がん免疫療法コラム
小児がんにおける抗がん剤治療とは? 主な抗がん剤の種類や副作用などについても解説
この記事では、小児がんにおける抗がん剤治療について詳しく解説しています。主な抗がん剤の種類や治療効果、副作用に関する情報や、治療過程や副作用への対処法、そして家族のサポートについても触れています。
小児がん治療、特に抗がん剤治療に対して疑問をお持ちの方はぜひ一読ください。
INDEX
小児がんにおける抗がん剤治療
小児がんの治療において、主に採用されるのが抗がん剤治療です。この治療法は、細胞障害性抗がん薬(抗がん剤)を使用し、がん細胞の増殖メカニズムの一部を阻害して攻撃します。特に、小児がんの中でも血液がん、例えば白血病やリンパ腫では、抗がん剤治療が中心的なアプローチとなります。
治療の効果に応じて、内服と注射が使い分けられます。小児がんの場合、一般的には大人のがんに比べて抗がん剤治療の効果が高いとされています。これは、子どもの体重に対して使用する抗がん剤の量が多いからです。
抗がん剤治療は副作用を伴いますが、大人と比較すると子どもは再生能力が高いため、大量の抗がん剤にも耐えられる傾向にあるのです。
さらに、複数の抗がん剤を組み合わせた「多剤併用化学療法」が行われることがあります。これにより、異なるメカニズムでがん細胞にアプローチし、より効果的な治療を目指します。また、他の治療法と組み合わせて抗がん剤治療を行うケースも存在します。
小児がんの治療に使用される主な抗がん剤の種類
小児がんの治療に使用される抗がん剤にはさまざまな種類があります。以下に主に使用される抗がん剤について紹介します。
アルキル化剤
アルキル化剤は種類が豊富で、多くの小児がんに対して有効です。これには白血病、リンパ腫、脳腫瘍、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などが含まれます。異なるがん種に対する広範な治療効果をもつアルキル化剤は、小児がん治療において重要な役割を果たしています。
代謝拮抗剤
代謝拮抗剤は、白血病やリンパ腫、骨肉腫の治療に使用されます。
抗がん性抗生物質
抗がん性抗生物質は、白血病とさまざまな固形がんに有効とされています。
植物性アルカロイド
植物性アルカロイドは、急性リンパ性白血病、リンパ腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、ウイルムス腫瘍、ユーイング肉腫など、多くの小児がんに有効な薬物です。また、一部の小児がんにも使用され、その幅広い治療効果が注目されています。
分子標的薬剤
分子標的薬剤は、がん細胞にのみ存在する特異な遺伝子があるがんのみに有効です。そのため適用範囲が限られます。
抗がん剤治療の副作用
小児がんの治療において抗がん剤を使用すると、さまざまな症状や重篤な副作用が発生することがあります。多剤併用化学療法では、1~3%の確率で死亡の可能性があるほか、治療後に障がいが残ったり、数年後に影響が出たりすることも考えられます。
小児がんにおける抗がん剤治療の主な副作用は以下の通りです。
- 貧血
- 白血球減少
- 出血傾向
- 嘔吐
- 脱毛
- 臓器障害
副作用の発生は個人差があり、同じ治療を受けても異なる症状が現れることがあります。また、副作用の程度も個人によって異なります。
抗がん剤治療と支持療法の重要性
抗がん剤治療では、先述の通り副作用が発生する可能性があります。そのため、副作用や合併症を軽減し、患者さんの生活の質を向上させるためには、支持療法や緩和ケアが重要です。
支持療法
主な支持療法には、患者さんが治療中により良い状態を維持できるようにさまざまなケアが含まれます。例えば、点滴(輸液)を用いて脱水を防ぎ、十分なカロリーと栄養素、ビタミンを補給することが挙げられます。また、輸血が必要な場合はそれを実施し、感染予防のための適切な措置も行います。
これらの支持療法は、抗がん剤治療によって引き起こされる副作用や体力の低下に対処し、患者さんが治療を受けながら最良の状態でいられるようにサポートします。
緩和ケア
緩和ケアは、がん自体や治療による痛みや苦痛、心の不安をできるだけ和らげるためのアプローチです。小児がんに罹患した子どもだけでなく、家族も緩和ケアの対象となります。がんの終末期に限らず、がんが診断された瞬間から緩和ケアを受けることが可能です。これは、治療の一環として提供され、患者さんと家族が心身ともにサポートされることを目指しています。小児がん患者さんの場合、子ども自体はもちろんのこと、親や兄弟などもがんの影響を受けるため、包括的で個別化された緩和ケアが重要です。
抗がん剤治療以外の小児がんの治療法
小児がんの治療において、抗がん剤治療以外にもさまざまな治療法が活用されています。特に、複数の治療法を組み合わせる「集学的治療」が頻繁に行われます。
集学的治療は、まず患者さんのがんの種類やステージ、年齢などを評価し、最適な治療プランを決定します。治療法は抗がん剤治療、手術、放射線治療、造血幹細胞移植などが考慮され、必要に応じて組み合わせて治療が進められます。
放射線治療
放射線治療は、外科治療の前後に行われ、腫瘍を縮小させたり再発を防いだりする補助的な治療として用いられます。小児がんにおいては、大人のがんに比べて放射線治療の効果が高く、そのためには少ない放射線量でも効果が期待できます。
ただし、放射線治療は臓器の機能低下の可能性があるため、慎重に行う必要があります。治療後も患者さんの経過観察が欠かせず、臓器への悪影響や副作用を早期に検知し、適切な対処がなされるようになります。放射線治療は効果的ながん治療法の一つですが、患者さんの健康を最大限に考慮し、治療計画とその後のフォローアップが大切です。
外科治療(手術)
外科治療(手術)は、小児がんの治療の中で重要なアプローチの一つです。子どもが成長する過程で必要な機能を損なわないように、手術の際には慎重な計画が立てられます。脳腫瘍や神経芽腫、腎芽腫などの小児がんでは、腫瘍の性質や位置により外科治療が選択されることがあります。
がん組織をできるだけ完全に摘出し、同時に患者さんの身体機能を最大限に保つことが非常に重要です。
造血幹細胞移植
造血幹細胞は、骨髄や血液において新しい細胞を生成する特殊な細胞です。これらの細胞は通常、体内での造血機能を維持し、免疫系の健全な機能を支えています。
造血幹細胞移植は、これらの特殊な細胞を供給し、がん治療の一環として行われる治療法の一つです。通常の治療法と比較して、造血幹細胞移植は強い副作用や合併症が生じる可能性があります。この治療法は、がん細胞を攻撃する高用量の抗がん剤や放射線療法によって患者さんの造血機能をほぼ壊滅させ、その後に造血幹細胞を移植することで、新しい造血機能を再建することを目的としています。
しかし、その強い効果と同時に、副作用や合併症が発生する可能性があるため、造血幹細胞移植を行うかどうかは慎重に決定されます。患者さんの全身状態や病態に合わせて最適な治療計画が組まれ、医療チームと患者さんとの密なコミュニケーションが欠かせません。
免疫療法
ここまで紹介した治療法に加え、現在では小児がんの治療法として免疫療法の研究開発が進められています。
免疫療法はがん治療の新たなアプローチであり、患者さんの免疫システムを活性化させ、がん細胞を攻撃することを目的としています。注目されている免疫療法の一つにCAR-T細胞療法があります。これは、患者さんのT細胞を採取し、遺伝子操作を施してがん細胞を標的に攻撃する能力を強化した後、患者さんに戻す治療法です。
さらに、二重特異性T細胞作動性抗体も注目を集めています。これは、特定の抗体を介してT細胞をがん細胞に誘導し、がん細胞を攻撃するメカニズムを利用した治療法です。
免疫療法は小児がん治療において有望な進展を示していますが、その安全性と有効性を確認するため、継続的な研究や臨床試験が進められています。最新の情報を得るために、専門医との相談を行い、適切な治療選択を検討することが重要です。
※2023年9月時点の情報ですが、免疫療法は研究や臨床試験が進められている段階であり、最新の情報は各医療機関で確認するようにしてください。
小児がんは治療後も長期的なフォローアップが必要
小児がんは約70~80%が治癒するとされています。そのため、多くの小児がん経験者が成人し、晩期合併症と呼ばれる問題に直面するケースがあります。晩期合併症は、治療後にがんそのものや治療の影響によって生じる合併症であり、治療から何十年も経って初めて症状が表れることもあります。
晩期合併症の症状や程度はがんの種類や発症の年齢、治療法によって異なります。
例えば、心機能障害や肺線維症などは心臓や呼吸に重大な問題を引き起こし、生命を脅かすリスクがあります。また、稀に発生する二次がんも生命に関わる重大な合併症です。
一方、不妊症や知能障害、てんかんなどは、日常生活におけるQOLに大きな影響を及ぼします。
さらに、輸血後にC型肝炎に感染するリスクも存在し、この感染が進行すると肝硬変や肝がんなどの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
そのため、がん患者さんは治療中だけでなく、治療後も長期的なフォローアップが必要です。治療中は、がんそのものの影響や治療による副作用だけでなく、学業、友人関係、家族関係などについてもフォローが行われます。
治療後は、健康上のリスクを把握し、心身の健康を自己管理することが求められます。晩期合併症が起きた場合には早期発見・早期対応が重要であり、日常生活に影響が及ばないようにすることが大切です。
そして、これらのサポートを行うためには、医師、看護師、薬剤師、院内学級教師や在籍する学校の教師、保育師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、作業療法士、精神科医など、多職種の専門家が協力し、患者さんが継続的かつ総合的なサポートを受けられる体制が必要です。
まとめ
本記事では、小児がんにおける抗がん剤治療について、種類や副作用などを解説しました。
抗がん剤治療は副作用が発生する可能性があるため、支持療法や緩和ケアなどで症状を緩和することが大切です。
そして、小児がんは約70~80%が治癒するとされていますが、治療後に生じる晩期合併症にも悩まされる可能性があります。場合によっては日常生活に支障をきたす症状もあり、早期発見のため治療後も長期的なフォローアップが必要になります。
また、小児がんでは主に抗がん剤治療が採用されますが、他の治療法を適用したり、併用したりする場合もあります。小児がんを治療できる医療機関は限られていますので、お近くのがん相談支援センターにご相談ください。
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