がん免疫療法コラム

抗がん剤によってしびれが生じるのはどうして? しびれの治療法や日常生活における工夫をご紹介

抗がん剤治療はがんと闘う上でよく用いられる治療法ですが、しばしばしびれのような副作用を引き起こすことがあります。このしびれは、末梢神経への影響によって生じることが多く、患者さんの日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

では、なぜ抗がん剤によるしびれが生じるのでしょうか?また、このようなしびれを軽減し、日常生活を快適に過ごすためにはどのような治療法や工夫が有効なのでしょうか?

この記事では、抗がん剤によるしびれが生じる原因とその治療法、さらに日常生活での工夫についてご紹介します。

抗がん剤治療によってしびれが生じる可能性がある


抗がん剤治療は多くの患者さんにとって必要不可欠なものですが、その副作用の一つに末梢神経障害があります。この状態は、手足のしびれとして現れることが多く、特に手先や足先から始まります。治療を重ねるたびに、このしびれは徐々に悪化する傾向があります。

例えば、最初はわずか数㎜の指先に軽いしびれを感じる程度ですが、次第にその範囲は広がり、第一関節まで達することもあります。また、その違和感も強くなっていきます。

この末梢神経障害は、他の多くの抗がん剤の副作用と比較しても改善が難しいとされています。症状の回復には時間がかかり、患者さんにとって大きな負担となることが少なくありません。治療の進行と共に、これらの症状に対処するためのサポートやケアが重要となってきます。

しびれが生じやすい抗がん剤の種類

しびれが生じやすい抗がん剤の種類を以下の表にまとめました。

一般名 商品名
細胞障害性の抗がん剤
パクリタキセル タキソール

パクリタキセル

パクリタキセル

(アルブミン懸濁型)

アブラキサン
ドセタキセル タキソテール

ワンタキソテール

ドセタキセル

カバジタキセル ジェブタナ
ビノレルビン ナベルビン

ロゼウス

ビンクリスチン オンコビン
ビンブラスチン エクザール
ビンデシン フィルデシン
エリブリン ハラヴェン
オキサリプラチン エルプラット

オキサリプラチン

カルボプラチン カルボプラチン

パラプラチン

シスプラチン シスプラチン

ランダ

ネララビン アラノンジー
分子標的型の抗がん剤
ボルテゾミブ ベルケイド

ボルテゾミブ

イキサゾミブ ニンラーロ
トラスツズマブ エムタンシン カドサイラ
ブレンツキシマブ ベドチン アドセトリス
ロルラチニブ ローブレナ
エヌトレクチニブ ロズリートレク
ペミガチニブ ペマジール
ポラツズマブ ベドチン ポライビー
エンホルツマブ ベドチン パドセブ
がん免疫治療薬(免疫チェックポイント阻害薬)
ニボルマブ オプジーボ
ペムブロリズマブ キイトルーダ
イピリムマブ ヤーボイ
その他
サリドマイド サレド
レナリドミド レブラミド

レナリドミド

ポマリドミド ポマリスト
ダリナパルシン ダルビアス

しびれが生じる原因


2023年10月現在、抗がん剤治療によって患者さんがしびれを感じる具体的な原因は、まだ明確に解明されていません。しかし、科学者たちは、抗がん剤に含まれる特定の成分がこの症状に関与していると考えています。

特に、白金化合物や植物由来のアルカロイドが、細胞内のDNA(デオキシリボ核酸)に影響を与えることが示唆されています。この影響が末梢神経系に及び、しびれやその他の神経障害を引き起こす可能性があると考えられています。

抗がん剤によるしびれの症状


抗がん剤によるしびれは、多くの患者さんにとって日常生活に影響を与える症状です。具体的には、手足や足先がピリピリとしたしびれを感じたり、冷たさを感じることがあります。また、手足や足先に紙が張りついているような違和感を覚えることも珍しくありません。このような症状は、日常的な動作にも影響を及ぼし、例えば服のボタンを留めるのが困難になったり、水が異常に冷たく感じたりすることがあります。

さらに、文字を書く際に困難を感じたり、リモコンやスマートフォンの操作がしにくくなったりすることもあります。手に持っている物をうっかり落としてしまったり、歩行時につまずきやすくなったりすることもあります。また、靴を履く際にも不便を感じることがあります。

これらの症状は、運動障害とは異なり、直接的な動きの制限を伴うわけではありません。しかし、しびれや違和感が日常生活の中でさまざまな不便を引き起こし、患者さんの生活の質に影響を与えることは間違いありません。

しびれが生じる時期と期間


抗がん剤治療を受けている患者さんがしびれを感じる時期には、一般的な目安が存在します。多くの場合、抗がん剤の投与から約2~3週間後にしびれが現れ始めることが多いです。このしびれは、患者さんによって異なりますが、6か月から30か月以上継続することが報告されています。

しかし、重要なことは、しびれの出現時期や症状が続く期間、またしびれの程度には個人差があるということです。したがって、これらの目安はあくまで一般的なケースを示しているに過ぎず、個々の患者さんによって症状は大きく異なる可能性があります。

抗がん剤によって生じたしびれの治療法はある?


抗がん剤によるしびれは、現在のところ、完全に治す方法が存在しません。確かにしびれを和らげるための薬はありますが、その効果には個人差があり、全ての患者さんに対して効果的であるとは限りません。一部のケースでは、薬が十分な効果を示さないこともあります。

このような状況を踏まえると、しびれの程度が重い場合、医師はがんの治療方法の変更を検討することがあります。例えば、使用している抗がん剤の種類を変更する、または投与量を減らすといった措置が取られることがあります。

しびれが生じた場合に行うべき日常生活の工夫


抗がん剤によってしびれが生じた場合に、がん患者さん本人や家族の方が行える日常生活における工夫をご紹介します。

安全に暮らすための工夫

抗がん剤によるしびれは、足に力が入らず、転倒や転落のリスクを高めることがあります。このような事故を防ぐためには、日常生活での工夫が重要です。例えば、移動時には手すりを積極的に使う、階段よりもエレベーターを利用する、足にフィットし柔らかい素材の靴を選ぶ、ハイヒールの使用を控えるなどが挙げられます。また、つまずきやすい物を床に置かない、滑りやすい敷物には特に注意することも大切です。

さらに、しびれによって感覚が鈍くなると、やけどやけがに気づきにくくなることがあります。これを防ぐためにも、日常生活での工夫が必要です。例えば、やけどを防ぐために厚手の手袋を使用する、カイロや湯たんぽの長時間使用を避ける、常に爪を短く整えておく、冷たい水や熱いお湯にはなるべく触れないようにするなどが効果的です。料理をする際には、包丁よりも安全な料理用ハサミやピューラーを使用することも、怪我を防ぐ上で役立ちます。

症状を緩和するための工夫

抗がん剤によるしびれの症状を緩和するためには、日常生活でのさまざまな工夫が効果的です。例えば、お風呂にゆっくりと浸かってリラックスすることで、血行が促進されしびれが軽減されることがあります。また、手袋や靴下を着用することで血流を改善し、しびれの症状を和らげることが可能です。

さらに、定期的なマッサージや手足の運動は、血行を良くし、しびれの軽減につながります。ただし、しびれの症状は人によって異なり、冷やすことで症状が緩和されることもありますが、冷やし過ぎると症状が悪化する場合もあるため注意が必要です。

医師と相談しながら自分自身に合った症状緩和の方法を見つけていくことが大切です。

生活しやすくするための工夫

日常生活の中での工夫もいくつかご紹介します。例えば、缶や瓶から直接飲むのではなく、持ち手のついたコップに移してから飲むことで、より安定して飲み物を楽しむことができます。また、衣服のボタンを面ファスナーに変更することで、着脱を容易にすることが可能です。

さらに、ペットボトルのフタを開ける際には、タオルやオープナー、ゴム手袋などを使用して、より力を入れずに開けられます。文字をうまく書けない場合は、パソコンやタブレットなどの電子機器を利用すると良いでしょう。

しびれ以外に起こり得る抗がん剤の副作用


抗がん剤は、手術では取り除けない血液やリンパのがんなど、多くのがん治療において不可欠な役割を果たしています。しかし、抗がん剤にはしびれ以外にもさまざまな副作用が伴います。以下に、抗がん剤の主な副作用を表形式で概要化して紹介します。

主な副作用 症状
アレルギー反応 抗がん剤に対するアレルギー反応は、発疹やかゆみ、時には重篤なアナフィラキシーを引き起こすことがあります。
吐き気・嘔吐・食欲不振 治療によって消化器系が影響を受け、吐き気や嘔吐、食欲不振が生じることが一般的です。
便秘 腸の動きが鈍くなることで、便秘が生じることがあります。
下痢 逆に、腸の動きが活発になりすぎて下痢を引き起こすこともあります。
疲れやすさ・だるさ 全体的な体力の低下や、持続的な疲労感、だるさが見られることが多いです。
口内炎 口腔内に炎症が生じ、痛みや食事の障害を引き起こすことがあります。
脱毛 髪の毛や体毛が抗がん剤治療によって一時的に抜けることがあります。
感染症 免疫力の低下により、感染症にかかりやすくなることがあります。
骨髄抑制 白血球や赤血球の数が減少し、貧血や感染症のリスクが高まることがあります。
肝機能障害・腎障害・心機能障害 肝臓、腎臓、心臓などの器官が損傷を受けることがあり、これらの機能の障害が生じることがあります。

抗がん剤以外のがん治療


抗がん剤治療以外にも、がん治療にはさまざまな方法が存在します。代表的なものには、手術療法、放射線療法、薬物療法、免疫療法があります。

以下に、それぞれの特徴について解説します。

手術療法

手術療法はがん治療における主要な局所療法の一つで、外科手術を用いてがん細胞をメスで切り取る方法です。この治療法の特徴は、がん細胞だけでなく、転移する可能性がある周囲の正常な組織も含めて切除する点にあります。このような広範囲の切除によって、転移がまだない場合、ほぼ全てのがん細胞を取り除くことが可能です。

手術療法は、放射線療法や抗がん剤治療と比較して、合併症が少ないというメリットがあります。しかし、手術自体にはリスクも存在し、手術の大きさや患者さんの全体的な健康状態によって異なります。また、手術後の回復期間や、手術によって生じる可能性のある身体的な変化も考慮する必要があります。

放射線療法

放射線療法は、がん細胞とその周辺部分のみを対象とする局所療法です。この治療法では、放射線を直接がん細胞に照射し、そのDNAを損傷させることでがん細胞を破壊します。放射線療法のメリットの一つは、高齢者や他の合併症を持つ方でも安全に治療を行うことが可能である点です。このため、外科手術が適さない場合の代替療法として、または手術の補助として広く用いられています。

しかし、放射線療法には副作用が伴います。照射される部位によって異なりますが、皮膚の赤みや腫れ、疲労感、吐き気、食欲不振などが挙げられます。また、照射部位の正常な組織にも影響を及ぼす可能性があり、長期的な副作用としては、照射部位の硬化や線維化が生じることもあります。

薬物療法

薬物療法はがん治療における全身治療の一種で、広範囲に転移したがんの治療に効果的です。この治療法には、抗がん剤治療をはじめ、分子標的薬や内分泌療法薬(ホルモン療法薬)などが含まれます。抗がん剤治療は、さまざまなタイプのがん細胞を攻撃し、成長を阻害することを目的としています。

分子標的薬は、がん細胞の特定の分子やシグナル伝達経路に作用し、がん細胞の成長や分裂を抑制します。内分泌療法薬は、ホルモン依存性のがんに対して効果的で、特定のホルモンの効果をブロックすることでがんの成長を抑えます。

しかし、これらの薬物療法は、がん細胞だけでなく正常細胞にも影響を及ぼすため、さまざまな副作用が生じることがあります。副作用には、疲労感、吐き気、脱毛、免疫系の抑制などが含まれ、患者さんの生活の質に影響を与える可能性があります。

免疫療法

免疫療法は、体の免疫システムの力を活用してがんと闘う革新的な治療法です。この方法は、他の治療法、例えば手術、放射線療法、薬物療法と併用することも可能です。免疫療法にはさまざまな種類があり、従来の薬物療法で一般的な副作用(吐き気や脱毛など)が比較的少ないとされています。ただし、これは副作用が全くないという意味ではありません。特に、自己免疫に関連する副作用が現れることがあり、注意が必要です。

免疫療法は主に2つのカテゴリーに分けられます。一つ目は免疫チェックポイント阻害薬による治療法で、これは免疫システムのブレーキを外し、がん細胞に対してより積極的に働くよう免疫細胞を活性化させます。二つ目は免疫細胞療法で、がんに対抗する特定の免疫細胞を体外で増やし、患者さんに戻す方法です。

免疫療法は特に進行がんや従来の治療法に反応しないがんに対して効果を示すことがあります。また、がんの再発を防ぐために用いられることもあります。この治療法は、がん治療において新たな選択肢を提供し、多くの患者さんにとって希望をもたらしています。

免疫チェックポイント阻害薬による治療法

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫システムががん細胞を攻撃する能力を維持するための治療法です。通常、T細胞(免疫細胞の一種)の表面には、体の正常な細胞を攻撃しないよう「ブレーキ」をかけるアンテナがあります。がん細胞もこれらのアンテナを利用し、T細胞に対して「攻撃しない」信号を送り、自身を免疫システムから保護します。免疫チェックポイント阻害薬は、この「ブレーキ」の仕組みに作用し、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにします。

この治療法は、メラノーマ(悪性黒色腫)、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がん、悪性胸膜中皮腫など、さまざまな種類のがんに対して有効です。治療が可能ながんの種類は、使用される免疫チェックポイント阻害薬によって異なります。また、この治療法は単独で使用される場合もあれば、他の免疫チェックポイント阻害薬や細胞障害性抗がん薬と組み合わせて使用される場合もあります。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用には、発熱、倦怠感、視力低下、耳鳴り、めまい、のどの痛み、息切れ、動悸、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、筋力低下などがあります。これらの副作用は、免疫システムの活性化によって引き起こされるもので、患者さんの体調や健康状態によって異なります。

免疫細胞療法

免疫細胞療法は、人間が本来持っている免疫力を利用し、がん細胞を攻撃することを目的としています。具体的には、血液中から免疫細胞を取り出し、これらを体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻してがん細胞を攻撃する方法です。

免疫細胞療法の一つである「NK細胞療法」は、血液中のNK細胞を体外で培養し活性化させて投与する方法です。この方法では、活性化した免疫細胞による軽い発熱が稀に発生することがありますが、通常は一時的で、投与後1日以内に収まることがほとんどです。

「樹状細胞ワクチン療法」や「がんワクチン」は、がん細胞の特定の目印(がん抗原)を狙った免疫反応を利用します。これらの治療も、稀に軽い発熱が発生する程度で、副作用はほとんどないとされています。

「6種複合免疫療法」は、NK細胞、NKT細胞、γδ(ガンマ・デルタ)T細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞の6種類の免疫細胞を同時に活性化・増殖させ、がん細胞への攻撃力を高める治療法です。これにより、体内の免疫システムが強化され、がんとの戦いにおいてより効果的な応答が期待されます。

免疫細胞療法の種類によって起こり得る副作用は異なりますが、比較的軽度な副作用が多いとされています。

6種複合免疫療法

まとめ


抗がん剤を用いた治療法では、副作用としてしびれが見られることが多くあります。しびれは日常生活に支障をきたしやすく、患者さんのQOLを下げる原因にもなります。

この記事では、しびれが生じた際の日常生活における工夫についてご紹介しました。また、抗がん剤以外のがん治療についても詳しく解説しました。

その中でも、副作用が軽いとされているのが「免疫療法」です。免疫療法は「第4のがん治療法」として大きな注目を集めており、特に免疫細胞療法は革新的なアプローチとして期待されています。

免疫細胞療法の一つである「6種複合免疫療法」は、この新しい治療法の一つです。この治療法は、患者さん自身の免疫力を高め、がん細胞に対抗するために設計されています。

福岡同仁クリニックは、がん免疫療法専門の再生医療クリニックとして、6種複合免疫療法を提供しています。これまで多くの患者さんのがん治療を行い、患者さん一人ひとりに合わせた治療法をご提案しています。

6種複合免疫療法についてさらに詳しく知りたい方はこちらよりご確認ください。

監修:福岡同仁クリニック院長 麻生俊英

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