がん免疫療法コラム
がんによる皮膚障害について
がんによる皮膚障害は主に抗がん剤、手術部位からの感染、放射線による放射線皮膚炎、感染症、床ずれ、ストーマ、がんによる症状や転移による進行など、さまざまな要因が関係しています。今回は抗がん剤による皮膚障害を中心にお話しします。
INDEX
癌による主な皮膚症状
癌の治療を受ける多くの患者さんは、治療に伴う皮膚症状に悩まされることがあります。まず明確に伝えたいのは、ここでいう「皮膚症状」は「皮膚がん」とは異なるということです。「皮膚がん」は皮膚自体の癌を指し、一方で「皮膚症状」は癌治療の副作用として現れる皮膚の変化やトラブルを指します。
癌の治療方法として、抗がん剤、手術、放射線治療などがありますが、特に抗がん剤は多くの皮膚障害を引き起こすことが知られています。以下に抗がん剤による皮膚障害の種類をご紹介します。
症状 | 具体的な症状 |
発疹・紅斑 | ・皮膚に赤いブツブツ
・重度になると皮膚が剥ける |
色素沈着 | ・手足や爪、顔が黒ずむ |
皮膚の乾燥 | ・乾燥して痒みを伴う
・進行するとひび割れや出血が起こる |
爪の変化 | ・爪が変色、変形する
・進行すると爪が剥がれることも |
手足症候群(てあししょうこうぐん) | ・むずむずする
・痛痒い ・ピリピリ、じんじんする |
ざ瘡様皮疹(ざそうようひしん) | ・頭部・顔面を含む全身にニキビのようなできものができる |
爪囲炎(そういえん) | ・爪周囲に腫れや痛み、亀裂が生じる |
白髪・白斑(皮膚色素減少症) | ・全身に白斑が出現する |
乾癬(かんせん) | ・赤く盛り上がった斑点ができ、表面に白または銀色の鱗上の皮膚の垢が伴う |
多型紅斑(たけいこうはん) | ・全身に赤く盛り上がった皮疹が出現する |
なぜ癌によって皮膚障害が起こるのか
私たちの皮膚は、体の外部環境からの刺激やダメージを防ぐための重要なバリアとして機能しています。この皮膚のバリア機能は、皮膚の細胞や皮脂膜、角質層などが協力して守っています。しかし、特定の薬剤や外部からの刺激によって、このバリア機能が低下すると、皮膚のトラブルが引き起こされることがあります。
抗がん剤には、直接細胞を傷害する細胞障害性抗がん剤と、がん細胞に対して選択的に作用する分子標的薬が存在します。中でも、分子標的薬のEGFR阻害薬は、非小細胞肺がんなどの治療に用いられることが多く、がんの増殖を抑制する効果があります。
しかし、EGFRは皮膚の細胞や爪にも多く存在しているため、この薬剤の影響で皮膚のバリア機能が低下し、皮膚障害を起こしやすくなります。
皮膚の乾燥は、皮脂膜の低下、発汗量の減少、角質層の水分量の低下などが影響して起こる現象です。これにより、皮膚は外部の刺激に対して脆弱になります。
また、色素沈着は、抗がん剤がメラノサイトという細胞を刺激することで、メラニンが過剰に合成されることが原因です。これにより、皮膚の色が不均一になることがあります。
爪囲炎の原因としては、EGFR阻害薬が爪を形成する爪母細胞に作用し、爪甲が薄くなることで、外部の刺激に弱くなり、炎症が生じることが挙げられます。
癌の皮膚障害による影響とは?
爪囲炎や手足症候群は、単に痛みや不便を引き起こすだけでなく、日常生活の質を大きく低下させることがあります。道具をしっかり握るのが難しくなったり、繊細な指先の操作ができなくなったり、歩行にも支障をきたすこともあります。さらに、皮膚が乾燥して弾力性を失い、ひび割れや出血が起こることで、異物の侵入や感染の危険が増大します。
そして、皮膚の黒ずみや手荒れが激しくなると、家事や仕事などの日常生活動作が一層難しくなります。爪の変形や脱毛の症状が出てくると、自分の外見に自信を持てなくなり、人前に出るのが億劫になることも。その結果、人付き合いが苦手になったり、社交的な場面を避けたりするようになるかもしれません。
ざ瘡様皮疹は進行すると中等症では全体に50個前後、重症では100個前後の発疹が見られ、持続的な痛みやかゆみに悩まされることとなります。
まとめ
がんによる身体への影響は皮膚障害に限った事ではありませんが、最初に見ただけでは分かりづらい所もあるかもしれません。まぁ大丈夫だろう?と思わずに気付いたら医師や看護師などに相談し、リスクを防ぐ事が大切です。
【参考・引用文献】
・JASCCがん支持医療ガイドシリーズがんサバイバーのための皮膚障害セルフケアブック
・がん看護実践ガイド分子標的薬治療薬とケア
・系統看護学講座専門分野Ⅱ皮膚
・スキンケア_指導冊子_0805_リンク付き (lillymedical.jp)
https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2016/01/514003d0fe03fad5875856545be0b6af-5.pdf
・s_20170228egfr.pdf (dermatol.or.jp)
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