がん免疫療法コラム

癌による筋力低下を防ぐために!体重・筋肉量の減少を防止するには

癌と闘うことは、体力的にも精神的にも非常に過酷な試練です。しかし、癌治療においてもう一つの敵は「筋力低下」と「体重・筋肉量の減少」です。これらの健康問題は、治療の過程でしばしば見られ、患者さんの生活の質や回復力に大きな影響を及ぼすことがあります。

この記事では、癌による筋力低下に関係する因子にくわえ、癌のさまざまな症状を引き起こす「悪液質」の解説、悪液質の治療について解説します。

癌による筋力低下に関係する因子

がん患者さんが直面する筋力低下は、症状や治療の副作用と密接に関連しています。がんが進行すると、腫瘍による圧迫や通過障害、手術での組織切除、嚥下障害(飲み込みづらさ)など多岐にわたる症状が現れます。

これに加えて、治療を受ける過程で悪心、嘔吐、下痢、便秘、口内炎、味覚の変化といった副作用が生じやすくなります。これらの症状や副作用は、食事摂取量の低下を招きます。結果として、体が必要とする栄養素が不足し、筋力低下や体重減少が進行するのです。

このような筋力低下や栄養状態の悪化は、治療の効果を低下させるだけでなく、副作用が出やすくなります。さらに、がんの増悪や生存率の低下をもたらす可能性があり、最悪の場合、治療を中断しなければならないこともあります。

機能障害や代謝障害を引き起こす悪液質について

がんの進行に伴い、体内の代謝や機能が変わり、脂肪や筋肉の分解が活発になる場合があります。これは炎症性サイトカインやレプチンなどの物質が、脳の食欲中枢に影響を与え、食欲を抑えるためです。このような栄養不良により衰弱した状態を「悪液質」と呼びます。

悪液質は、ただ食べられないから痩せるわけではなく、筋肉や脂肪が分解されることで、食事をとっても体重が落ちることが特徴です。

具体的な診断基準としては以下の通りです。

  • 過去6か月間の体重減少が5%を超える
  • BMIが20以下で体重減少が2%を超える
  • サルコペニアで体重減少が2%を超える

BMIは肥満度を表す指数であり、「体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))」で算出できます。

サルコペニアは、加齢や病気、特にがんの進行によって筋肉量と筋力が低下する状態を指します。筋肉量の減少は、身体の機能や日常生活の質に大きな影響を及ぼすため、早期の対処が重要です。

指輪っかテストは、サルコペニアの確認方法の一つです。利き足ではないふくらはぎを指で囲むことで、サルコペニアの可能性を判断します。囲めない場合は低リスク、すき間ができる場合は高リスクと判断されます。

悪液質の治療

悪液質の治療は主に「薬物療法」「栄養療法」「運動療法」が挙げられます。治療法は個々の状態や原因に合わせて選択されます。

1・薬物療法

2021年、日本ではがん悪液質の治療薬として世界初の薬が承認されました。この薬は、食欲ホルモンであるグレリンの働きを持ち、非小細胞肺がんや胃がんなど特定のがんに関連する悪液質の治療に使用されます。

現在、筋肉量低下を改善する新たな薬剤の研究も進められています。さらに、炎症を抑えるためのNSAIDsやコルチコステロイド、EPA、サイトカイン阻害薬なども、がん悪液質の治療に用いられることがありますが、これらは日本でがん悪液質の治療として公式に承認されていない上、副作用や効果に疑問が持たれています。

2・栄養療法

悪液質が進行し、不応性悪液質となると、どんなに栄養を摂取しても効果を示さなくなるため、治療が困難になります。このため、悪液質の初期段階で栄養療法を積極的に進め、進行を遅らせることが重要です。

具体的な対策としては、栄養の指導や教育、経口補助食品の利用、経管栄養の導入が挙げられます。経口・経管栄養が困難な場合、経静脈栄養の実施も検討しますが、かえって患者さんの負担になる可能性もあるので、慎重な投与が必要です。

3・運動療法

悪液質は筋肉量の低下が主な特徴で、そのため筋肉を刺激する運動が効果的とされています。具体的には、筋力アップを目指すレジスタンストレーニングと持久力を養うウォーキングなどの持久力トレーニングを組み合わせるのが望ましいと言われています。

6種複合免疫療法

まとめ

悪液質は、がんの症状や治療により筋力低下が起こり、全身が衰弱する状態のことを指します。重度になるとどんなに栄養摂取しても効果がなくなるため、早めの対処が非常に重要です。具体的な治療法としては、薬物療法や栄養療法、運動療法などがあることを解説しました。

がん治療はさまざまなリスクがあり、食欲低下や体重減少も代表的な副作用として知られています。しかし、近年の研究により、より副作用の少ない治療法が開発されました。

それが、「免疫療法」です。免疫療法は自身の免疫細胞を使用するため、副作用が起こりにくいとされているのです。

中でも、「6種複合免疫療法」は最新の研究成果を元に開発された先進的な治療法として知られています。この治療は、役割の異なる6種類の免疫細胞を増殖・活性化させ、がん細胞を効果的に攻撃・排除します。

6種複合免疫療法についてさらに詳しく知りたい方はこちらよりご確認ください。

【参考・引用文献】

https://www.cancernet.jp/wp-content/uploads/2021/05/w_akuekishitsu210511.pdf

mini_202103_02.pdf (juntendo.ac.jp)

cachexia_handbook-4.pdf (jascc.jp)

ja (jst.go.jp)

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