がん免疫療法コラム

膵臓がんのステージ4の症状・余命は?抗がん剤や免疫療法などの効果的な治療方法まで解説

膵臓がんは、がんの中でも特に治療が困難とされており、発見時にはすでに進行している場合が多い病気です。特にステージ4では、がんが他の臓器に転移しているため、患者さまやご家族にとって多くの不安や疑問が生じることでしょう。

本記事では、膵臓がんステージ4の症状や余命、最新の治療方法について、医学的エビデンスに基づいて詳しく解説いたします。標準的な抗がん剤治療から、近年注目されている免疫療法まで、幅広い治療選択肢をご紹介し、患者さまとご家族が適切な治療法を選択するための情報を提供いたします。

膵臓がんとは

膵臓の役割と膵臓がんの特徴

膵臓は、胃の後ろ側に位置する長さ約15cmの細長い臓器です。膵臓には主に2つの重要な機能があります。1つ目は「外分泌機能」で、食べ物の消化に必要な消化酵素を含む膵液を作り出し、十二指腸に分泌します。2つ目は「内分泌機能」で、血糖値を調整するインスリンやグルカゴンなどのホルモンを血液中に分泌します。

膵臓がんとは、この膵臓に発生する悪性腫瘍の総称です。膵臓がんの約90%は、膵液が流れる管である膵管から発生する「膵管がん」です。膵臓がんは「がんの王様」と呼ばれることもあるほど治療が困難で、その理由は以下の特徴にあります。

  • 初期症状がほとんど現れない
  • 膵臓が体の奥深くにあるため検査が困難
  • 進行が非常に速い
  • 周囲の血管や神経に浸潤しやすい
  • 早期に他の臓器に転移する

これらの特徴により、膵臓がんは発見時にはすでに進行した状態であることが多く、根治的な治療が困難なケースが少なくありません。

膵臓がんの原因とリスク要因

膵臓がんの明確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかのリスク要因が明らかになっています。科学的根拠に基づいた主なリスク要因を以下に示します。

喫煙は最も重要なリスク要因の一つです。日本膵臓学会の診療ガイドラインによると、喫煙者は非喫煙者と比較して膵臓がんの発症リスクが約2倍高くなることが報告されています。

参照元:https://www.suizou.org/PCMG2009/cq1/cq1-1.html

肥満も重要なリスク要因です。国立がん研究センターの研究によると、肥満の人は膵臓がんのリスクが1.5倍に増加することが示されています。内臓脂肪が多いと、膵臓に慢性的な炎症が起こりやすくなることが原因と考えられています。

参照元:https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/8076.html

その他の主要なリスク要因には以下があります。

膵臓がんのステージ分類と進行度

膵臓がんステージ0〜3の特徴

膵臓がんのステージ分類は、がんの大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によって決定されます。各ステージの特徴を以下に説明します。

膵臓がんステージ4(Ⅳ期)とは

ステージ4は膵臓がんの最も進行した段階で、がんが膵臓から離れた臓器やリンパ節に転移している状態を指します。この段階では、がんが血液やリンパの流れに乗って体の他の部分に広がっています。

ステージ4の膵臓がんの特徴は以下の通りです。

  • 肝臓、肺、骨、腹膜などへの遠隔転移がある。
  • 複数の臓器に同時に転移していることが多い。
  • 手術による根治的治療は原則として困難。
  • 治療の目的は延命と症状緩和が中心となる。
  • 全身の症状が現れやすくなる。

ステージ4の診断は、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像診断によって行われます。これらの検査により、原発巣の状態だけでなく、転移の範囲や程度を詳しく調べられます。

膵臓がんステージ4の症状

代表的な症状

膵臓がんステージ4では、原発巣での症状に加えて、転移による症状や全身症状が複合的に現れます。主な症状を以下に詳しく説明します。

腹痛・背中の痛みは最も特徴的な症状の一つです。がんが神経や周囲の組織に浸潤することで、持続的で激しい痛みが生じます。特に背中の左側から腰にかけての痛みが特徴的で、体を前かがみにすると痛みが和らぐことがあります。

黄疸は、がんが胆管を圧迫することで起こる症状です。皮膚や眼球の白い部分が黄色くなり、尿の色が濃くなり、便の色が白っぽくなります。また、全身のかゆみを伴うことが多くあります。

体重減少は膵臓がんの重要な症状です。膵液の分泌が低下することで消化吸収が悪くなり、食欲不振とともに急激な体重減少が起こります。数ヶ月で10kg以上減少することも珍しくありません。

消化器症状としては、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などが現れます。膵液の分泌低下により、特に脂肪の消化が困難になり、脂っこい便が出ることがあります。

全身症状としては、強い倦怠感、疲労感、発熱などが現れます。がんの進行に伴い、全身の状態が徐々に悪化していきます。

見逃してはいけない危険なサイン

膵臓がんステージ4では、以下のような危険なサインが現れることがあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

これらの症状は、がんの進行や合併症の発生を示している可能性があり、緊急の対応が必要な場合があります。

膵臓がんステージ4の余命と生存率

ステージ別5年生存率

膵臓がん国がん登録のデータに基づく膵臓がんのステージ別5年生存率は以下の通りです。5年生存率とは、診断から5年後に生存している患者さまの割合を示します。

参照元:https://ganjoho.jp/

この数字からも分かるように、膵臓がんは早期発見が極めて重要ですが、ステージ4であっても適切な治療により生活の質を維持し、延命効果を得ることは可能です。

ステージ4の平均余命

膵臓がんステージ4の平均余命については、治療法や患者さまの全身状態によって大きく異なります。一般的な統計データでは以下のような報告があります。

ただし、これらの数字はあくまで統計的な平均値であり、個々の患者さまの状況によって大きく異なることを理解しておくことが重要です。治療への反応が良い場合や、全身状態が良好な場合には、平均値を大きく上回る生存期間を得られる可能性もあります。

膵臓がんの転移について

転移しやすい臓器

膵臓がんは血液やリンパの流れに乗って、特定の臓器に転移しやすいという特徴があります。主な転移先とその頻度について説明します。

肝臓は最も転移しやすい臓器です。膵臓と肝臓は門脈という血管でつながっているため、がん細胞が血流に乗って肝臓に到達しやすくなっています。肝転移は膵臓がん患者の約60〜70%に見られます。

腹膜への転移も非常に多く見られます。がん細胞が腹腔内に散らばることで腹膜播種と呼ばれる状態になり、腹水の原因となります。

肺への転移は血液を通じて起こり、呼吸器症状を引き起こします。肺転移は比較的早期から見られることがあります。

骨への転移は主に脊椎、肋骨、骨盤などに起こり、強い痛みや病的骨折の原因となります。

その他、リンパ節、副腎、脳などへの転移も報告されていますが、頻度は比較的低くなっています。

転移による症状

転移先の臓器によって、それぞれ特徴的な症状が現れます。

肝転移による症状

  • 黄疸の進行
  • 右上腹部の痛みや重苦しさ
  • 腹水による腹部膨満
  • 肝機能低下による全身倦怠感

腹膜転移による症状

  • 腹水による腹部の膨らみ
  • 腹部の圧迫感や痛み
  • 食欲不振
  • 呼吸困難(横隔膜の圧迫による)

肺転移による症状

  • 息切れや呼吸困難
  • 持続する咳
  • 胸痛
  • 血痰(まれ)

骨転移による症状

  • 転移部位の激しい痛み
  • 病的骨折のリスク
  • 脊髄圧迫による神経症状
  • カルシウム値の異常

膵臓がんステージ4の標準治療

化学療法(抗がん剤治療)

ステージ4の膵臓がんでは、手術による根治的治療が困難であるため、化学療法が治療の中心となります。現在、最も効果が高いとされる化学療法について詳しく説明します。

FOLFIRINOX療法は、現在最も効果が高い化学療法の一つです。4種類の薬剤(フルオロウラシル、レボホリナート、イリノテカン、オキサリプラチン)を組み合わせた治療法で、従来の標準治療と比較して生存期間を約11ヶ月まで延長することが示されています。

参照元:https://www.jfcr.or.jp/

ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法も同様に効果の高い治療法です。FOLFIRINOX療法と並んで第一選択の治療として推奨されており、副作用の面でFOLFIRINOXより軽いことが特徴です。

これらの化学療法の選択は、患者さまの年齢、全身状態、臓器機能などを総合的に判断して決定されます。治療効果が認められる場合は継続し、効果が不十分な場合や副作用が強い場合には、他の薬剤への変更が検討されます。

化学療法の主な副作用には以下があります。

  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢
  • 疲労感・倦怠感
  • 手足のしびれ(末梢神経障害)
  • 白血球減少
  • 脱毛

放射線療法

放射線療法は、膵臓がんステージ4において症状緩和や局所制御を目的として行われます。根治を目指すものではありませんが、以下のような効果が期待できます。

症状緩和効果:がんによる痛み、特に神経に浸潤することで起こる激しい腹痛や背部痛の緩和に効果があります。また、胆管の圧迫による黄疸の改善にも用いられることがあります。

局所制御効果:原発巣の増大を抑制し、周囲臓器への浸潤を遅らせる効果が期待できます。

放射線療法は化学療法と併用されることが多く、「化学放射線療法」として実施されます。この併用により、それぞれ単独で行うよりも高い効果が期待できることが知られています。

放射線療法の副作用には以下があります。

  • 照射部位の皮膚炎
  • 消化器症状(吐き気、下痢)
  • 疲労感
  • 食欲不振

緩和手術

ステージ4の膵臓がんでは根治手術は困難ですが、症状を和らげるための「緩和手術」が検討される場合があります。

胆道バイパス術は、がんによる胆管閉塞で黄疸が生じている場合に行われます。胆汁の流れを改善することで、黄疸や胆管炎の予防・改善を図ります。

消化管バイパス術は、がんが十二指腸を圧迫して食事の通過障害が起こっている場合に実施されます。胃と小腸を直接つなぐことで、食事摂取を可能にします。

神経ブロックは、激しい痛みに対して行われる処置です。痛みを伝える神経を薬剤でブロックすることで、長期間の疼痛緩和効果が得られます。

これらの緩和手術の目的は根治ではなく、患者さまの生活の質(QOL)の改善にあります。手術のリスクと効果を慎重に検討して適応が決定されます。

膵臓がんステージ4における免疫療法の可能性

免疫療法とは

免疫療法は、患者さま自身の免疫システムの力を活用してがんと闘う治療法です。従来の化学療法や放射線療法とは異なる作用機序を持つため、新たな治療選択肢として大きな注目を集めています。

人間の体には、がん細胞を見つけて攻撃する免疫細胞が存在しています。しかし、がんが進行すると、がん細胞が免疫システムから逃れる仕組みを獲得したり、免疫機能自体が低下したりして、十分な抗腫瘍効果が発揮されなくなります。免疫療法は、この低下した免疫機能を回復・強化することで、がん細胞への攻撃力を高める治療法です。

膵臓がんに対する免疫療法の研究も進んでおり、九州大学では個別化ネオアンチゲンワクチン療法の臨床研究で、16名の膵臓がん患者に対して治療効果が検証されています。また、切除不能進行膵癌に対するWT1標的免疫化学療法では、奏効率70.0%、病勢制御率100%という良好な結果も報告されています。

免疫療法の主な利点は以下の通りです。

  • 患者さま自身の免疫細胞を使用するため、重篤な副作用が少ない
  • 化学療法や放射線療法との併用が可能
  • 免疫記憶により長期的な効果が期待できる
  • 生活の質(QOL)を維持しやすい

6種複合免疫療法の特徴と効果

膵臓がんステージ4に対する新しい治療選択肢として、「6種複合免疫療法」が注目されています。

6種複合免疫療法の最大の特徴は、6種類の異なる免疫細胞を同時に活性化・増殖させることです。具体的には、キラーT細胞、NK細胞、NKT細胞、γδT細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞という、それぞれ異なる役割を持つ免疫細胞を一度に強化します。

治療の流れは非常にシンプルです。まず、患者さまから30ccという少量の血液を採血します。採取した血液から免疫細胞を取り出し、約3週間かけて培養します。この培養過程で、1,000〜2,000万個だった細胞が20〜50億個まで増殖し、同時に活性化されます。培養が完了した免疫細胞は、点滴によって患者さまの体内に戻されます。

6種複合免疫療法の優れた特徴

  1. 副作用が極めて少ない

患者さま自身の免疫細胞を使用するため、拒絶反応や重篤な副作用のリスクが非常に低く抑えられています。一部の患者さまで軽度の発熱が見られることがありますが、通常2〜3日で改善します。

  1. 他の治療との併用が可能

化学療法、放射線療法、手術などの標準治療との併用が可能で、相乗効果が期待できます。抗がん剤の効果を高めたり、副作用を軽減したりする作用も報告されています。

  1. 入院が不要

採血と点滴のみで治療が完結するため、入院の必要がありません。患者さまの日常生活のリズムを大きく変えることなく治療を継続できます。

6種複合免疫療法の効果

6種複合免疫療法・判定基準
治療効果について、6種複合免疫療法では初回の1クール(6回)治療を終了した380名の患者さまを対象とした調査(2020年6月〜2024年7月)で、約79%の方において腫瘍の進行が抑制されたという結果が報告されています(A〜C判定)。さらに、約26%の方では腫瘍の減少が認められました(A〜B判定)。

この治療法は、厚生労働省の許可を受けた細胞加工施設(CPC:Cell Processing Center)で培養が行われています。

膵臓がんステージ4の患者さまにとって、6種複合免疫療法は標準治療に加えて検討できる有望な選択肢の一つといえるでしょう。

 

がん・6種複合免疫療法

よくある質問

ステージ4の膵臓がんでも助かる可能性はありますか?+

ステージ4の膵臓がんは非常に厳しい状況ですが、治療により生存期間を延長し、症状を改善することは可能です。5年生存率は3〜5%と言われていますが、個別化医療により、遺伝子変異に応じた治療選択や免疫療法の併用など、新たな治療選択肢も増えています。早期から緩和ケアを併用することで、QOLを保ちながら治療を継続することが重要です。
特に、6種複合免疫療法は、78%の治療有効率(380名の調査で、がんの進行が抑制されたと評価された割合)という良好な結果が報告されており、副作用が少なく標準治療との併用も可能な点が評価されています。3大治療法では改善が見込めないような症例でも希望があります。

がん・6種複合免疫療法

膵臓がんの早期発見のためにできることは?+

膵臓がんの早期発見のためには、リスク因子を理解し、定期的な検査を受けることが重要です。特に、慢性膵炎、糖尿病(新規発症や急激な悪化)、家族歴、喫煙歴、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)がある方は要注意です。腹部超音波検査、CT、MRI、EUS(超音波内視鏡)などの画像検査により、小さな病変も発見できるようになっています。症状としては、腹痛、背部痛、体重減少、黄疸、糖尿病の悪化などがありますが、早期には症状がないことも多いため、定期検査が重要です。

手術ができない場合の治療法は?+

手術ができない膵臓がんでも、様々な治療選択肢があります。化学療法では、FOLFIRINOX療法やゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法が標準治療となっています。放射線治療は疼痛緩和や局所制御に効果的です。また、胆管や十二指腸の閉塞に対してはステント留置術により、QOLの改善が可能です。免疫療法も選択肢の一つとして検討されており、特に6種複合免疫療法は、副作用が少なく、入院も不要なため、QOLの改善に非常に期待が持てます。

 

がん・6種複合免疫療法

まとめ

膵臓がんステージ4は確かに深刻な状態ですが、現在の医療技術により、症状の緩和と生活の質の向上、そして延命効果を期待することは十分可能です。

本記事では、膵臓がんステージ4について包括的に解説しました。重要なポイントを以下にまとめます。

特に注目すべきは、6種複合免疫療法のような新しい治療選択肢です。この治療法は、患者さま自身の免疫システムを強化することで、従来の治療では得られなかった効果を期待することができます。副作用が少なく、他の治療との併用が可能で、入院が不要という特徴により、患者さまの負担を最小限に抑えながら治療効果を追求することが可能です。

膵臓がんステージ4の診断を受けられた患者さまとご家族にとって、適切な情報に基づいた治療選択を行うことが何より重要です。標準治療だけでなく、免疫療法などの新しい選択肢についても、専門医と十分に相談されることをお勧めいたします。

一人ひとりの状況は異なりますが、希望を失うことなく、その時点で最適と考えられる治療法を選択し、医療チームと連携しながら治療に取り組むことで、より良い結果を得られる可能性があります。

がん治療は、患者さま一人ひとりの状態やがんの種類によって最適な方法が異なります。6種複合免疫療法に興味をお持ちの方は、まずは下記よりお気軽にご相談ください。

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