がん免疫療法コラム
緩和ケアを受けるタイミングはいつ? 費用は? がんと闘いながらその人らしい暮らしを取り戻すための選択肢
がんについての知識を深めるために「緩和ケア」について学びましょう。
この記事を読むと
- 緩和ケアについて
- 緩和ケアのタイミング
- 緩和ケアの種類
- 緩和ケアの費用
について知ることができます。
がんの再発について詳しく知りたい人や再発予防の治療を受けたい人は、ぜひ参考にご覧ください。
INDEX
緩和ケアとは?
まずは緩和ケアについて紹介します。
緩和ケアとは、がんによる心身のさまざまなつらさを和らげる取り組みのことです。緩和ケアは、進行していないうちから始めるものです。自身がつらいときはいつでも受けられるので、タイミングは自身で選択できます。
WHOの定義
緩和ケアについて知識を深めるために、WHOの定義を紹介します。
「緩和ケアは、身体的、心理的、社会的、または霊的な側面を含めて、生命を脅かす疾患がもたらす困難を抱える患者とその家族の生活の質を改善します。そして介護者のQOLも改善します。」
またこの他に、
「・年間、4000万人が緩和ケアを必要としていると推定されていますが、その78%が低・中所得国に住んでいます。
・世界中で、緩和ケアを必要とする人のうち、そのケアを受けているのはわずか約14%です。
・モルヒネをはじめとして必要な緩和ケア用の薬剤を必要以上に制限する規制は、適切な緩和ケアの普及を妨げています。
・普及を改善するためには、医療専門家に対する緩和ケアに関する適切な国の政策、プログラム、資源、および研修が緊急に必要です。
・人口の高齢化、非伝染病や一部の伝染病の増大などにより、緩和ケアの世界的ニーズは今後も高まりつつあります。
・緩和ケアを早期に行うことで、不必要な入院や保健サービスの利用を減らすことができます。
・医師、看護士、サポートワーカー、パラメディカルスタッフ、薬剤師、理学療法士、そしてボランティアなど、それぞれの立場で重要な役割を果たす専門家が、患者とその家族を支援する緩和ケアサービスに必要です。」
と述べています。
(参考:公益社団法人 日本WHO協会 )
がんと診断された=緩和ケアを始めるとき
緩和ケアは終末期ケアと誤解してしまいがちですが、そうではありません。緩和ケアを受けることに抵抗を持つ人もいますが、緩和ケアは早期の内から受けるべき治療です。
緩和ケアとは、がんと闘いながらその人らしい暮らしを取り戻すための選択肢なのです。
緩和ケアはさまざまな専門家のサポートによって行われる
緩和ケアはさまざまな専門家のサポートによって行われます。関係する医療従事者と彼らの役割、相談できる内容は以下の通りです。
心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、看護師、医師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーについて紹介します。
関係する医療従事者 | 彼らの役割・相談できる内容 |
心理士 | つらい気持ちを傾聴し、心の辛さを和らげる手伝いをしてくれます。 |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 無理のない動きや生活の工夫をアドバイスしてくれます。 |
薬剤師 | 薬の副作用への不安を和らげ、飲み方などをアドバイスしてくれます。 |
看護師 | 体や心のつらさを和らげ、生活を支えてくれます。 |
医師 | がんの治療を行う担当の医師や、体のつらさの緩和を専門とする医師、気持ちのつらさの緩和を専門とする医師が対応してくれます。 |
管理栄養士 | 食欲がないときなど、食事の工夫をアドバイスしてくれます。 |
ソーシャルワーカー | 経済的な問題や退院・転院に向けた不安に対応してくれます。 |
ケアマネジャー | 在宅生活を整えてくれます。 |
緩和ケアの例
続いては、緩和ケアの例を紹介します。
緩和ケアの例1つ目は、痛みをとるケアです。医師による投薬と作業療法士によるストレッチでつらい症状を取り除くことを目指します。
緩和ケアの例2つ目は、食事を楽しむケアです。管理栄養士のアドバイスを取り入れて自分らしい日常生活を取り戻すことを目指します。また、がんと診断されて落ち込んだ気持ちに対しても緩和ケアは有効です。
緩和ケアのかたち
緩和ケアには、病院に入院して行うケア、通院で行うケア、在宅療養で行うケアがあります。それぞれの緩和ケアの方法の詳細を見ていきましょう。
入院
緩和ケアのかたち1つ目は、入院で行うケアです。病院に入院することで、現状の改善に専念できます。一般病棟に入院するケースと緩和ケア病棟に入院するケースがあります。それぞれのケースについて、次章で詳しく解説します。
一般病棟
まずは、一般病棟の緩和ケアについて紹介します。がん治療のための入院をした際は、一般病棟となります。治療と並行して行う「基本的緩和ケア」を受けられます。
基本的緩和ケアは、手術、抗がん剤療法、放射線治療などのがん治療を行う医師や看護師など、がん医療に携わる医療者によって提供されるケアのこと。基本的緩和ケアでは、治療による痛みの軽減や不安を取り除くための治療やカウンセリングなどが受けられます。
また、診断時からケアを受けることができ、特別な手続きなどは必要ないのが特徴です。
緩和ケア病棟
続いては、緩和ケア病棟でのケアについて紹介します。緩和ケアを目的とした入院の場合は、緩和ケア病棟に入院するケースがあります。
緩和ケア病棟は、緩和ケアだけを行う病棟です。普段通りに生活するために辛さをコントロールすることが目的となります。
「基本的緩和ケア」だけではつらさが緩和できない方などに向けた治療を行うための病棟です。
緩和ケア病棟では、患者と家族がくつろげる環境が揃っていることが多い傾向にあります。苦痛症状を緩和するために医師や看護師が主治医、受け持ち看護師となって、専属でケアを提供してくれます。また個室の病室では、プライバシーが守られた環境です。気心のしれた家族や友人と、静かで穏やかな時間を過ごすことができます。
緩和ケア病棟では、面会や持ち込み物の制限が少ないことが多いです。家のような感覚で、その人らしい生活を送ることができるでしょう。
また、つらい時期だけ一般病棟から緩和ケア病棟に移り、症状が軽くなったら一般病棟に戻るなどのケースもあります。
通院
緩和ケアのかたち2つ目は、通院で行うケアです。通院でのケアは、一般外来で行う場合と緩和ケア外来で行う場合があります。
それぞれの特徴について詳しく紹介します。
一般外来
まずは、一般外来での緩和ケアについて紹介します。がん治療のための通院は一般外来となります。
一般外来でも治療と並行して行う「基本的緩和ケア」を受けられます。必要に応じて、他の専門職による支援を受けることもあります。
緩和ケア外来
続いては、緩和ケア外来でのケアについて紹介します。緩和ケアを目的とした通院の場合は、緩和ケア外来では緩和ケアだけを行います。
しかし、緩和ケア外来を促進させる活動は病院によって異なります。緩和ケア外来が開設されていない場合や、毎日開かれていない場合もあります。
ですが、がん患者さんは希望すれば緩和ケアを受けることができ、緩和ケア外来がない場合は他の施設のケアを医師に紹介してもらうことも可能です。
在宅療養
緩和ケアのかたち3つ目は、在宅療養で行うケアです。自宅で受ける緩和ケアでは、自分の生活エリアの中で、比較的マイペースに緩和ケアを受けられるという特徴があります。
病院に出向く必要がないので、感染症などへの罹患に関する不安も軽減されます。在宅療養で緩和ケアを受けるには、訪問診療や訪問介護などのサービスを受けられるよう手続きをしておかなければなりません。
また、通院や入院から在宅療養に切り替える場合には、一般的には医師が手配してくれます。緩和ケアに関する意思決定に迷った際には、医師や訪問診療の担当者に相談するようにしましょう。
緩和ケア病棟とホスピスの違い
続いては、緩和ケア病棟とホスピスの違いを紹介します。緩和ケア病棟と同じようなイメージのある施設に「ホスピス」というものがあります。ホスピスは、治癒が望めない時期から終末期に、最期まで希望通りに生きることが主な目的です。
このように緩和ケア病棟とホスピスでは、目的が全く違います。緩和ケア病棟とホスピスは、利用する時期、つまりステージも異なります。ですが、両者の利用費用に大きな差はありません。次章では、緩和ケアに関する費用について詳しく解説します。
緩和ケアの費用の目安
続いては、緩和ケアの費用の目安を紹介します。入院、通院、在宅療法についての費用を見ていきましょう。
入院
まずは入院の場合の費用を紹介します。医療費は定額です。一般病棟の場合の費用の目安は、以下の通りです。
3割負担…1,170円/日
1割負担…390円/日
また、医療保険適用前は3,900円/日です。緩和ケア病棟の場合の費用の目安は、以下の通りです。
3割負担…約15,000円/日
1割負担…約5,000円/日
また、医療保険適用前は49,700円または52,070円/日です。
医療費が一定額以上になる場合には、高額療養費制度を利用して、自己負担限度額までの支払いとすることが可能です。
一般病棟・緩和ケア病棟どちらも、医療費以外の費用が別途かかります。医療費以外の費用は、食費、部屋代などです。
通院
続いては、通院の費用を紹介します。一般的な外来診察や検査料、薬代などの自己負担分に定額を加算した金額を紹介します。
費用の目安は、以下の通りです。
3割負担…900円/回
1割負担…300円/回
また、医療保険適用前は3,000円/回です。
在宅療養
続いては、在宅療養の費用を紹介します。訪問診察として、公的医療保険が適用されます。
週に何回訪問するかで費用が変わります。費用の目安を紹介します。週1回の場合は、以下の通りです。
3割負担…約15,000円/月
1割負担…約5,000円/月
週3回の場合は、以下の通りです。
3割負担…約40,000円/月
1割負担…約13,000円/月
週5回の場合は、以下の通りです。
3割負担…約60,000円/月
1割負担…約20,000円/月
この他に衛生材料費や医師・看護師の交通費などが別途かかります。その他、介護用ベッドや介護用品など、在宅療養できる環境を整えるために費用が必要ですが、介護保険に加入している場合は適用となります。
緩和ケアを受ける際に周囲に伝えるべきこと
次は、緩和ケアを受ける際に周囲に伝えるべきことを紹介します。緩和ケアはあくまで生活の質を改善し、自分らしい暮らしを取り戻すためのものです。
「自身が大切にしたいこと」と「具体的なつらさ」について解説します。
自身が大切にしたいこと
緩和ケアを受ける際には、自身が大切にしたいことを周囲に伝えましょう。治療の選択や緩和ケアのかたちなどについて、自分の気持ちをしっかりと伝えることが大切です。どのように過ごしたいのかという方向性の希望も伝えることが重要です。迷いが生じたときは、そのこと自体も正直に伝えるようにしましょう。
具体的なつらさ
緩和ケアを受ける際には、具体的なつらさを周囲に伝えましょう。つらさを我慢せず、症状の詳細を伝えることが大切です。いつから、どこが、どうすると、どんなふうに、どの程度辛いのかを記録して、正確に伝えるようにしましょう。正確に伝えることで、より治療に具体性が増し、目標が明確になります。症状に関する日記を書くのもおすすめです。日時、つらさの程度、症状、疑問や気がかりなこと、対応などを記載します。
がん患者さまの家族に対する緩和ケア
次に、がん患者さまの家族に対する緩和ケアについて紹介します。がんになると家族も大きなショックを受け、精神的なつらさや介護に対する体力的なつらさが生じます。
緩和ケアは患者本人だけでなく、家族に対しても行われる治療です。がん患者さんの家族は、第二の患者と呼ばれることもあります。施設によっては、家族外来が設置されている場合もあります。
全国にあるがん相談支援センターでは無料で相談できますので、チェックしておきましょう。また、匿名で相談可能です。
「がん相談支援センター」は、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、地域がん診療病院に設置されています。
がん相談支援センターで相談できることは、がんの診断に関すること、治療や副作用について、治療後の療養生活、お金、仕事、学校、家族や医療者との関係、疑問、心配、不安など。どんなことでも相談できます。
がんに関する相談窓口は、施設によって医療相談室、地域医療連携室、患者サポートセンターなどの名称が併記されていることもあるそうです。
まとめ
今回は
・緩和ケアについて
・緩和ケアのタイミング
・緩和ケアの種類
・緩和ケアの費用
について紹介しました。
がんの緩和ケアは、決して末期のがん患者さんのみが受ける治療ではありません。緩和ケアとは、がんと闘いながらその人らしい暮らしを取り戻すための選択肢です。
希望者が、自身の望んだタイミングで受けることができます。緩和ケアの必要があれば、前向きに検討しましょう。
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