である抗原を受け取ると、免疫活性化物質サイトカインを放出します。キラーT細胞などに攻撃をする指示を送る役割を持っています。

獲得免疫は2種類に分けられる


獲得免疫は、異物に対する攻撃方法によって以下の2種類に分けられます。

  • 細胞性免疫
  • 液性免疫

次章以降で細胞性免疫と液性免疫について、詳しく解説します。

細胞性免疫

まず細胞性免疫について紹介します。

細胞性免疫では、免疫細胞自体が直接異物を攻撃します。例えば、ヘルパーT細胞から放出されたサイトカインによって、キラーT細胞などを活性化させ異物を攻撃します。細胞内に侵入した異物にも対応できるため、がん細胞などに特に有効だと言われています。

液性免疫

続いては、液性免疫について紹介します。

液性免疫では、抗体によって異物を攻撃します。例えばB細胞が抗体を作り、異物を攻撃します。ただし液性免疫の場合、作られた抗体は細胞外の異物に対して働くものとなりますので、異物が細胞内に入ると認識できなくなるという特徴があります。

獲得免疫(免疫力)を高める方法


次に、獲得免疫を高める方法を紹介します。

自分ですぐにできる、獲得免疫を含めた免疫力を高める方法をいくつかピックアップして紹介します。

  • 食事を工夫する
  • 適度な運動をする
  • 睡眠時間を確保する
  • 入浴する

上記4つについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

食事を工夫する

獲得免疫を高める方法1つ目は、食事を工夫することです。

免疫力を高めるには、規則正しくバランスの良い食事を摂ることが大切です。肉や魚、卵、大豆などの適量のタンパク質を摂取すること、ヨーグルトや納豆などの発酵食品や食物繊維を多く含む食品など、腸内環境を整える食品を摂取することは重要なポイントです。

食事では、ビタミンA・C・Eなどを摂取することも意識しましょう。

ビタミンAは レバー、うなぎ、緑黄色野菜などに豊富に含まれています。

ビタミンCは、果物、緑黄色野菜などに豊富に含まれています。

ビタミンEは 魚介類、ナッツ類などに豊富に含まれています。ぜひバランスの良い食事のために、紹介したような栄養素を取り入れてみましょう。

適度な運動をする

獲得免疫を高める方法2つ目は、適度な運動をすることです。

運動をして体を動かすことも、免疫力を高めるためには大切です。しかし無理をしすぎるのは逆効果になるので、適度な運動をするように心がけましょう。ウォーキングや散歩は、体への負担が少なく、日常生活に取り入れやすいためおすすめです。

睡眠時間を確保する

獲得免疫を高める方法3つ目は、睡眠時間を確保することです。

免疫力を高めるには、睡眠時間をしっかり確保することが大切です。食事は寝る数時間前に済ませておくことで、交感神経を鎮めることができます。逆に、寝る直前に食事をすると交感神経が働いて自然な睡眠に入れなくなるので、注意しましょう。

また、寝る直前のスマートフォンやパソコンのチェックは控えるのがおすすめです。電子画面を見ることで、交感神経が活性化する可能性があり、寝付きづらくなってしまいます。

入浴する

獲得免疫を高める方法4つ目は、入浴することです。

ストレスは免疫力を下げてしまう要因です。入浴にはストレスなどで高まった交感神経を抑制する作用があります。

寝る1時間前にぬるめの温度で、約20〜30分程度お風呂に浸かるのがおすすめです。寝る直線の入浴や熱いお湯は体を覚醒させてしまうため、注意しましょう。入浴剤などを活用することで、お風呂の時間をより楽しく過ごせますよ。

免疫の力を利用してがんと闘う免疫療法


免疫の力を利用してがんと闘う免疫療法について紹介します。がんの治療法として、免疫の力を利用する免疫療法があります。

免疫療法とは、免疫を活性化させてがん細胞を攻撃する治療法です。免疫療法の主なメリットは、以下の通りです。

  • がんの種類、部位、進行度を問わず治療を受けられる
  • 再発や転移予防にも効果を期待できる
  • 他のがん治療と併用可能
  • 自身の免疫力を利用するので比較的副作用が少ない

 

免疫療法は、手術療法や化学療法などと比較しても、メリットの多い治療法だと言えるでしょう。主治医と相談の上、効果的に取り入れることで治療効果を高めることができます。

免疫療法の主な種類


次に、免疫療法の主な種類を紹介します。

免疫療法と一口にいっても、さまざまな種類の治療法があります。

  • 免疫チェックポイント阻害薬による治療
  • 樹状細胞ワクチン療法
  • エフェクターT細胞療法
  • NK細胞療法
  • アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)
  • ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)
  • 6種複合免疫療法

今回は上記7つの治療法に関して紹介しますので、ぜひ参考にご覧ください。

免疫チェックポイント阻害薬による治療

免疫療法の一つである、免疫チェックポイント阻害薬による治療を紹介します。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です。

T細胞にブレーキがかかる仕組みを「免疫チェックポイント」と言います。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞やがん細胞のアンテナに作用する薬剤です。T細胞の表面には、異物を攻撃してはいけない、という命令を受け取るためのアンテナがあります。

がん細胞にも同様にアンテナがあります。がん細胞のアンテナがT細胞のアンテナに結合して、異物を攻撃してはいけないという命令を送ると、T細胞にブレーキがかかってしまい、がん細胞は排除されなくなります。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫にブレーキがかかるのを防ぐため、T細胞にブレーキがかかる仕組みを排除することができます。現在、免疫チェックポイント阻害薬治療が行えるがんは以下の通りです。

(※2020年8月現在の情報です。)

  • メラノーマ(悪性黒色腫)
  • 非小細胞肺がん
  • 腎細胞がん
  • ホジキンリンパ腫
  • 頭頸部がん
  • 胃がん
  • 悪性胸膜中皮腫

など。

標準治療として診療ガイドラインに記載され、日本において保険診療で受けることができる免疫チェックポイント阻害薬は、以下の通りです。

  • ニボルマブ(オプジーボ)
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
  • イピリムマブ(ヤーボイ)
  • デュルバルマブ(イミフィンジ)
  • アテゾリズマブ(テセントリク)
  • アベルマブ(バベンチオ)

(参考:がん情報サービス 免疫療法 もっと詳しく

樹状細胞ワクチン療法

免疫療法の一つである、樹状細胞ワクチン療法を紹介します。

樹状細胞ワクチン療法は、がん細胞に対する免疫力を最大限に活性化することを目的としています。注目を集めている最新のがん免疫療法の一つであり、患者さん独自のワクチンをつくるオーダーメイド治療です。

樹状細胞は元々は白血球の中の免疫細胞の一部で、血液によって運ばれ、体の中のさまざまな箇所に分布します。抗原を発見すると、取り込んで特徴を覚えリンパ節まで移動して、リンパ球に抗原を攻撃するように指示を出します。抗原提示細胞とも呼ばれ、がんの目印を知らせる総司令塔のような役割を担っています。

樹状細胞の元となる細胞である単球を体外に取り出し樹状細胞へ育てて、この樹状細胞に「がんの目印」をあらかじめ認識させておいて、再び体内に注射して戻すという治療法です。

エフェクターT細胞療法

免疫療法の一つである、エフェクターT細胞療法について紹介します。エフェクターT細胞療法では、治療を受ける方の免疫細胞を抽出し、がん細胞の目印を見分ける遺伝子を組み入れて増殖させます。

その後、免疫細胞を体内に戻す治療法です。がん細胞への攻撃力を高める効果が期待できます。

エフェクターT細胞療法の一つであるCAR-T療法は、白血球の一種であるT細胞を遺伝子導入により改変する治療法です。T細胞を遺伝子導入後患者さんに投与することで、治療法を発揮します。患者さん自身の免疫システムを利用してがんを攻撃する、現在注目の治療法だと言われています。

また、国内で保険診療として受けることができるエフェクターT細胞療法は、CAR-T細胞療法のみだそうです。

ですが治療を行える施設は限られていますので、予め確認しておきましょう。

CAR-T細胞療法には、以下のような副作用があります。

  • 血圧や酸素濃度の低下
  • 心臓、肺、肝臓などのさまざまな臓器に障害が起こるサイトカイン放出症候群
  • 意識障害

これらの強い副作用が起きやすいため、入院して治療を行います。

NK細胞療法

免疫療法の一つである、NK細胞療法について紹介します。NK細胞は、ナチュラルキラー細胞と呼ばれることもある細胞です。NK細胞は、がん細胞やウイルスに感染した細胞を発見すると攻撃を開始します。他の指令を受けずとも単独で抗原を攻撃できますが、完全に見つけ出すことは不可能で、がん細胞を取り逃がしてしまうこともあります。

NK細胞療法は、患者さんの血液を採取し2週間ほど無菌状態でNK細胞を増殖・活性化させ、再び患者さんの体内へ戻すという療法です。NK細胞療法は、体への副作用が少ないという特徴があります。

アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)

免疫療法の一つである、アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)について紹介します。αβT細胞は、がんも含めた異常な細胞全般に対して攻撃する免疫細胞です。ヘルパーT細胞やキラーT細胞、制御性T細胞のことをαβT細胞と言います。

アルファ・ベータT細胞療法は、自身の血液を採取しT細胞を大幅に増殖・活性化した後に体内へ戻す治療法です。活性化リンパ球療法の一つとして知られています。がんの種類や進行度、患者さんの年齢によっても効果は異なりますが、化学療法や放射線療法の効果を増すことも期待できると言われています。

アルファ・ベータT細胞はさまざまな医療機関で長く行われている治療法です。特徴がよく分かっており、安全性も高い治療として知られています。

ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)

免疫療法の一つである、ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)について紹介します。γδT細胞は、α鎖、β鎖の2つの糖タンパク質から構成されるT細胞受容体を持つ細胞です。強力な抗腫瘍作用を持っています。

ガンマ・デルタT細胞療法は、免疫細胞のうちガンマ・デルタ型のT細胞受容体を持つT細胞を活性化・増殖したものを利用する治療法です。細菌やウィルスなどに感染した細胞やがん化を始めた細胞に対して、攻撃するという特徴があります。

ガンマ・デルタT細胞はNK細胞と似た働きをします。また、ガンマ・デルタT細胞は数%しか存在しないという特徴がありますが、最近では大量培養が可能となり、新しい治療法として取り入れられています。

6種複合免疫療法

免疫療法の一つである、6種複合免疫療法について紹介します。

6種複合免疫療法とは、キラーT細胞、NK細胞、NKT細胞、γδT細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞の6種類のそれぞれ異なる役割を持つ免疫細胞を培養、増殖させ、体内に戻す治療方法です。6種類の免疫細胞が1つのチームとなって働くことで、より高い効果を目指せると言われています

6種複合免疫療法では、30㏄の採血を行います。一度体の外に免疫細胞を取り出し、6種類の免疫細胞を培養によって同時に活性化・増殖させます。

その後約3週間の培養を行い、1,000〜2,000万個だった細胞を20〜50億個にまで増殖します。活性化・増殖した免疫細胞を点滴の形で投与し、再度体の中に戻すという治療法です。

がん・6種複合免疫療法

まとめ


今回は、獲得免疫について紹介しました。

異物に応じた攻撃法を記憶する仕組みである獲得免疫は、自然免疫による排除を逃れ、体内に増え始めた異物に対して機能します。免疫細胞の種類はさまざまであり、樹状細胞やB細胞、T細胞などがあります。また免疫力を高める方法として、食事の工夫や適度な運動、睡眠時間の確保、入浴などがおすすめです。

「福岡同仁クリニック」は、今回紹介した免疫療法の一つである6種複合免疫療法を提供している医療機関です。福岡同仁クリニックは、治療を実施するに当たり患者さんの症状や病態や病気の経過などを判断し、最適な治療法を提案してくれます。

「第四の選択肢」としてのがん免疫療法を取り入れたい方は、ぜひ相談してみてくださいね。6種複合免疫療法についての詳細な情報は、こちらよりご確認ください。

監修:福岡同仁クリニック院長 麻生俊英

がん・6種複合免疫療法

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