がん免疫療法コラム

抗がん剤治療で免疫力が低下する理由とは? 副作用やかかりやすい感染症についても解説

抗がん剤治療は、がんの基本的な治療方法の一つです。ですが、抗がん剤治療には副作用があることをご存じですか?
がん患者さんやご家族は、抗がん剤治療を行うことで免疫力が低下してしまうという話を聞いたことがあるかと思います。
この記事では、
・抗がん剤治療について
・抗がん剤治療の副作用
・免疫療法
について紹介します。
ぜひ参考にご覧ください。

がん・6種複合免疫療法

抗がん剤治療とは?


まずは、抗がん剤治療とはどのような治療方法なのかを解説します。

抗がん剤治療は、がんの3大治療の一つです。
がん細胞が増殖するのを防いだり、がん細胞の成長を遅らせることを目的として行われます。
手術療法や放射線療法が局所治療であるのに対し、薬物療法である抗がん剤治療は全身に効果が及ぶことが特長です。
抗がん剤治療は転移や再発を防ぐことも可能だと言われています。

抗がん剤治療は、単独で治療することもあれば、手術療法や放射線療法など他の治療と組み合わせて治療を行うこともあります。
また抗がん剤と一口に言っても、作用の異なる抗がん剤を組み合わせることで、より高い効果を発揮するケースもあります。

抗がん剤治療の副作用


続いては抗がん剤治療の副作用を紹介します。
抗がん剤治療では、さまざまな副作用が起きることがあります。

抗がん剤の治療直後は、アレルギー反応や呼吸困難などが起こる可能性があります。
治療から1〜2週間頃には、だるさや吐き気、食欲低下、口内炎、下痢などが現れることがあります。
治療から2週間以降は、脱毛や手足のしびれ、皮膚の乾燥、色素沈着などが現れることがあるそうです。

その他の副作用としては、肝機能障害や腎機能障害、白血球減少や血小板減少、貧血などといった血液の異常も知られています。

中には、自覚症状がない副作用もあるため治療後には定期的に検査することが大切です。
また、上記のような副作用が起きる時期や頻度や程度には、個人差があります。

重篤な副作用も存在する

抗がん剤治療には、重篤な副作用も存在します。
上記に挙げたように、抗がん剤の副作用にはさまざまな種類のものがあり、その中には重篤な副作用とそうでない副作用があります。

この章では、死につながるリスクがある重篤な副作用について紹介します。
それぞれの症状や特徴について表にまとめました。

 アレルギー反応 蕁麻疹や赤み、かゆみなどの皮膚の症状や、くしゃみ、咳、息苦しさなど呼吸器の症状、目のかゆみ、むくみ、唇の腫れなど粘膜の症状などが現れることがある。腹痛や嘔吐など消化器の症状、血圧低下など循環器の症状もみられる。重篤なアレルギー反応である、アナフィラキシーでは、症状が複数の臓器にわたり全身に急速にあらわれてしまう。急激な血圧低下で意識を失うなどのショック症状が見られることもあり、生命に関わる。
 骨髄抑制 骨髄抑制、好中球減少性発熱では、好中球が500/ul未満に減少している際に、体温が37.5度以上に発熱する。寒気、体が震えるなどの身体症状を伴うことがある。
 心機能障害(心不全) 動悸、息切れ、呼吸困難、むくみなどの症状が現れる。軽い運動で動悸や息切れをしやすくなってしまう。進行すると歩くだけで動悸や息切れを起こしたり、就寝時の咳や息苦しさで眠れないなどの症状が現れることも。心不全の症状として足のむくみもある。
 2次発がん(白血病、悪性リンパ腫) 正常細胞が障害され、治療後数年から数十年後に別の種類のがんが生じることがある。先天性の免疫不全症、染色体異常を伴う先天性疾患では白血病が発生しやすい傾向にある。抗がん剤などでも白血病を引き起こす可能性がある。
 肺障害など 化学物質には肺機能障害を発生させる性質がある。間質性肺炎、肺線維症などを引き起こす。症状としては、咳、息切れ、軽い発熱などを引き起こす。

抗がん剤治療で副作用が起こるのはなぜ?


では、抗がん剤治療で副作用が起こるのはなぜでしょうか。
抗がん剤治療によって副作用が起きてしまう理由を解説します。
現在、がん細胞だけに作用する抗がん剤は開発されていません。
現在の抗がん剤治療薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用してしまうのです。

抗がん剤には細胞の分裂や増殖を防ぐ作用があるため、骨髄や消化管粘膜、口腔粘膜、毛根など分裂と増殖が盛んな細胞が影響を受けやすいと言われています。

抗がん剤治療によって免疫力が低下する


抗がん剤治療によって免疫力が低下するメカニズムを紹介します。
前述した抗がん剤の副作用の中に、骨髄抑制という症状があります。
抗がん剤治療に伴い、骨髄の働きが低下すると白血球の中の特に好中球の数が減少する傾向にあります。

白血球の中の好中球には、さまざまな病原菌から体を守る働きがあります。
好中球が減少することで免疫力が低下すると言われています。
一般的には、治療後の1週間〜10日程度で白血球の数が減少し始めるとされており、10日〜2週間頃に白血球の減少はピークになってしまうそうです。
3週間程度経過すると回復し始めますが、好中球の減少によりさまざまな箇所で感染症が起こりやすくなってしまいます。

人間は常に常在菌と呼ばれる菌を持っており、通常時には何も起こりませんが、免疫力が低下していると常在菌によって感染してしまうこともあります。
これは、日和見感染と呼ばれています。

免疫力が低下するとかかりやすい感染症


続いては、免疫力が低下するとかかりやすい感染症を紹介します。
感染症にかかるリスクはリンパ球である好中球の数によっても異なります。
リンパ球の中の好中球の数が少ないほど、感染症のリスクが高まってしまうので注意が必要です。
リンパ球の中の好中球は、一般的に1500/µL以下になると、免疫力が低下すると言われています。

リンパ球が500/μL以上の場合

免疫力が低下するとかかりやすい感染症をリンパ球の数ごとに紹介します。
まずは、リンパ球が500~1500/μLの場合にかかりやすい感染症を見ていきましょう。

リンパ球が500~1500/μLの場合には、インフルエンザウイルスや肺炎球菌などの感染に注意が必要です。
手洗いやマスクの着用などの一般的な感染対策を行う必要があります。

リンパ球が500/μL未満の場合

リンパ球が500/μL未満の場合にかかりやすい感染症を見ていきましょう。
リンパ球が500/μL未満の場合には、健康な状態では発熱などの症状を引き起こさないような感染症にかかる可能性があります。
緑膿菌、MRSAなどの細菌、真菌の一種であるカンジダの感染などに注意する必要があります。

リンパ球が100/μL未満の場合

続いては、リンパ球が100/μL未満の場合にかかりやすい感染症を紹介します。
リンパ球が100/μL未満の場合には、微量な細菌やウイルスに感染し、肺炎や敗血症などになる可能性があります。
アスペルギルスやムコールなどの重篤な感染症を生じる真菌に感染する可能性も高まるので、注意が必要です。

抗がん剤治療を行う際の感染症対策


続いては、抗がん剤治療を行う際の感染症対策について解説します。
抗がん剤治療によって免疫力が低下し、感染症にかからないようにするためには、対策をとることが大切です。

次章以降では、具体的な対策について紹介します。

手洗いやうがい、消毒をする

抗がん剤治療を行う際の感染症対策の1つ目は、手洗いやうがい、消毒を徹底することです。
外出後やトイレの後、食事の前後、動物に触れた後、鼻をかんだ後、目や口、鼻の粘膜を触る前後、ごみを触った後などには、手洗いを必ずするように心がけましょう。
手洗いの際は流水と石鹸を使い、外出後はうがいもしてください。
また、常にアルコールを含んだ消毒剤を持ち歩くこともおすすめです。

外出時は人混みを避け、マスクをする

抗がん剤治療を行う際の感染症対策の2つ目は、外出時は人込みを避け、マスクをすることです。
外出時は人混みを避け、できる限りマスクをしてください。

定期的に入浴や歯磨きをする

抗がん剤治療を行う際の感染症対策の3つ目は、定期的に入浴や歯磨きをすることです。
入浴できる場合には、基本的に毎日入浴をするよう心がけましょう。
また、歯磨きやうがいも定期的に行うことをおすすめします。
歯ブラシは柔らかいものを使い、口内を傷つけないように注意してください。
歯間ブラシの使用は、口内を傷つける可能性があるため、医師と相談の上行うようにしてください。
公衆浴場や温泉などに入る場合には、事前に医師に確認しましょう。

保湿する

抗がん剤治療を行う際の感染症対策の4つ目は、保湿することです。
皮膚が乾燥したりひび割れたりしないように、都度ハンドクリームやローションなどを使って保湿を心がけましょう。

食事に気を配る

抗がん剤治療を行う際の感染症対策の5つ目は、食事に気を配ることです。
食事は以下のことに気を付けるようにしましょう。

1.清潔に保つ
食品を取り扱う前だけでなく調理中も頻繁に手を洗いましょう。
トイレに行った後には必ず手を洗い、 調理器具および食品と接触する面は洗浄、消毒をすることをおすすめします。
また調理場や食材をねずみ、昆虫、他の動物の害から守りましょう。

2.生の食品と加熱済み食品とを分ける
生の肉類および魚介類は、他の食材と分けて取り扱いましょう。
また、生の食品を扱う包丁やまな板などの調理器具は、加熱済み食品に使用する調理器具と分けて使用しましょう。
生の食品と加熱済み食品は、同一の容器ではなく別の容器で保存しましょう。

3.良く加熱する
特に肉類や卵および魚介類はよく加熱しましょう。
スープやシチューのような食品は 沸騰するまで加熱しましょう。
肉類に関しては肉汁が透明で、ピンクではないことを確認してから食べてください。
温度計を使用するのが理想的です。
また、 調理済みの食品はよく再加熱しましょう。

4.安全な温度に保つ
調理済み食品を室温に2 時間以上放置しないようにしましょう。
調理済みの食品及び生鮮食品を保存するときは素早く冷却してください。
冷却の際は、5℃以下が理想的です。
食べるときまで60℃以上の熱い状態を保ちましょう。
また、冷蔵庫内であっても食品を長期間保存しないようにしましょう。

5.安全な水と原材料を使う
安全な水を使用しましょう。
新鮮で良質な食品を選別し、 安全性が確保された殺菌乳のような食品を選びましょう。
果物や野菜を、生で食べる場合にはよく水洗いしましょう。

(参考:WHO「食品をより安全にするための5つの鍵」)

免疫力を高めるがん治療・免疫療法とは?


続いては、免疫力を高めるがん治療・免疫療法について紹介します。
これまで、がんの全身治療は抗がん剤治療が一般的でした。
しかし全身への効果を見込める「免疫療法」というがん治療があります。

免疫療法とは、人間の体内に元々ある白血球やリンパ球などの免疫細胞の働きを強化し、がん細胞を攻撃する治療法です。
3大治療の効果が出にくくなったケースに対しても、効果を期待できる場合があります。
また、がん細胞の発生箇所や進行度に関係なく治療を受けられるのも特徴の一つです。
さらに免疫療法は体への負担が少なく、重篤な副作用が起きにくいというメリットがあります。

免疫療法は、3大治療法に次ぐ第4の治療として近年研究・実用化が進んでいます。

免疫療法はどのような人に向いている?


では、免疫療法はどのような人に向いているのでしょうか。
免疫療法は、一部の血液系のがんを除き多くのがんに適している治療法です。
その中でも次章で挙げる方々に、治療が向いていると言われています。

体力のない方や高齢の方

免疫療法が向いているのは、体力のない方や高齢の方です。

免疫療法の特長の一つとして、体への負担が少なく、アレルギー反応などの重篤な副作用が起きる可能性が低いという点があります。
そのため抗がん剤治療の副作用に耐えられないような、体力のない方や高齢の方に向いています。
免疫療法には入院しなくても良い治療方法が多く、生活の質(QOL)を崩さずに治療を進められるのが特徴です。

がんの転移や再発を予防したい方

免疫療法が向いているのは、がんの転移や再発を予防したい方です。
免疫療法は全身治療であるため、重篤な副作用の心配をせずに、転移・再発の原因となる、全身の微小ながん細胞に対して攻撃できます。

免疫療法は抗がん剤治療と併用できる?


続いては、免疫療法は抗がん剤治療と併用できるのかを解説します。
免疫療法は、基本的に3大治療方法と言われている治療と組み合わせられる治療法です。

他の治療方法と組み合わせることで、より高い効果を見込める場合もあります。
例えば抗がん剤治療だけでは、体内にがん細胞が残ってしまうこともありますが、抗がん剤治療の直後に免疫療法の治療を受けることで、残ったがん細胞を攻撃できるケースもあります。
ただし、場合によっては抗がん剤治療と免疫療法で効果を打ち消し合ってしまうケースもあるので、注意が必要です。
抗がん剤には免疫力を下げる効果があり、免疫療法には免疫力を上げる効果があるためです。

抗がん剤の種類によっても併用の効果が変わるため、組み合わせる場合には医師と相談の上決定しましょう。

免疫療法の注意点


続いては、免疫療法の注意点を紹介します。

軽度な副作用が起きる可能性がある

免疫療法の注意点1つ目は、軽度な副作用が起きる可能性があることです。
重篤な副作用は起きにくいですが、ごくまれに軽度な症状が出ることがあります。
具体的には発熱、発疹、倦怠感などの症状です。

ただしこれらの症状も数日程度で治まることがほとんどのため、必要以上に不安視することはありません。
個人差があるため、副作用自体起きない人もいます。

効果の表れにくいがんもある

免疫療法の注意点2つ目は、効果の表れ方には個人差があるという点です。
免疫療法だけでがんを治療することには限界があるため、前述した通り、他の3大治療やいくつかの免疫療法を組み合わせて治療を受けるとより効果的です。

多くの免疫療法があり、見極めが難しい

免疫療法の注意点3つ目は、多くの免疫療法があり、見極めが難しいという点です。
免疫療法には、多くの種類がありそれぞれ方法や考え方、効果などが異なります。
治療を検討する際は、医師と詳細をすり合わせることが大切です。

健康保険が適用されないケースが多い

免疫療法の注意点4つ目は、健康保険が適用されないケースが多いことです。
一部、健康保険が適用されるものもありますが基本的に健康保険が適用されません。
治療費は全額自己負担となり、高額になることもあるため、治療を受けるクリニックや病院へ事前に治療費を確認しておくことが大切です。

がん・6種複合免疫療法

まとめ


今回は抗がん剤治療について紹介しました。
抗がん剤治療は、免疫力を低下させる可能性のある治療法です。
がんの治療方法を検討している場合には、抗がん剤治療を含めた3大治療の他に免疫療法も一つの方法として検討することをおすすめします。

福岡同仁クリニックは、がん免疫療法専門の再生医療クリニックです。
福岡同仁クリニックは、治療を実施するに当たり患者さんの症状や病態や病気の経過などを判断し、最適な治療法を提案してくれます。
ご高齢の方や体力が低下している方など、免疫療法についてより詳しく知りたい方は「こちら」から、福岡同仁クリニックの公式ホームページをご確認ください。

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