がん免疫療法コラム

NK細胞療法とは? 期待できる効果や特長、注意点について徹底解説

本記事を読むことで、NK細胞療法の基本から効果、特長、注意点まで詳しく理解できます。

がん治療の一つである「NK細胞療法」について知りたい方はぜひご参考ください。専門的な治療方法についての知識を深め、がん治療の選択肢に新たな視点を提供します。

がん・6種複合免疫療法

免疫細胞とは?


免疫細胞は、体内で異物や病原体といった外部からの侵入者を検知し、攻撃するための特殊な細胞です。これらの細胞は、血液やリンパ液など体内のさまざまな液体中に存在しています。免疫細胞は、体を守るために異物を見分け、感染や病気といった脅威に対抗します。異物や病原体を認識することで、免疫細胞は迅速かつ効果的に対応し、体を健康な状態に保つ役割を果たしています。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)とは?


NK細胞は、免疫細胞の一種であり、主にリンパ球に分類されます。「ナチュラルキラー細胞」とも呼ばれ、リンパ球全体の10〜30%を占めています。NK細胞の特徴は、がん細胞など遭遇したことのない異常細胞を発見すると、単独で攻撃を仕掛けることです。これにより、早期の異常細胞の排除や感染症への対抗が可能となります。

他の免疫細胞との大きな違いは、T細胞やB細胞などが過去に異常細胞と認識したものしか攻撃しない「抗原抗体反応」がないことです。NK細胞は抗原抗体反応に依存せず、自由に異常細胞を攻撃できます。この特性により、NK細胞は早期のがん治療や感染症の防御において重要な役割を果たしています。

NK細胞療法とは?


NK細胞療法は、免疫療法の一環であり、がん細胞に対抗するために自身の免疫力を増強する治療法の一つです。免疫療法は、がん細胞の増殖に対抗するために患者さんの免疫力を強化するアプローチを取ります。NK細胞療法では、患者さんから採取した血液中のNK細胞を主に高い活性を持つ状態に培養し、その後点滴で患者さんの体内に戻します。この高活性なNK細胞ががん細胞と対抗し、異常な細胞を攻撃することでがんの進行を抑制するのです。

NK細胞療法は患者さんの免疫系を直接活性化させるため、がん治療のアプローチを拡充させる可能性があります。また、他のがん治療法と併用することで相乗効果も期待できます。患者さんの個別の状態やがんの種類によって異なる治療法が選択される中で、NK細胞療法はその幅広い適用性と新たな治療選択肢として注目を集めています。将来的には、がん治療の領域において免疫療法がますます重要な位置を占めることが期待されます。

NK細胞療法の効果


NK細胞療法には期待できる効果がいくつかあります。NK細胞の活性化により、がん細胞に直接攻撃を仕掛け、がんの進行を抑制し、腫瘍のサイズを縮小させることが期待されます。特に抗がん剤治療の際に発生する免疫抑制により、がん細胞に対する免疫細胞の抵抗力が低下しても、NK細胞療法を用いることで免疫増強効果が得られます。

抗がん剤治療が免疫系を抑制することで、がん細胞への免疫応答が弱まり、がんの発生や再発がリスクとなりますが、NK細胞療法はこの問題に対処できる可能性があるということです。免疫増強効果によって、がん細胞への免疫応答が活性化され、がんの発生や再発を抑制することが期待されます。

このように、NK細胞療法は抗がん剤治療との組み合わせにおいて、より効果的ながん治療法として注目を集めています。

NK細胞療法が適しているがんの種類


NK細胞療法は、一部の血液系がんを除く、「固形がん」と呼ばれる臓器や組織でかたまりをつくるがんを治療対象としています。免疫力の高まりによって、NK細胞は固形がん細胞に直接攻撃を仕掛け、その進行を抑制する効果に期待できます。


NK細胞療法の特長を以下にご紹介します。

重篤な副作用が起きる可能性が低い

NK細胞療法は、患者さんのNK細胞を増殖させ、活性化した後、体内に戻す治療法です。この方法により、自らの免疫力を活用し、がん細胞への攻撃を促進することが期待されます。

NK細胞は自然な免疫応答を引き起こすため、治療の際には拒絶反応やアレルギー反応などの重篤な副作用の発生リスクが低いとされています。

短期間で効果が表れやすい

NK細胞療法は、がん細胞を破壊する能力が高いNK細胞を利用するため、効果が比較的短期間に現れやすい治療法です。NK細胞は免疫細胞のなかでも優れた攻撃力を持ち、がんに対する迅速で効果的な反応が期待されます。

しかし、効果の現れには個人差が存在することを理解しておくことが重要です。患者さんの体質やがんの種類によって反応が異なるため、効果の出方は個別に異なる可能性があります。

他のがんの治療方法と併用できる

NK細胞療法は他のがん治療法との併用が可能であり、特に樹状細胞ワクチン療法との組み合わせには併用効果が期待できると言われています。樹状細胞ワクチン療法は、リンパ球中のT細胞を教育し、がん細胞を攻撃するT細胞を活性化させる手法です。

しかし、がん細胞がT細胞からの攻撃を逃れるためにMHC分子を隠す場合があり、これによりT細胞の攻撃を回避することがあります。

ここでNK細胞療法が重要な役割を果たします。NK細胞はMHC分子に依存せず、がん細胞を攻撃できるため、MHC分子が隠された状態でもがんに対して効果を発揮できます。これにより、T細胞の攻撃をすり抜けるがん細胞に対しても効果的な治療が期待できるのです。

このように、治療方法を併用することで、樹状細胞ワクチン療法とNK細胞療法はお互いの弱点を補完し合い、より高い治療効果をもたらすことが可能となります。

体への負担が少ない

がん治療はしばしば強い副作用や入院が必要となることがありますが、NK細胞療法は他の治療法に比べて身体的な負担が少なく、通院での治療も可能です。患者さんの生活の質(QOL)を維持しながらがんに対抗できるため、患者さんにとっても負担の軽減に期待できます。

再発や転移の予防につながる

NK細胞療法は、増殖・活性化したNK細胞が体全体を巡回する特長があり、がんの再発や転移予防に有効とされています。増殖・活性化されたNK細胞は、循環系を介して体内に広がり、異常な細胞やがん細胞を検知し攻撃します。そのため、NK細胞療法は局所的ながん細胞だけでなく、全身的ながんの予防にも効果を発揮するのです。

NK細胞療法の注意点


続いて、NK細胞療法の治療を受ける前に把握しておくべき注意点を紹介します。

まれに軽度な副作用が起きる可能性がある

NK細胞療法は一般的に重篤な副作用が起きにくく、ごくまれに軽度な症状が発生することがあります。具体的には、発熱、発疹、倦怠感などが挙げられます。

しかし、これらの症状は通常数日程度で治まることがほとんどです。治療後に生じる軽度な症状は、一時的な反応であり、治療自体の安全性が高いことを示しています。このように、NK細胞療法は安全性が高く、患者さんの生活の質(QOL)への影響が少ない治療法として注目されています。

NK細胞が認識しないがん細胞もある

NK細胞は認識できるがん細胞が全体の約60%を占めるとされています。しかし、NK細胞療法だけではがんを完全に治療するには限界があります。そのため、樹状細胞ワクチン療法や他の免疫細胞療法との併用が推奨されます。

これにより、NK細胞療法がカバーできないがんの変異や逃れる可能性がある部分にも対処でき、より包括的かつ効果的ながん治療に期待できます。

自由診療のため全額自己負担になる

NK細胞療法は保険が適用されないため、治療費は患者さんの自己負担となり、高額になることがあります。患者さんが治療を検討する際には、治療を行うクリニックや病院に事前に治療費を確認しておくことが重要です。

すぐに治療を始められない

NK細胞療法では、まず治療を受ける方の血液を採取し、その中からNK細胞を取り出して培養、増殖、活性化させます。

しかし、NK細胞の培養には数週間の期間が必要です。そのため、血液を採取した後、すぐに治療を開始することは難しいのです。培養期間中、専門の施設でNK細胞の増殖、高い活性を獲得するまで待つ必要があります。

NK細胞療法の治療の流れ


NK細胞療法の治療の流れは以下の通りです。ただし、クリニックや病院によっては細かい部分が異なることがありますので、具体的な情報は治療を受けるクリニックや病院に確認することが必要です。

主な治療の流れは以下の通りです。

①治療の適応を判断 まず、NK細胞療法が受けられるかどうかを検査(血液検査や画像検査など)をもとに判断します。
②血液採取 治療を受ける方の血液を採取します。
③NK細胞の培養 専用の細胞培養施設で、一定期間(通常2~3週間)、時間をかけてNK細胞を増殖・活性化させます。
④NK細胞の再注入 培養されたNK細胞が含まれた生理食塩水を点滴にて再度体内に戻します。
⑤定期的な繰り返し 上記のプロセスを定期的に複数回繰り返すことがあります。治療の進捗や患者さんの状態に応じて、継続的な治療が行われます。

 

NK細胞を含む6つの免疫細胞を培養する6種複合免疫療法とは?


「6種複合免疫療法」とは、NK細胞だけでなく、T細胞や樹状細胞など、合計で6種類の異なる免疫細胞を同時に培養する免疫療法の一種です。これらの免疫細胞は、個別の役割を果たし、協力してがん細胞への攻撃を行います。

以下に6種複合免疫療法で培養する主要な免疫細胞を表で分かりやすく紹介します。

免疫細胞 役割
NK細胞 がん細胞の早期発見・攻撃、ウイルス感染細胞へ対抗する
樹状細胞 抗原提示と呼ばれる免疫反応の開始を促進し、他の免疫細胞を活性化させる
ヘルパーT細胞 免疫反応のコントロール、他の免疫細胞に指示を出す
キラーT細胞 感染細胞やがん細胞を直接攻撃し、破壊する
NKT細胞 免疫応答の調整、がん細胞を攻撃する
ガンマ・デルタT細胞 前述のT細胞とは異なり、抗原提示なしでがん細胞を認識し攻撃する

これらの免疫細胞は、がん細胞に対する包括的で強力な免疫応答を引き起こす役割を果たします。それぞれが異なる特性を持ち、チームプレーすることで、がん治療の幅が広がります。

6種複合免疫療法の効果


6種複合免疫療法は、がん治療において効果的なアプローチとされています。この治療法では、異なる役割を持つ6種類の免疫細胞を同時に増殖・活性化させ、がん細胞を発見し認識、攻撃します。これにより、免疫力がより効果的にがん細胞と対峙でき、治療の成功に導きます。

6種複合免疫療法は、手術や抗がん剤治療、放射線治療が難しい場合にも有効な治療法として注目されています。特に転移や再発したがんに対しても一定の効果が期待され、治療の選択肢を拡げる可能性があるのです。

このアプローチは、がん治療において従来の手法が有効でない場合や併用が難しい場面で、新たな治療選択肢として患者さんに希望をもたらすものと言えます。

6種複合免疫療法が適しているがんの種類


6種複合免疫療法は、一部の白血病を除く、ほぼ全てのがんに対応しています。異なる6種類の免疫細胞を同時に活性化させ、がん細胞に対する免疫応答を強化するこの治療法は、多岐にわたるがんに対して効果的なアプローチとされています。

6種複合免疫療法の特長


6種複合免疫療法の特長を以下に紹介します。

重篤な副作用が起きる可能性が低い

6種複合免疫療法はNK細胞療法と同じく、体内の免疫細胞を活用した治療法です。患者さん自身の血液を採取し、その中から6つの異なる免疫細胞を取り出し、培養させて再び体内に戻す手法であるため、重篤な副作用が起きにくく、アレルギー反応や拒絶反応が少ないのが特徴です。

他のがん治療と併用することで高い効果を見込める

6種複合免疫療法は、放射線治療や抗がん剤治療との併用が可能です。この特長により、がん治療の組み合わせアプローチを実現し、患者さんにとってより効果的な治療法を提供します。また、抗がん剤治療の副作用を軽減し、生活の質を向上させる効果が期待されます。

体への負担が少ない

6種複合免疫療法は、1回の治療時間が短く、入院が不要です。数週間ごとの通院で治療が受けられるため、生活リズムを崩さずに治療を進めることが可能です。

再発や転移の予防につながる

6種複合免疫療法は、術後のがん転移や再発の予防に有効です。手術療法などで残ったがん細胞にも効果が期待できます。

6種複合免疫療法の注意点


次に、6種複合免疫療法の注意点を紹介します。

効果の表れ方には個人差がある

6種複合免疫療法は症例により効果が異なり、期待通りの結果が得られないことがある点に注意が必要です。免疫力が著しく低下している場合、複数回治療を受けても効果が表れない可能性があります。がんの進行と患者さんの免疫力の差が大きい場合、免疫細胞の活性化が力関係を修復できないことがあります。

このため、治療前に患者さんの免疫状態やがんの進行度などを詳細に評価し、適切なアプローチを検討することが必要です。

まれに軽度な副作用が起きる可能性がある

6種複合免疫療法は一般的に重篤な副作用が起きにくい治療法ですが、まれに一過性の軽度な副作用が発生することがあります。例えば、発熱や注射部位の発赤、発疹、搔痒感などが挙げられます。これらの症状は通常、治療後数日で自然に治まります。

治療効果とのバランスを考慮すると、一時的な軽度な副作用は治療の成功に比べて軽微であり、患者さんの健康を損なうことはほとんどありません。

自由診療のため全額自己負担になる

NK細胞療法と同じく、6種複合免疫療法も保険適用外であり、自費診療です。ただし、確定申告による医療費控除の対象となります。患者さんが治療にかかる費用は自己負担となりますが、確定申告を通じて一定の範囲内で医療費の控除が受けられるため、一定の経済的な支援が期待できます。治療を検討する際は、費用や経済的な側面を含めて慎重に検討し、必要ならば医療機関に相談することが重要です。

すぐに治療を始められない

6種複合免疫療法では、治療のために免疫細胞を培養する必要があり、このプロセスには採血から数週間の期間がかかります。培養工程では、環境条件や細胞の規格が整っていない場合、または患者さんの体調によっては、採血・培養し直すケースも発生する可能性があります。これにより治療が一時的に遅れることがありますが、患者さんの安全性や治療の品質を確保するためには必要なステップです。

6種複合免疫療法の治療の流れ


6種複合免疫療法の治療プロセスは以下の通りです。ただし、クリニックや病院によって細部が異なる場合がありますので、具体的な詳細は治療を受ける医療機関で確認が必要です。

6種複合免疫療法の治療の流れは以下の通りです。

①採血 まず、治療を受けるために採血を行います。
②血液採取 採血された血液から、治療に必要な成分が取り出されます。
③免疫細胞の培養 専用の細胞培養施設で、6種類の免疫細胞を培養し、同時に活性化・増殖させます。この過程には約3週間かかります。
④点滴による体内への戻し 活性化された免疫細胞は、点滴を通じて患者さんの体内に戻されます。
⑤繰り返し治療 上記のプロセスを定期的に複数回繰り返します。治療の回数や頻度は患者さんの状態や治療効果により調整されます。

6種複合免疫療法の2つのコース


6種複合免疫療法では、治療を受ける方の状況に合わせて、主に2つのコースが用意されています。「BASIC」はがんの予防を目的とし、「CSC」はがんの治療を対象としています。

がん予防のための6種複合免疫療法「BASIC」

6種複合免疫療法の「BASIC」は、がんを予防し、再発を防止したい方に適した治療法です。このアプローチでは、患者さんの血液から採取された免疫細胞を専用の培養施設で6種類に分け、増殖・活性化させます。この過程によって、免疫系が強化され、がんの発生・再発リスクが低減します。予防の観点から、患者さんの免疫力を高め、異常細胞に対する抵抗力を向上させることが狙いです。患者さん自身の状態に合わせて選択される「BASIC」は、がんの予防を目指す方に希望の治療法となります。

がん治療のための6種複合免疫療法「CSC」

がんを治療したい場合に受けるのが6種複合免疫療法「CSC」です。この治療法は、がん予防を目指す「BASIC」にWT1ペプチドとがん幹細胞を標的とするペプチドを追加したものです。樹状細胞はWT1ペプチドを認識し、その情報をキラーT細胞、ヘルパーT細胞、NKT細胞に伝達します。これにより、免疫細胞が活性化・増殖し、がん細胞を攻撃するサイトカインが放出されます。これによってがん細胞への攻撃が強化され、治療の効果が期待されます。6種複合免疫療法「CSC」は、特にがん細胞に対する効果的なアプローチを追求し、治療の進展に向けた先進的な取り組みとなっています。

がん・6種複合免疫療法

まとめ


近年、がん治療の第4のアプローチとして、NK細胞療法や6種複合免疫療法などの免疫療法が注目されています。これらの治療法は、患者さんの免疫系を活性化し、がん細胞との戦いをサポートします。特に6種複合免疫療法では、樹状細胞を活用し、免疫細胞の特定の機能を向上させる手法が導入されています。

同仁がん免疫研究所では、この6種複合免疫療法を提供しています。負担の少ない治療法をお探しの方、またはがん治療の副作用が心配という方は、ぜひ6種複合免疫療法を検討してみてください。

6種複合免疫療法についてさらに詳しく知りたい方は こちらよりご確認ください。

監修:福岡同仁クリニック院長 麻生 俊英

がん・6種複合免疫療法

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