がん免疫療法コラム

がんの進行速度はどのくらい? 進行速度を決める要因やがんの種類、年齢による差について解説

がんの進行速度は一概には決まらないもので、がんの種類や個々の体質、さらには年齢や遺伝的な要素など多種多様な要素が関係します。

ただし、がんの種類によっては進行の速いものと遅いもので分類できる場合があります。さらに、早期がんや末期がんでも進行速度は異なります。

本記事では、がんの進行速度について、進行速度を決める要因やがんの種類、年齢による差について詳しく解説しています。

がん・6種複合免疫療法

がんは進行していく病気


がんは、体内の正常な細胞が遺伝子の損傷などによって異常な細胞へと変化し、その異常な細胞が無秩序に増え続けることで発生します。これは、いわば細胞の生命サイクルが狂った状態と言えます。通常、細胞は一定のルールに従って分裂・増殖し、老化やダメージを受けた細胞は自然に死んでいきます。

しかし、がん細胞はこの自然なサイクルから逸脱し、異常に増え続けるだけでなく、体内の他の場所へ移動し、そこでも増殖を続ける性質を持ちます。これを「転移」と呼びます。これにより、がんは元々発生した部位だけでなく、体内の様々な部位に影響を及ぼす可能性があるのです。

がん細胞とは?

がん細胞は、私たちの体内で生じる正常な細胞が何らかの要因で遺伝子の構造が変化し、異常な状態になった細胞のことです。例えば、遺伝子の変異や損傷が引き金となり、制御が効かないほどに細胞が無秩序に分裂・増殖を続けると、これががんの始まりとなります。

実は、健康な人の体内でも毎日、こうしたがん細胞は生まれています。しかし、通常は体の免疫機能がこれを察知し、免疫細胞がすぐにがん細胞を見つけ出して排除します。これにより、がん細胞は我々が気付くことなく、無害な存在として体内から消されていきます。

しかし、何らかの理由で免疫機能がうまく働かなかったり、がん細胞が高速で増殖した場合は、がん細胞は体内に残り続け、最終的には病気として現れることになります。このように、免疫機能はがんの発生を抑制する重要な役割を果たしています。

がんが大きくなるメカニズム

がんが成長していくメカニズムは、がん細胞と免疫細胞の間のパワーバランスが崩れることから始まります。健康な状態では、免疫細胞ががん細胞を見つけ出し、排除することで、体の健康を守っています。しかし、何らかの理由でこのバランスが崩れ、がん細胞が免疫細胞よりも優位になると、がん細胞は制御なく増殖を続け、がんとして形成されるのです。

がん細胞が一つの細胞から始まり、分裂を繰り返すことで塊となります。細胞分裂が約30回繰り返されると、その塊は数mm程度の大きさにまで成長します。この時点で初めて、画像検査などの診断方法で認識できるようになり、がんと診断することが可能となります。

また、体のどの部位でも発生するのががんの特徴です。初めてがん細胞が発生した部位を「原発巣」と呼びます。さらに、がん細胞は全身に広がっていく特性を持っています。がん細胞は、血液やリンパ液の流れに乗って体の他の部位に移動し、そこでも増殖を始めます。これを「転移」と呼び、一度転移が始まると、がんの治療はより複雑で困難なものとなります。

がんの進行度を示す「ステージ」

がんの進行度は「ステージ」によって評価されます。がんの大きさや、他の臓器への広がり方をもとに、がんを分類し、進行の程度を判定するための基準です。これは「病期」あるいは「病気分類」とも呼ばれ、適切な治療法を選択したり、生存率を算出するための区分として利用されます。日本では、主にUICCのTNM分類やがん取扱い規約が採用されています。

特に国際的に広く用いられているのがUICC(国際対がん連合)のTNM分類です。これは原発がんの大きさ、広がり、深さをT(Tumor)で、リンパ節への転移状況をN(Node)で、遠隔転移状況をM(Metastasis)で評価し、それぞれに数字や記号を付けて評価します。これらの評価をもとに、病期(ステージ)が判定されます。

病期は、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分類され、数字が大きいほど進行したがんを表します。0期は初期のがんで、Ⅰ期からⅢ期は進行がん、Ⅳ期は全身に広がった状態のがんです。これらのステージは、治療計画の立案や予後の見通しに非常に重要な指標となります。

がんの進行度と進行速度


がんのステージごとの症状や特性は、がんの種類によって大きく異なります。そのため、具体的な症状や進行速度については専門医の診断を受けることが重要です。

一般的には、ステージ0〜1は「早期」と呼ばれます。この段階では、がんはまだ小さく、局所に限定されていることが多いため、手術による切除や放射線治療などでの治療が可能な場合が多いです。ステージ2〜3は「進行期」と称され、がんは周囲の組織やリンパ節へ広がりを見せることがあります。これに対し、ステージ4の段階のがんは「末期がん」と呼ばれ、他の臓器への広範な転移を伴うことが多いです。そのため、治療法も全身に対する化学療法や免疫療法などが選ばれることが多いです。

なお、それぞれのステージごとに、がんの進行速度も異なります。早期のがんはゆっくりと進行することが多い一方、進行期や末期のがんは急速に進行することがあります。

早期がんの進行速度

早期のがんは、一般的に年単位で進行すると言われています。その理由は、がん細胞が生成されてから実際にがんと診断されるまでの時間が長いからです。事実、がん細胞が初めて発生してから、それが診断可能な大きさ、つまり約1㎝のがんになるまでには、約10年以上かかると言われています。

例えば、乳がんの場合、1つの細胞が1㎝の大きさに成長するまでには細胞分裂が約30回必要とされ、これにはおおよそ15年かかるとされています。つまり、がん細胞の生成からがんの発見までには長い時間が経過するため、早期のがんは一見するとゆっくりと進行しているように見えます。

これは早期発見の重要性を示しています。健康診断や定期的な検診を受けることで、がんがまだ小さい段階、つまり早期で発見できる可能性が高まります。その結果、治療の選択肢が広がり、予後が良好になる可能性が高まるのです。

進行がんの進行速度

進行がんは、一般的に半年単位で進行するとされています。進行がんとは、がんの大きさが2cm以上に成長した状態を指すことが多く、細胞分裂が3回行われると、1cmのがんが2cmになります。これには、おおよそ1年半が必要とされています。この段階では、多くの場合、すでにがんの症状が現れていることが多いです。

しかし、ここで大切なことは、進行がんと診断されたからといって、必ずしも治療が不可能になるわけではないということです。進行がんであっても、適切な治療を行えば十分に病状をコントロールし、生活の質を維持することが可能です。また、治療が遅れたとしても、大きな影響が出ないこともあります。そのため、進行がんと診断されたからといって、過度に焦る必要はありません。

末期がんの進行速度

末期がんは、がん細胞の進行が著しく速まり、そのペースは1か月単位で進行していくとされています。これは早期がんの進行速度のおよそ12倍となり、病状の変化が一気に早まることを意味します。

この段階では、治療はもちろん、痛みのコントロールや必要な介護の準備など、患者さんのQOL(生活の質)を維持するための対策を早めに進めることが求められます。具体的には、痛み止めや緩和ケア、患者さんや家族の心のケア、そして必要な介護環境の整備などを考えていくことが重要です。

がん・6種複合免疫療法

がんの種類によっても進行速度は違う


がんの進行速度は、その種類によって大きく変わることを理解しておくことが大切です。例えば、肺がんや肝がんのように急速に進行するがんと、前立腺がんや乳がんのように比較的ゆっくりと進行するがんがあります。

これはがん細胞がどれだけ早く分裂・増殖するかによるもので、そのスピードはがんの種類により異なるためです。

初期の進行が速いタイプのがん

速度が速いがんの一つに白血病があります。白血病は急性と慢性に分かれ、特に急性のものは非常に早い速度、場合によっては1日単位で進行することもあります。このようながんは一刻も早い治療開始が重要となります。

また、リンパ腫も進行が早いがんの一つで、リンパ系を侵す特性から全身へと急速に広がることがあります。

しかし、これらのがんは進行が速い一方で、抗がん剤治療によって「治癒」が期待できる場合があるのも特徴です。それぞれのがんは治療方針が異なり、病状に応じた迅速な対応が求められます。

初期の進行が遅いタイプのがん

進行が比較的遅いとされるがんには、胃がん、大腸がん、乳がんがあります。これらのがんは、数年単位で進行するケースが多く見られます。

胃がんや大腸がんは、胃カメラや大腸内視鏡といった検査により、早期段階での発見が可能です。そして、乳がんもマンモグラフィなどの画像診断で、初期段階での発見が可能となっています。

これらのがんは早期発見が比較的容易であり、早期治療によって治癒の可能性も高まります。しかし、末期になればがんの進行速度も速くなるという点を忘れてはなりません。

年齢による進行速度の差は原則ない


がんの進行速度は原則として年齢による差はありませんが、結果として若い人の方が進行スピードが速いケースが見受けられます。

考えられる3つの理由を以下に紹介します。

若年層にできやすいがんの方が悪性度が高い傾向にある

がんの種類や悪性度は年齢によっても変わります。若年者には進行が速く、転移しやすい悪性度の高いがんが発生しやすい傾向にあります。例えば、胃がんの中でも「低分化腺がん」という種類は、その特性から若い世代、特に30代などの若者にできやすいとされています。

一方、70代以上の高齢者は、「高分化腺がん」と呼ばれる比較的進行が遅いがんが発生しやすい傾向にあります。

若年層の方が検診頻度が低く早期発見しづらい

がんの発症は年齢と密接に関係しており、高齢になるほどがんになる確率は高まります。そのため、日本では40歳以上の人々を対象に、特にがんのスクリーニングを重点的に行っています。

上記の施策は、30代以下の人々が医療的なチェックを受ける機会が少なくなるという問題を生む可能性があります。若年者は自覚症状が少ないため、自身で定期的に病院に行く頻度が低くなりがちであり、これにより医師の診察を受ける機会が減少します。

この結果、早期のがんであっても症状が出ていないために発見が遅れ、進行がんになってからの治療開始となるケースが見られます。

年齢による免疫力の差で高齢者の方が進行が速い場合もある

年齢を重ねると共に、身体の機能は徐々に衰え、特に免疫力の低下が顕著になります。この免疫力の低下により、感染症にかかりやすくなるだけでなく、がん細胞を排除する能力も落ちるため、がんが進行しやすくなる傾向があります。

例えば、肺炎などの感染症は高齢者にとって重大なリスクをもたらす病気ですが、それと同様に、免疫力の低下によりがん細胞が体内で増え、広がりやすくなるのです。これが、高齢者のがんが進行しやすい一因と考えられます。

このように、若年者のほうががんの進行スピードが速いとは一概には言えないのです。

がんの進行を止める4大治療


がんの治療の成功は、大きくその病期に左右されます。早期がんや進行がんの場合、治療を通じてがんの進行を停止させ、寛解(がん細胞が一時的に消える状態)を目指すことが可能です。特に早期がんに対しては、手術や放射線療法、薬物療法など、さまざまな治療手段が選択できます。進行がんの場合でも、適切な治療を受けることで、がんの進行を遅らせることが期待できます。

一方、末期がんや治療が困難な種類のがんの場合でも、治療の目的は変わりますが、それは病状の進行を遅らせ、生活の質(QOL)を保つことに焦点を当てた対症療法となります。例えば、痛みを緩和したり、食欲不振を改善したりするなど、患者さんが快適に過ごせるような支援が重要となります。

手術療法

手術療法はがん治療の主要な方法の一つで、外科手術によりがんを直接切除する治療法です。手術はがんが限られた部位に存在し、体の他の部位に広がっていない場合に特に有効です。また、がんが周囲の組織やリンパ節に転移している場合でも、それらを同時に切除することでがんの拡大を防ぐことが可能です。

がん細胞を全て切除できれば、理論的にはがんは完治します。しかし、注意すべきは、手術で切除した部位以外にもがん細胞が存在している場合、それが見逃されたり、術後に再発する可能性があるという点です。このため、手術後には定期的な検診が重要となります。

この手術療法は「局所療法」とも呼ばれます。つまり、特定の場所に対して直接的に影響を与える治療方法であるという意味です。一方、全身に影響を及ぼす治療法を「全身療法」と呼びます。

放射線療法

放射線療法は、がん細胞のDNAに直接ダメージを与えて破壊する局所療法の一つです。がん細胞だけでなく、その周辺の細胞に対しても効果を発揮します。治療は、特定のがん細胞に放射線を照射することにより行われます。

放射線は細胞分裂が活発な細胞に特に効果があるため、通常の健康な細胞に対する悪影響は比較的少ないとされています。これは、がん細胞が正常細胞よりも細胞分裂が活発であるため、特に放射線に対して敏感であるからです。

放射線療法には、主に二つの目的があります。一つはがんの根治を目指す治療であり、がん細胞を全て破壊してしまうことを目指します。もう一つは、がんの症状を緩和するための緩和療法で、痛みを和らげたり、腫瘍による圧迫感を減らしたりします。

薬物療法

薬物療法は、全身に作用する治療法であり、飲み薬や注射薬、点滴などを用いてがん細胞を攻撃したり、その増殖を抑制したりします。薬物療法の主な目的は、体内のどこにでも広がり得るがん細胞に対抗することです。

薬物療法にはさまざまな種類があります。一つは化学療法(抗がん剤療法)です。これは特定の薬剤を使用してがん細胞の細胞分裂を阻害し、細胞の成長を抑制することを目指します。また、正常な細胞にも影響を与えることがありますが、正常細胞は回復能力があるため、副作用は一時的なものとなることが多いです。

もう一つは内分泌療法(ホルモン療法)と呼ばれるもので、一部の乳がんや前立腺がんなど、ホルモンに依存して成長するがんに対して効果的です。ホルモンの生成や作用を阻害することで、がん細胞の成長を抑制します。

免疫療法

免疫療法は、体内の免疫システムを強化し、それを利用してがん細胞を排除する治療法です。体の自然な防御機能を活用して、がん細胞を攻撃します。免疫療法は化学療法と同様に全身療法の一つで、全身のどこにでも広がる可能性のあるがん細胞に対抗します。

免疫療法は、近年研究開発が進んでいる治療法です。効果や安全性が科学的に証明された免疫療法は、健康保険の対象となりますが、科学的な根拠が不十分なものは自由診療として提供されることが多いです。一般的に、免疫療法は保険適用外であるため、高額な費用が発生することがあります。

まとめ


本記事では、がんの進行速度や、影響を受ける要素、さらにそれを抑えるための様々な治療法について詳しく解説してきました。がんの種類や患者さんの状況により、進行速度や治療法は異なります。しかし、早期発見と適切な治療により、がんは寛解を目指すことが可能です。

記事内では、近年研究開発が進み、第4の治療法とも呼ばれている「免疫療法」について紹介しました。免疫療法は、体自身の免疫システムを利用してがん細胞を攻撃し、排除する方法で、副作用や身体の負担が少ない新たながん治療の一つとして期待されています。

福岡同仁クリニックでは、免疫療法の一つである「6種複合免疫療法」を提供しています。6種複合免疫療法は、役割の異なる免疫細胞を増殖・活性化させ、がんへの攻撃力を高めます。自分の免疫細胞を利用するため、副作用が少なく、生活に大きな支障をきたすことがありません。そのため、入院が不要で、通院での治療が可能です。

6種複合免疫療法についてさらに詳しく知りたい方はこちらよりご確認ください。

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