がん免疫療法コラム
抗がん剤による血管痛の原因は? 症状が現れる時期や予防法・対処法について解説
抗がん剤治療には、さまざまな副作用があります。副作用の一つに、抗がん剤による血管痛があります。
今回は血管痛が現れる時期や予防法・対処法について解説します。抗がん剤治療中のがん患者さん、がん患者さんの親族の方には、ぜひ参考にご覧ください。
INDEX
抗がん剤治療による血管痛
抗がん剤治療を受ける際、内服するケースや点滴で抗がん剤を投与するケース、皮膚や筋肉へ注射をするケースなどさまざまな方法があります。点滴で投与する場合には、一般的には腕の静脈に細くて短いチューブ(カテーテル)を挿入して、薬剤を投与します。
点滴による抗がん剤治療では、血管痛が起こる可能性があります。血管痛では、点滴の針の挿入箇所やその周辺に痛みや違和感を覚える他、以下に挙げるような症状も現れるケースがあります。
- 点滴中の赤み・腫れなど。
- 点滴終了後の血管のつっぱり感・硬さ・赤み・色素沈着など。
抗がん剤治療による血管痛の原因
続いては、抗がん剤治療による血管痛の原因を紹介します。
抗がん剤による血管痛の主な原因である、抗がん剤の性質・点滴のし過ぎについて、次章以降で解説します。
抗がん剤の性質によるもの
抗がん剤治療による血管痛の原因1つ目は、抗がん剤の性質によるものです。抗がん剤の性質によって、血管痛が生じるケースがあります。
血液のpHは弱アルカリ性であり、投与する抗がん剤のpHが酸性側もしくはアルカリ性側に傾いた場合、血管を刺激して痛みや炎症を引き起こす原因になります。血管内皮細胞が浸透圧が異なる抗がん剤に触れて、傷付いてしまい痛みが生じることがあり、この症状は、静脈炎と呼ばれることもあります。
抗がん剤と血管の接触時間が長いことも血管痛の原因になりやすいでしょう。
また抗がん剤の刺激性によっても、痛みや炎症(静脈炎)が起こる可能性があります。血管刺激性の強い抗がん剤は、乳がん、大腸がん、肺がん、卵巣がんなど、さまざまながんの治療に使われています。
点滴のし過ぎによるもの
抗がん剤治療による血管痛の原因2つ目は、点滴のし過ぎによるものです。
抗がん剤の性質によるもの以外でも、点滴のために何度も末梢静脈に針を刺していると、血管が傷付き、もろくなってしまう可能性があります。点滴の針が血管に入りにくくなると、薬が血管の外に漏れてしまい血管外漏出になる恐れも高まり、注意が必要です。
血管外漏出が起こると、痛みや炎症が生じるケースもあります。血管外漏出が起こりやすい血管は、以下の通りです。
- 細くもろい血管
- 化学療法や薬剤使用の繰り返しにより硬化した血管
- 関節など、動きの影響を受けやすい部位の血管
- 一度で穿刺が出来なかった血管
- 血管炎や血管外漏出の既往のある血管
- 4時間以内に注射、採血した部位よりも末梢側の血管
など。
血管痛の発症時期は原因によって異なる
血管痛の発症時期は原因によって異なります。抗がん剤の副作用にはさまざまな症状があり、各症状で、起こるタイミングがある程度分かっています。
血管痛は抗がん剤の投与開始時点から起こる可能性があるだけでなく、投与終了後に発現することがあり、原因によって時期が異なります。ただし紹介する発症時期は目安であり、個人差があります。
血管外漏出は、抗がん剤投与開始時点から起こる可能性が高いと言われています。
また、静脈炎は投与開始から投与終了後にも起こる可能性が高い傾向があります。抗がん剤は複数のクールに分けて投与していきますが、血管痛が初めて出現した時期は、1コース目よりも2コース目の方が多いという報告もあります。
抗がん剤による血管痛はいつまで続くの?
では、抗がん剤による血管痛はいつまで続くのでしょうか。
血管痛がいつまで続くかには個人差があります。点滴中や点滴後1〜3日で痛みや違和感を覚えたら迅速に医師や看護師に伝えることが大切です。
特に血管痛の原因が血管外漏出の場合、数時間〜数日後にその症状が悪化し、水疱→潰瘍→壊死形成と移行してしまうため、注意が必要です。重症化すると瘢痕が残ったりケロイド化したりしてしまう可能性もあります。
血管痛が起こりやすい抗がん剤
では、血管痛が起こりやすい抗がん剤はどのようなものでしょうか。血管痛が起こりやすいといわれている、主な抗がん剤の種類を紹介します。
- アクラルビシン塩酸塩
- アムルビシン塩酸塩
- イダルビシン塩酸塩
- エトポシド
- L-アスパラギナーゼ
- イホスファミド
- エトポシド
- エピルビシン塩酸塩
- オキサリプラチン
- カルフィルゾミブ
- ゲムシタビン塩酸塩
- ストレプトゾシン
- ダウノルビシン塩酸塩
- ダカルバジン
- ドキソルビシン塩酸塩
- ビノレルビン酒石酸塩
- ピラルビシン塩酸塩
- フルオロウラシル
- ブレオマイシン塩酸塩
- ベンダムスチン
- マイトマイシンC
- ミトキサントロン塩酸塩
今回紹介した薬剤は一例です。これらの薬剤以外でも血管痛・静脈炎を生じる可能性があります。
抗がん剤治療による血管痛の予防法
続いては、抗がん剤治療による血管痛の予防法を紹介します。治療を受ける患者さん自身でも行える、血管痛の予防法である
- 穿刺箇所について医師や看護師に相談する
- 抗がん剤の投与前にトイレや着替えを済ませておく
- 点滴した腕に負荷をかけない
について紹介します。
穿刺箇所について医師や看護師に相談する
抗がん剤治療による血管痛の予防法1つ目は、穿刺箇所について医師や看護師に相談することです。
抗がん剤を投与したり採血をしたりした腕の反対側や、末梢側の血管で採血をしてもらうように医師や看護師に伝え、どの箇所に穿刺をすべきかを相談しましょう。血管外漏出を避けることができます。
抗がん剤の投与前にトイレや着替えを済ませておく
抗がん剤治療による血管痛の予防法2つ目は、抗がん剤の投与前にトイレや着替えを済ませておくことです。トイレや着替えなどは、点滴による抗がん剤の投与前に済ませましょう。
また、点滴中はなるべく安静にし、点滴ルートの取り扱いに注意してください。腕の静脈に針を挿入している場合、体や腕を動かして点滴の管が引っ張られたり、体のどこかで管を踏んでしまわないように注意する必要があります。
点滴した腕に負荷をかけない
抗がん剤治療による血管痛の予防法3つ目は、点滴した腕に負荷をかけないことです。点滴で抗がん剤を投与した後、腕にあまり負荷をかけないよう重い荷物などは反対の腕で持つようにしましょう。
血管痛が起こったときの対処法
続いては、血管痛が起こったときの以下の対処法について紹介します。
- 【最優先】医師や看護師に伝える
- ホットパックを使用する
- 鎮痛剤を処方してもらう
- CVポートを検討する
血管痛が起こったときの主な対処法を見ていきましょう。ただし抗がん剤の種類によっても、適切な対処法は異なるため事前に医師に確認しておくことが大切です。
【最優先】医師や看護師に伝える
血管痛が起こったときの対処法の1つ目は、医師や看護師に伝えることです。
最優先事項として実行してください。
血管痛が起こったときは、前述した通り医師や看護師に迅速に伝えることが大切です。抗がん剤の種類によっては、血液外漏出が起きると周辺細胞が傷んで壊死し、皮膚潰瘍などが残ることがあります。
以下のような症状や違和感を少しでも感じたら、医師や看護師に伝えてください。
- 違和感がある
- 痛みや灼熱感がある
- 腫れがある
- 赤くなっている
- つっぱり感がある
- 点滴の滴下が悪い
抗がん剤の投与後、自宅に帰宅後も上記の症状が少しでも出たら、医師に伝えましょう。
ホットパックを使用する
血管痛が起こったときの対処法2つ目は、ホットパックを使用することです。ジェル状のパックであるホットパックで温めて使用することで血管痛の軽減を図れます。
鎮痛剤を処方してもらう
血管痛が起こったときの対処法3つ目は、鎮痛剤を処方してもらうことです。
鎮痛剤によっても痛みが軽減したというケースもあります。痛みが生じている際には医師や看護師に相談し、鎮痛剤を処方してもらうのも一つの方法です。
CVポートを検討する
血管痛が起こったときの対処法4つ目は、CVポートを検討することです。
CVポートとは、中心静脈から薬の点滴を行うために用いる機器の一種です。皮下埋め込み型ポートといわれています。その名の通り、皮膚の下にCVポートを埋め込んで薬剤を投与します。鎖骨の下の太い血管や頚部静脈、上腕の静脈を経由し、心臓の右心房手前にチューブの先端を留置します。
上記で紹介した予防法や対処法を行っても、痛みが軽減しない場合はポートの使用が医師によって検討されます。CVポートは、太い血管に挿入するので、細い血管よりも血管炎を起こしにくいというメリットがあります。
ただし皮膚下にCVポートを留置することによる合併症が生じるというデメリットもあることを認識しておき、どのような対処法が適しているのかを医師と相談することが大切です。
まとめ
今回は、抗がん剤による血管痛の原因を紹介しました。
血管痛の原因は、抗がん剤の性質によるものや点滴のし過ぎによるものがあります。抗がん剤による血管痛が生じた場合には、穿刺箇所について医師や看護師に相談しましょう。痛みが続く場合には我慢せずに医師に相談し、ホットパックや解熱剤の使用を検討します。
今回紹介した抗がん剤治療の他にも、がん治療にはさまざまな方法があります。広く知られている治療法として、手術療法、放射線療法があります。
手術療法はがんを手術によって取り除く治療法です。がん細胞を取り残すことのないように、がん組織の周りの正常組織を含めて切除することが一般的です。
放射線療法は、エックス線、ガンマ線などの放射線を用いて行います。がん細胞内の遺伝子にダメージを与え、がん細胞を壊す効果が期待できます。
また、近年研究が進められている治療法に、免疫療法があります。免疫療法とは、自身の免疫力を利用する比較的副作用が少ない治療法です。
福岡同仁クリニックでは、免疫療法の一つである6種複合免疫療法を受けられます。
福岡同仁クリニックは、治療を実施するに当たり患者さんの症状や病態や病気の経過などを判断し、最適な治療法を提案してくれます。
さまざまな負担を軽減し生活の質を改善が期待できる6種複合免疫療法について、より詳しく知りたい方や、がんの治療方法を検討している方はこちらよりご確認ください。
監修:福岡同仁クリニック院長 麻生俊英
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