がん免疫療法コラム

がん免疫療法の副作用とは? 起こり得る症状や疾患、早期発見のポイントを解説

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監修者 | 麻生 俊英

福岡同仁クリニック院長。医学博士。九州大学医学部卒業後、九州大学医学部付属病院、メルボルン王立こども病院、インドネシア国立ハラパンキタ心臓センター、北里大学胸部外科等を経て現職。
国際救援基礎研修(国際赤十字連盟)、コソボ難民救援(国際赤十字連盟、国際赤十字委員会)、トルコ地震被災者救援(日本赤十字)、東南アジアの移民に関するセミナ―(国際赤十字連盟)等において国際救援に従事。

本記事では、がん治療の一種である免疫療法の副作用について詳しく解説します。

がん免疫療法は自身の免疫細胞を用いる治療法であるため、従来のがん3大治療法よりも比較的副作用が軽いとされています。しかし、稀に重篤な副作用を引き起こす可能性もあるので注意しなければなりません。

また、がん免疫療法は全身療法であり、がんの再発予防にも効果的な治療法です。

「がん免疫療法の副作用について詳しく知りたい」「再発予防の治療を受けたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

【第4のがん治療法】がん免疫療法とは?


免疫療法は、手術療法、放射線療法、化学療法と並ぶ、がん治療の一つです。体内の免疫力を強化し、がん細胞を排除する全身療法です。その特性から、治療を受ける方の生活の質(QOL)を維持しつつ、再発を予防する治療として大いに期待されています。

免疫療法は比較的新しい治療法であり、その研究や臨床応用が日々進められています。今後の発展により、更なる治療効果の向上と副作用の軽減が期待される免疫療法は、現代医療の新たな希望と言えるでしょう。

がん免疫療法は副作用が比較的少ない治療法

がん免疫療法は、他の治療法と比較すると副作用が少ないとされています。

具体的なデータを見てみましょう。アメリカで行われたある研究では、化学療法における副作用の発生率が54%だったのに対して、がん免疫療法ではその数値が10%にまで下がったとの報告があります。

これは免疫療法が体の自然な防衛機構を利用するため、体への負担が少ないことを示しています。つまり、治療を受けながらも生活の質を維持しやすいという大きなメリットがあるのです。

副作用がゼロというわけではない

がん免疫療法は副作用が比較的少ない治療法である一方、患者さんの遺伝子や環境によっては自己免疫反応という特有の副作用が起こるリスクも存在します。

自己免疫反応とは、何らかの理由で免疫機能が暴走し、本来なら保護すべき自身の細胞を攻撃し、組織を破壊する状態のことです。これは体内で炎症を引き起こし、体調不良やさまざまな症状を引き起こす可能性があります。

がん免疫療法の副作用の症状


免疫機能に関連する副作用が起こると以下のような副作用症状が出ます。

それぞれ部位別にご紹介します。

全身症状

主な全身症状は、体力の低下や全身的な倦怠感を感じる「だるさ」です。

また、「発熱」や「悪寒」は、免疫システムが活性化し、体が病原体と戦っているサインともいえます。

さらに、「体重の減少」も報告されています。これは食欲不振や消化器系の症状によるもので、体調管理が一層重要になります。

頭・くびの症状

がん免疫療法の副作用として、「頭痛」、「めまい」、「視覚障害」、「喉の痛み」が挙げられます。

「頭痛」や「めまい」は、一時的なものが多いですが、その頻度や強度が高い場合は注意が必要です。

「視覚障害」は稀ですが、視力低下や視野の欠損などを感じた場合は直ちに医療機関に相談してください。

「喉の痛み」も風邪などと区別がつかない場合がありますが、持続する場合は医師に報告しましょう。

胸の症状

がん免疫療法の副作用は様々で、「咳」、「息切れ」、「胸痛」、「動悸」もその一部となります。免疫療法が肺や心臓に影響を与える場合があり、「咳」や「息切れ」はその兆候となることがあります。特に、慢性的な咳や労作時の息切れは直ちに医師に報告するべきです。「胸痛」も重要な症状で、特に胸の圧迫感や鈍痛がある場合は急性の心疾患の可能性もあり、直ちに医療機関に連絡すべきです。「動悸」は心拍数の増加や不整脈を感じる症状で、これらが頻繁に現れた場合も、医師の評価が必要となります。

消化器の症状

消化器系では、「吐き気」、「嘔吐」、「下痢」、「血便」、「腹痛」のような症状が報告されています。

「吐き気」や「嘔吐」は食事量の減少や脱水症状を引き起こす可能性があり、早期の対応が必要です。

「下痢」も脱水や電解質のバランスを崩す要因となり得ます。

また、「血便」や「腹痛」は大腸や胃が炎症を起こしている可能性があり、現れた場合は直ちに医療機関に相談してください。

手足の症状

手足の症状は、神経系の免疫反応が関与しており、中枢神経や末梢神経が攻撃を受けている可能性があります。

「手足の麻痺」や「筋力低下」は生活に大きな支障を来す可能性があり、リハビリテーションを必要とすることもあります。

また、「歩行時のつまづき」は転倒リスクを高め、怪我の危険性が伴います。

がん免疫療法によって起こり得る重大な副作用


がん免疫療法は期待の大きい治療法ですが、一部の患者さんに重大な副作用を引き起こす可能性があります。以下の表に、主な疾患とそれに伴う症状をご紹介します。

 疾患 伴う症状
 皮膚障害 発疹、痒み、乾燥肌、時には重度の皮膚炎など
 大腸炎・下痢 激しい腹痛、頻繁な下痢、水分や栄養の吸収障害など
 間質性肺疾患 呼吸困難、咳、胸痛など
 Ⅰ型糖尿病 急激な体重減少、多飲多尿、疲労感など
 肝機能障害・肝炎 黄疸、肝臓の痛み、体力の低下など
 甲状腺機能障害 体温調節の異常、心拍数の変動、体重の変化、疲労感など

これらの副作用は全ての患者さんに必ずしも発生するわけではないものの、治療過程で現れた場合は医療スタッフへ速やかに報告し、適切な対応を取る必要があります。

がん免疫療法は個々の体質やがんの種類によって効果や副作用が異なるため、治療を受ける方自身が自身の体調をきちんと把握し、医療チームと密にコミュニケーションを取ることが求められます。

他のがん治療法の副作用


がん免疫療法の副作用について解説しましたが、ここからはがんの3大治療法と言われる「手術療法」「放射線療法」「化学療法」の副作用についてご紹介します。

手術療法の副作用

手術療法は、がんの治療法の一つであり、がん細胞を物理的に取り除くことで治療を行います。

しかし、手術による身体的な負担は大きく、術後の痛みや傷口の感染、出血などが起こり得ます。また、大きな手術では全身麻酔が必要となるため、麻酔による副作用も考えられます。吐き気や頭痛、一時的な記憶障害などです。

さらに、手術部位によっては、身体機能の一部が失われたり、見た目に影響が出たりすることもあります。

放射線療法の副作用

放射線療法は、がん細胞に放射線を照射し、その細胞のDNAを破壊してがん細胞の増殖を抑制する治療法です。

放射線療法の主な副作用としては、照射部位の皮膚が赤くなったり、湿疹や脱毛が生じたりすることがあります。また、疲労感、食欲不振、吐き気などの全身症状も見られることがあります。照射部位が胸部や腹部である場合、胸焼けや下痢などの消化器症状が出ることもあるでしょう。

さらに、放射線療法は正常な細胞にも影響を及ぼす可能性があるため、長期的には二次がんのリスクが高まるともされています。

化学療法の副作用

化学療法は、がん細胞の成長や増殖を抑制する薬剤を使用する治療法です。

化学療法の薬剤は正常な細胞にも影響を及ぼすため、副作用では全身的な症状が多く見られます。最も一般的な副作用は、髪の脱毛、口内炎、食欲不振、吐き気、下痢、便秘などです。また、骨髄抑制により白血球、赤血球、血小板の数が減少するため、感染症にかかりやすくなったり、貧血や出血傾向になったりします。

さらに、神経毒性によるしびれや手足の冷え、心毒性による心機能低下なども報告されています。

がん免疫療法の副作用は予測できない


がん免疫療法の副作用は、治療直後に現れる場合もあれば、時間が経過してから現れる場合もあります。副作用は全身的に発生する可能性があり、個々の体質や体調により、発生する症状やその程度には大きな個人差があるため、具体的な症状の予測は難しいと言えます。

特に、重篤な副作用が発生した場合には、治療を終えても後遺症が残る可能性があります。

がん免疫療法の副作用を早期発見するためのポイント


先ほども述べたように、重大な副作用が起きた場合、治療終了後も後遺症が残る可能性があります。このため、副作用の早期発見が非常に重要となります。

しかし、がん免疫細胞の副作用は予測が難しく、個々の体質や状態によって異なるため、自身の体調管理に注意を向けることが重要です。

そのための具体的なポイントをいくつかご紹介します。

一つ目は、治療を受ける前に副作用について十分に理解しておくことです。どのような副作用があるのか、それが出た場合にどのように対処すればよいのかなどを学ぶ必要があります。

二つ目は、治療を受ける際に疑問点があれば医師に質問することです。医師や医療スタッフは専門家であり、患者さんが安心して治療を受けられるようサポートしてくれます。

最後に、日々の体調変化に敏感であることが重要です。少しでも異変を感じたら、すぐに病院に相談できる体制を作っておくことが求められます。

6種複合免疫療法

まとめ


本記事では、がん治療の一つである免疫療法の特徴やその副作用について説明しました。がん免疫療法は手術、放射線、化学療法と並ぶがん治療法の一つで、全身の免疫力を強化し、がん細胞を排除することを目指します。

しかし、個々の体質や状態によって副作用が発生する可能性もあり、早期発見と対応が重要になります。

福岡同仁クリニックでは、がん免疫療法の一種である「6種複合免疫療法」を提供しています。6種複合免疫療法は、役割の異なる6種の免疫細胞を増殖・活性化させ、がんへの攻撃力を高める治療法です。

当クリニックでは、最新の医療設備と豊富な経験を持つ専門スタッフが、患者さん一人ひとりの状態を詳細に把握し、最適な治療方針をご提案します。副作用の対応も含め、患者さんと共に最善の治療結果を目指します。

6種複合免疫療法についてさらに詳しく知りたい方はこちらよりご確認ください。

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